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⑫-B 【 大上家シリーズ】おおかみはかぐや姫を食べた  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ4】おおかみ女と嘘つきな青年

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お・い・で!

麗季Side



 綾にメールを送る

『今、高校の教室♪

気持ちが落ち着いたら、家(本家)に帰るよ(^ω^)』


はぁ・・ため息が出る。

窓際にもたれ、外を眺めた。


【ガラッ】


教室のドアが開く・・

ふと、目を向け・・驚いた。


「・・美衣さん?」


クラスが違うし、私に用事はないはず・・。


「羊二なら、いませんよ?」


「・・えぇ。

彼、優しいのね・・。」


髪を後ろに流す・・

・・大人な雰囲気に、彼・・?優しい・・?

何だか、イラつく・・。


これが、嫉妬?

醜い感情・・。


「ふふっ。疑えばいい・・。

あなたに、彼を信じられるものがある?」


ムカッ!


「私のこと、好きって言ってくれたわ。」


出来るだけ、対抗して声を和らげて話す。

あなたに、私の位置は与えない!


「・・くすっ。可愛いのね・・。」


ムカカっ・・

我慢・・よ!


「何が言いたいの?」


「付き合って・・いるの?」


・・え・・

一瞬の時間に、思い返してみる。


『この人、私の彼氏!!』


あの叫んだのは、一方的なこと・・。

羊二は、好きだと・・言った。

あれ・・?私も、好き・・付き合って・・る・・よね?


「どうしたの?

・・だから、カワイイ・・のよ。コドモ・・なんだから。

いい?大人はね・・好きでなくても・・」


「羊二は、そんな人じゃない!」


はぁ・・

つい、我慢できなくて感情的になる。


「・・本当に?

あなたは、彼に・・一度も緑色の目を使わなかった?」


緑色の目・・

使ったかもしれない・・無意識に・・羊二が欲しくて。


「呪いは消えたわ・・。解放されたの。

・・あなたのこと、好きじゃなくなる日が来る・・

そう、彼が・・私を選んだように・・」


エランダ・・?


「嘘よ!

ウソ・・止めてぇ!!」


・・気を失う・・その間に、私は見た。

あの、懐かしい・・羊二の心配した眼。本当は、分かってる・・。


羊二は、私のこと大事に思ってくれてるって・・。

その眼・・初めての出逢い・・


奇跡・・


大好き・・好き・・

愛している・・。


あなたが、他の人を選ぶぐらいなら・・消えてもいい。

緑色の目なんか・・いらなかった・・


羊二・・信じるわ。

あなたの言葉と、あの眼を・・。


だけど、頭に声が聞こえるこの声が・・

疑心を植えつける。


『彼の心は、手に入らない・・。

消える?消えればいい・・。でも、彼の心にあなたなんか残らない。

・・ずっと、想い続けた呪いのような・・愛・・

それも、消えるんだから・・。』


違う・・

私を喪ったら生きていけないと、そう言ってくれた。



・・オイデ・・

来ればいい・・休んで・・


ヤスメバイイ・・疲れたよね?

・・ムリシナクテイイ・・


オイデ・・オイデ・・


楽になる。

力が足りないだけ・・少し休めば、きっと・・頑張れる。

ね、だから・・少し・・

ほんの少し、モタレタライイ・・。


手を貸すよ?

分かってる・・君は、彼のことが好きなんだろ?

大丈夫、彼も分かってくれてる。

・・ダロ?




 目が覚める。

今は、まだ・・夜。


思考停止で、何も考えられない・・。

窓を開け、ベランダに出て風に当たる。

何か・・が・・呼んでる。


・・オイデ・・


声に誘われ・・太西学園の屋上に着く。

今日は、三日月・・。


月は丸いのに、見え方が違うだけ。

太陽の光と地球の影・・

影響するものが、丸いものの形を変えて・・見せる。


私たちの関係は・・何だろうか・・

ナツカシイ・・。


手すりの上に座って、町を眺める。

羊二・・ここで出逢ったのは・・必然?

出逢わなければよかった?

出逢うより先に・・呪いが解放されていたら・・。


違う、逃げてはいけない・・。

関係ない!


緑色の目・・

その始まりは、まだ・・見えない。


解放された呪い・・

羊二は、心を奪われた?私は、手に入れていない!!

この手には・・無い・・


「麗季・・」


後ろから、草樹の声がした。

手すりの上に、バランスよく立つ。


「・・呼んだのは、あなたなの?」


私の質問に、苦笑い。


「いや、俺じゃない・・。

麗季、どうしてここにいるの?」


ドウシテ・・?


「分からない。

でも、あなたは・・どうしているの?」


草樹は笑う・・柔らかく。


「さぁ・・何かに呼ばれた。

呼んだのは、麗季・・?」


意図的・・?

手すりから下り、草樹に近づく。


オイデ・・オイデ・・

テヲ・・トッテ・・


「・・草樹、あなたの・・一生の相手は、私じゃない。

なのに、何があなたを動かすの?

・・私の心を・・あなたは、どうする?

私の心は、ここにはない・・。」


例え、羊二の心が手に入らなくても・・

私の心は、羊二にある。他の・・誰にも動かない。

誰にも、渡さない!誰にも・・


「・・可愛いな。本当に純粋だ・・。

壊れるよ・・いつか、その・・心が。」


私の・・心が壊れる・・?


そういえば・・。

心を手に入れられなくても、消えてもいいぐらい・・羊二のことが好きだと言った私。

嵐も言った『壊れるぞ・・そんな、心は・・』と。


「・・ふふっ壊れればいい・・。

あなたは、手に入れることはない。呪いに選ばれた・・おおかみだから・・」


「・・美衣さん?」


私がいた、手すりの上に座っている。

私と草樹を見つめ、笑う・・


「草樹、手緩いのね・・。

あなたが欲しいのは、答え・・だから?」


試練の・・コタエ・・。

私と、羊二が提出する・・モノ。呪いが求めるもの・・

それは、何なの?


草樹は、美衣さんを見上げ答える。


「予見者・・。

時が、来ているのか・・?」


予見者?!

・・味方・・?


「あぁ~あ。言っちゃったか・・。

せっかく、記憶を消していたのに。

くすっ・・ふふっ・・関係ないか、時が来てしまった。

この、三日月・・懐かしい・・。

椋・・あなたは、何故忘れたの?

忘れないと誓ったのに・・。嘘つき・・

ふふっ・・くすくすくす・・麗季、時間だわ。壊れて・・

あなたが純粋で、子供だから。手を取るといい・・

楽になれるわ。」


「・・美衣さん、私は・・羊二の手しか取らない。

他は、いらない!」


「くすっ。羊二の手も・・心も、あなたは手に入れられない。

忘れたの?緑色の目・・あなたは、その目で彼の心を惑わした。

魔女が、長い歴史の中・・大上家の心を欲したように。」


・・緑色の目・・

呪い・・彼の心を、惑わした。


「・・あ・・。」


言葉が出ない。

私に向けられた優しさも・・呪いの所為。


羊二は、呪いに同情した・・?

そう・・呪いに縛られた私は、彼に振られたら・・一生独り。


羊二の心は・・辛いよね?

そんな運命の女の子を・・突き放すことも出来ず、優しく・・するしかなかったはず。

その心を、私は・・自分のものだと勘違いした。


「どうしたの?思い当たることが多い?」


「美衣、あまり追い詰めるな!

麗季が、消えたら・・」


「・・草樹、手を・・差し伸べるのよ・・。

あなたの求める答えが、手に入る。もうすぐ・・彼から解放される。

双子の雑種・・選ばれた者・・。」


「・・美衣?」


・・美衣さんの声と草樹の声・・

聴こえるけど・・理解できない。


「美衣さん・・。

最初はそうだったかもしれない。でも、呪いは解放され・・

緑色の目は私から消えた。彼でなくても良くなった。」


「そうね。でも、惑わした心は・・効力を保つ。」


・・そうかもしれない・・

でも、そんなに・・羊二の心は。・・っ・・わからない。


「解放されたのを、羊二は知った・・。

同情しなくて良くなった・・なのに、優しさは変わらない。

そして、私を好きだと言った。・・消えそうな私に・・」


「そう、汚いわ・・。

目の前で消えようとするなんて・・。」


え・・っ・・?


「そうでしょう?

・・コドモね。自分が、最期に見たくて彼のところに行った?引き止めて欲しかった・・?

その時あなたは、彼に、何て・・言わせた・・の?」


・・言わせた・・?


『麗季、好きだ・・』

その言葉で、私は・・ここに・・いる。


「あ・・あぁ・・うっ・・ウソ・・だ。」


涙が溢れる。

心が痛い・・。この胸に、痛みが・・身を切られるようだ・・


「うそ?・・くすくすくす・・そうね、信じなくてもいいわ。

ずっと、子供の・・純粋な・・夢物語に・・酔っていればいい。」


「いやぁ!!

・・羊二、羊二ぃ~~・・」


助けて・・心が・・

壊れそうだ・・


『・・俺を好きになればいい』


駄目よ・・嵐・・あなたを逃げ場に出来ない。

だって、私は・・羊二が好き・・羊二しか、好きになれない!


・・オイデ・・


「麗季・・休め・・。大丈夫、分かっている・・。

君は、彼を愛している・・。彼だけを・・。

ね、今・・頑張ることはない。

・・休んで・・オレに・・モタレタライイ・・」


草樹が、優しく抱きしめる・・。

温もり・・匂いが・・懐かしい・・?


「草樹・・でも・・」


「・・少し・・ほんの少し、休むだけ・・。

彼は、優しい・・待っていてくれる。だろ?」


羊二・・好きよ・・好き・・

だけど、心は手に入らない・・?


疲れた・・疲れたの・・


「麗季・・オイデ・・」


「・・ない・・」


違う・・

この腕の中は、私の休み場じゃない!


「・・ごめん。

退いて・・手を、離して・・。」


草樹を押し退ける。

美衣さんは、手すりから下り・・私の方に歩いてくる。


「答えを、提出して・・」


「私は・・羊二だけが好き!!」


私には、羊二を信じることが出来るものを持っている。

彼の、心は・・私が持っている!!



「・・麗季!!」


屋上のドアが勢いよく開いて、羊二の叫ぶ声。


「羊二・・」


そして、信じる根拠の・・心配そうな彼の眼。

・・契約を交わす前・・彼のこの眼が、私を導いた。

私の・・相手だと・・。


そして、抱きしめる・・

この温もりと・・匂い・・羊二だけ・・


羊二は、私を後ろにかばい・・二人から護ってくれる。

美衣さんは問う。


「羊二・・あなたは、どんな答えを提出する?」


「答え・・か。

呪いは、解放された?関係ない・・

最初から、呪いなんかで・・好きになったり、優しくしたんじゃない!

麗季の、緑色の目を見る前に・・俺の心は奪われた。

初めての出逢い・・姿を見ただけで・・好きになっていた。」


・・え?

あの日・・契約を交わす前から・・?


緑色の目は・・関係ない?

・・どうしよう・・嬉しすぎて・・涙が止まらない。

言葉が・・でない。


・・羊二・・好き。

あなたの心は、この手にあった。


見えなかった部分が・・今、確かに・・ここにある。


「椋・・答えは、見つかった?

あなたの祝福が、子孫をどれほど苦しめたか。

あなただけの所為ではないけど・・」




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