伝承
昔々、あるところに・・。
おじいさんは、趣味の竹細工のため竹やぶに。
そこで、女の赤子を拾う。
身に着けていた、高価な布に・・欲が出た。いつか、親が捜すはず・・。
数年育てても、お礼が・・倍以上貰えるのではないか・・。
数年経っても、親は現れなかった。
5歳・・しかし、美しい容貌ははっきり分る。金の入る先が、変わっただけ。
計算だった。
誰にも見せず、噂が広がる・・。美しい姫・・。
婿候補は、どんどんランクが上がる。そして、時の帝さえも・・。
名を、かぐやと呼ばれた姫は・・結婚の話を断ろうとした。が、育てて貰った恩・・。
自分の身に、好きでもない男が・・見物にやってくる。
時の帝、5人の婿候補・・。気持ち悪い視線に、耐え切れず・・日々泣いていた。
月は、満月・・。ある夜。
出たことのない外から・・一匹のおおかみが進入し、かぐや姫を食べてしまう。
着ていた着物に、血が付き・・跡形がなかった。
力のないおじいさんは、考えた・・。相手は、時の帝たち・・。
月からの使者に、力敵わず・・連れ去られたと伝えた。
人知の及ぶところではない美しさ・・。月から迎えが来ても、おかしくはない。
これが、築嶋家の伝承。
かぐや姫は、食べられることを・・望んだのだろうか?
当時は・・好きではなくても、結婚なんて当たり前だったのでは?
死ぬほど、嫌だったのか・・相手が。
伝承は、いい加減だ。
けど、築嶋家のおおかみは・・かぐや姫を食べただけ。オオカミの方に、どんな伝承が?
・・一生に一人は、関係ないよね?
・・オオカミ。あの後、窓からいなくなった・・。
罠・・?私の体には、誠志のつけた・・痕。
「はぁ。」
ため息が出る・・。
かぐや姫の物語では、帝と・・和歌を3年交換していた。月に帰る頃には慕う心があったとか・・。
誠志、私は・・独占欲はある。
けど、求められても・・体は受け付けない。・・これが、答え。
オオカミ・・。
大上 保志・・あなたは、私をどうする?
私は・・
保志side
昔、あるところに・・。
大上家がありまして。120年に一度生れると言う、築嶋家の『かぐや姫』を見に行ったご先祖様。
人知の及ぶところではない美しさ・・に、気が狂い。自らに呪いを科したのだか・・。
食べた・・というか、手を出して処刑されたのだとか?
伝承なんて、こんなもんだ・・。
いい加減で、理解できない。女に、いかれるなんて・・。
築島家に、120年ぶりに生れた女の子。・・まさか、同じ高校に入学するなんて。
この私立希東高等学校は、私立結南学園の中等部からの編入になる。だから、顔見知りばかり・・。
桜の木の下、呪いが刻む・・俺を。
必ず、手に入れろと・・。
周りは、歌毬夜を・・確かに綺麗だと言う。
俺は、呪われている?気が、狂いそうだ。
大上家の相手は、いつも築嶋家ではない。・・むしろ、『かぐや姫』の方が珍しい。
120年に一度生れる・・女の子。
一生に一人。
大上家存続のため、一つの能力がある。
緑色の目・・相手を見つけ、唇に契約を交わして現れる能力。
・・心を惑わす目。ただし、築嶋家の『かぐや姫』には・・16歳までしか効かない。
彼女が16になった時、立場が逆転する。
歌毬夜は知らない・・。自分の目覚めの時を。
・・そして、能力も。築嶋家の伝承には、何も残されていない。
120年毎に、犠牲になっているのは・・おおかみ。大上家の方だ・・。
一生に一人・・呪われた決まりに、逃れ道は厳しい。
杏が言っていた、心を別に移す方法が・・ないわけではない。が、あえて・・君を選んだ志を保とう・・。
契約に、誓う・・。
俺から、逃げられると思うなよ?どこまでも、追いかけてやる。
・・死ぬまで、お前一人。
分るか・・?この欲望。求めて止まない・・
匂いに誘われた時と同じ。いや、それ以上の願望。あぁ、気持ちが高揚する。
はぁ・・
抑えが利かない。が・・今は、出来るだけ歌毬夜の体に触れない。
彼女の記憶に、男が触れることを・・『汚い』と感じる“何か”がある。
あれだけ大路に甘え、依存するのに・・。
最近までの歌毬夜は、どんな生き方をしてきたのか・・。
まさか、『かぐや姫』と・・同じ?
ふふ・・、楽しい。人を想い、上手くいかない・・。
初めての恋。恋焦がれ、狂いそうだ・・。
歌毬夜・・お前だけが欲しい。
一生に一人。
誰かを選んだら?
クスクス・・。させない、とことん邪魔してやる。あぁ、楽しいな。




