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B 【 大上家シリーズ】おおかみはかぐや姫を食べた  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ0】(改)おおかみは羊の皮を被らない

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一つの終わり(side:來名)


美彩、あなたは呪いと闘う。

“彼”が選ばなかった私との未来……

それが正しかったのか、私には分からない。

私には、もう一つの未来があったから……

美彩、あなたの未来は一つ。


聞いて。私の呪いの悲しみを。

大上家の雑種が抱える呪いを……


“彼”の名前は、はるか

魔女の家系が原因で、呪いの増幅『雑種』になった者。

学園が引き合わせたけれど、悠は呪いと増幅の原因になった魔女を憎み、復讐を誓って私に近づいた。

悠には私が一生の相手かどうかも分からず、常に呪いからの解放を望み……

私たちのお互いの想いは呪いのように、深まる愛情は真実を求め……

私たちの関係を作ったのは呪い。

そして壊したのも……


「俺と付き合ってくれ。」

その告げる目に、愛情がないことは分かっていたの。

でも求めずにはいられない存在だと思った。

あなたの視線は鋭く、憎しみに闇を伴い……それでもその美しさに心を奪われた。

いつか本当に好きになってくれればいい。

時間を共に過ごすだけでもいい。

「悠……」

告白をしたのはあなたなのに、私が甘えても決してキスをしない。

私に触れられることも、最初は嫌っていた。

想いを込めて見つめ、あなたの名を呼んだ。

あなたの心が欲しい。

必死に、呪われたように。

想いは徐々に……

通いあう視線、彼から触れる手。

私の髪をすき、指に絡めてキスを落とす。

見つめる視線……体に熱を帯び、物足りない何か。

「來名……」

あなたは私の名を呼び、手を繋ぐように重ね。

引き寄せて自分の頬に導き、すり寄せた。

悠の腕が私を抱き寄せて。

温もり……香り……

私にはないはずの、懐かしい記憶。

遠い、遠い昔の……愛しき日……

失う悲しみと、手に入らない苦しみ。

呪いの始まりと、呪いが求める代償を。知った。

「どうして泣きそうなの?」

優しいあなたの問いかけに、涙が零れる。

「幸せすぎて怖い……」

あなたに言えない。その呪いを憎んで来たのだから。

呪いに苦しんだのは魔女も同じだった。

この時間を失いたくない。

「來名。俺……好きだ。本当に……気持ちが、こみ上げて抑えられない。もっと触れても良い?」

「嬉しい。」

悠の視線を上から受けて。

閉じ気味になる目に、少しでも映っていることを望みながら。

唇が優しく触れ、重なる。

幸せを味わうように目を閉じた。

心を、手に入れたんだ……

キスが止まり、目を開けた。

目前にある悠の目は移ろい、彼は両手を耳に当てて取り乱す。

「……んだ?これ……この声……」

雑種の宿命……

呪いが、犠牲として彼を選ぼうとしていた。

「悠?」

「……來名……ごめん、離れて……何をするか、分からない。君を、傷つけたくない……お願い。」

離れるんじゃなかった。

あなたと呪いを共にするなら……

私には覚悟があっただろうか?

後悔はしても遅いんだと……何度も、何度も私を苦しめる。

私がみた、過去の呪いの始まり。

呪いの代償を知ったあなたが、未来の決断を独りでしてしまうなんて。

悠は私の前に、獣の姿となって現れた。

白い大きな狼。

それは呪いが見せた過去の姿と同じ。

最期だったのに……

私は、あなたの言葉にただ耳を傾け、言葉が出なかった。

「來名。君以外の人に、キスをした……呪いの増幅だ。これで、いい……君を愛したのは、呪いだったんだ。君もそう……呪いに、狂っただけ……解放してあげる。自由に生きて……君は、俺以外も選べるのだから。……逃げたんだ。俺は、弱い……呪いが、俺を……俺たちを犠牲に選ぶと言ったんだ。」

犠牲に選ばれた者の結末……

呪いは告げる。

「お前たちの子どもに試練を与える」と。

耐えられないなら幸せはない……

呪いに苦しんできたのに。

それ以上の苦しみが私たちと、子どもにまで降り懸かる。

悠は呪いと闘うことから逃げた。

私は同じ問いに、どう答えただろうか?

ただ、もしもの話は意味がない。

もう時間は過ぎてしまったから。

悠の言葉と悲しみの瞳……何度も、何度も夢をみる。

悪夢であることを、何度願っただろう……

呪いは取り返しがつかない。

だから。


「美彩、あなたは自分と子どもの苦しみに耐えられるかもしれない。でも、遠矢は?あなたは知っている……彼が得た幸せを、家族を失いたくないことも。これ以上の幸せを、彼に与えるのは残酷……悠は言った。呪いは、近々解く者が必ず現れると。」


ごめんね、美彩……あなたの決意は大事なの。

試練に耐えて……これから、あなたは試練を何度も経験する。

その時、私に頼ることは出来ない……

あなたの支えが、遠矢だけだと知って欲しい。

美彩、あなたは強い……でも、弱い。

愛しさに身を引き、時に独りで立ち向かう強さ。

誰かの支えなくては、呪いに勝てない弱さ。

見守るわ。

あと少しの時間……






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