お・い・で!
麗季Side
綾にメールを送る
『今、高校の教室♪
気持ちが落ち着いたら、家(本家)に帰るよ(^ω^)』
はぁ・・ため息が出る。
窓際にもたれ、外を眺めた。
【ガラッ】
教室のドアが開く・・
ふと、目を向け・・驚いた。
「・・美衣さん?」
クラスが違うし、私に用事はないはず・・。
「羊二なら、いませんよ?」
「・・えぇ。
彼、優しいのね・・。」
髪を後ろに流す・・
・・大人な雰囲気に、彼・・?優しい・・?
何だか、イラつく・・。
これが、嫉妬?
醜い感情・・。
「ふふっ。疑えばいい・・。
あなたに、彼を信じられるものがある?」
ムカッ!
「私のこと、好きって言ってくれたわ。」
出来るだけ、対抗して声を和らげて話す。
あなたに、私の位置は与えない!
「・・くすっ。可愛いのね・・。」
ムカカっ・・
我慢・・よ!
「何が言いたいの?」
「付き合って・・いるの?」
・・え・・
一瞬の時間に、思い返してみる。
『この人、私の彼氏!!』
あの叫んだのは、一方的なこと・・。
羊二は、好きだと・・言った。
あれ・・?私も、好き・・付き合って・・る・・よね?
「どうしたの?
・・だから、カワイイ・・のよ。コドモ・・なんだから。
いい?大人はね・・好きでなくても・・」
「羊二は、そんな人じゃない!」
はぁ・・
つい、我慢できなくて感情的になる。
「・・本当に?
あなたは、彼に・・一度も緑色の目を使わなかった?」
緑色の目・・
使ったかもしれない・・無意識に・・羊二が欲しくて。
「呪いは消えたわ・・。解放されたの。
・・あなたのこと、好きじゃなくなる日が来る・・
そう、彼が・・私を選んだように・・」
エランダ・・?
「嘘よ!
ウソ・・止めてぇ!!」
・・気を失う・・その間に、私は見た。
あの、懐かしい・・羊二の心配した眼。本当は、分かってる・・。
羊二は、私のこと大事に思ってくれてるって・・。
その眼・・初めての出逢い・・
奇跡・・
大好き・・好き・・
愛している・・。
あなたが、他の人を選ぶぐらいなら・・消えてもいい。
緑色の目なんか・・いらなかった・・
羊二・・信じるわ。
あなたの言葉と、あの眼を・・。
だけど、頭に声が聞こえるこの声が・・
疑心を植えつける。
『彼の心は、手に入らない・・。
消える?消えればいい・・。でも、彼の心にあなたなんか残らない。
・・ずっと、想い続けた呪いのような・・愛・・
それも、消えるんだから・・。』
違う・・
私を喪ったら生きていけないと、そう言ってくれた。
・・オイデ・・
来ればいい・・休んで・・
ヤスメバイイ・・疲れたよね?
・・ムリシナクテイイ・・
オイデ・・オイデ・・
楽になる。
力が足りないだけ・・少し休めば、きっと・・頑張れる。
ね、だから・・少し・・
ほんの少し、モタレタライイ・・。
手を貸すよ?
分かってる・・君は、彼のことが好きなんだろ?
大丈夫、彼も分かってくれてる。
・・ダロ?
目が覚める。
今は、まだ・・夜。
思考停止で、何も考えられない・・。
窓を開け、ベランダに出て風に当たる。
何か・・が・・呼んでる。
・・オイデ・・
声に誘われ・・太西学園の屋上に着く。
今日は、三日月・・。
月は丸いのに、見え方が違うだけ。
太陽の光と地球の影・・
影響するものが、丸いものの形を変えて・・見せる。
私たちの関係は・・何だろうか・・
ナツカシイ・・。
手すりの上に座って、町を眺める。
羊二・・ここで出逢ったのは・・必然?
出逢わなければよかった?
出逢うより先に・・呪いが解放されていたら・・。
違う、逃げてはいけない・・。
関係ない!
緑色の目・・
その始まりは、まだ・・見えない。
解放された呪い・・
羊二は、心を奪われた?私は、手に入れていない!!
この手には・・無い・・
「麗季・・」
後ろから、草樹の声がした。
手すりの上に、バランスよく立つ。
「・・呼んだのは、あなたなの?」
私の質問に、苦笑い。
「いや、俺じゃない・・。
麗季、どうしてここにいるの?」
ドウシテ・・?
「分からない。
でも、あなたは・・どうしているの?」
草樹は笑う・・柔らかく。
「さぁ・・何かに呼ばれた。
呼んだのは、麗季・・?」
意図的・・?
手すりから下り、草樹に近づく。
オイデ・・オイデ・・
テヲ・・トッテ・・
「・・草樹、あなたの・・一生の相手は、私じゃない。
なのに、何があなたを動かすの?
・・私の心を・・あなたは、どうする?
私の心は、ここにはない・・。」
例え、羊二の心が手に入らなくても・・
私の心は、羊二にある。他の・・誰にも動かない。
誰にも、渡さない!誰にも・・
「・・可愛いな。本当に純粋だ・・。
壊れるよ・・いつか、その・・心が。」
私の・・心が壊れる・・?
そういえば・・。
心を手に入れられなくても、消えてもいいぐらい・・羊二のことが好きだと言った私。
嵐も言った『壊れるぞ・・そんな、心は・・』と。
「・・ふふっ壊れればいい・・。
あなたは、手に入れることはない。呪いに選ばれた・・おおかみだから・・」
「・・美衣さん?」
私がいた、手すりの上に座っている。
私と草樹を見つめ、笑う・・
「草樹、手緩いのね・・。
あなたが欲しいのは、答え・・だから?」
試練の・・コタエ・・。
私と、羊二が提出する・・モノ。呪いが求めるもの・・
それは、何なの?
草樹は、美衣さんを見上げ答える。
「予見者・・。
時が、来ているのか・・?」
予見者?!
・・味方・・?
「あぁ~あ。言っちゃったか・・。
せっかく、記憶を消していたのに。
くすっ・・ふふっ・・関係ないか、時が来てしまった。
この、三日月・・懐かしい・・。
椋・・あなたは、何故忘れたの?
忘れないと誓ったのに・・。嘘つき・・
ふふっ・・くすくすくす・・麗季、時間だわ。壊れて・・
あなたが純粋で、子供だから。手を取るといい・・
楽になれるわ。」
「・・美衣さん、私は・・羊二の手しか取らない。
他は、いらない!」
「くすっ。羊二の手も・・心も、あなたは手に入れられない。
忘れたの?緑色の目・・あなたは、その目で彼の心を惑わした。
魔女が、長い歴史の中・・大上家の心を欲したように。」
・・緑色の目・・
呪い・・彼の心を、惑わした。
「・・あ・・。」
言葉が出ない。
私に向けられた優しさも・・呪いの所為。
羊二は、呪いに同情した・・?
そう・・呪いに縛られた私は、彼に振られたら・・一生独り。
羊二の心は・・辛いよね?
そんな運命の女の子を・・突き放すことも出来ず、優しく・・するしかなかったはず。
その心を、私は・・自分のものだと勘違いした。
「どうしたの?思い当たることが多い?」
「美衣、あまり追い詰めるな!
麗季が、消えたら・・」
「・・草樹、手を・・差し伸べるのよ・・。
あなたの求める答えが、手に入る。もうすぐ・・彼から解放される。
双子の雑種・・選ばれた者・・。」
「・・美衣?」
・・美衣さんの声と草樹の声・・
聴こえるけど・・理解できない。
「美衣さん・・。
最初はそうだったかもしれない。でも、呪いは解放され・・
緑色の目は私から消えた。彼でなくても良くなった。」
「そうね。でも、惑わした心は・・効力を保つ。」
・・そうかもしれない・・
でも、そんなに・・羊二の心は。・・っ・・わからない。
「解放されたのを、羊二は知った・・。
同情しなくて良くなった・・なのに、優しさは変わらない。
そして、私を好きだと言った。・・消えそうな私に・・」
「そう、汚いわ・・。
目の前で消えようとするなんて・・。」
え・・っ・・?
「そうでしょう?
・・コドモね。自分が、最期に見たくて彼のところに行った?引き止めて欲しかった・・?
その時あなたは、彼に、何て・・言わせた・・の?」
・・言わせた・・?
『麗季、好きだ・・』
その言葉で、私は・・ここに・・いる。
「あ・・あぁ・・うっ・・ウソ・・だ。」
涙が溢れる。
心が痛い・・。この胸に、痛みが・・身を切られるようだ・・
「うそ?・・くすくすくす・・そうね、信じなくてもいいわ。
ずっと、子供の・・純粋な・・夢物語に・・酔っていればいい。」
「いやぁ!!
・・羊二、羊二ぃ~~・・」
助けて・・心が・・
壊れそうだ・・
『・・俺を好きになればいい』
駄目よ・・嵐・・あなたを逃げ場に出来ない。
だって、私は・・羊二が好き・・羊二しか、好きになれない!
・・オイデ・・
「麗季・・休め・・。大丈夫、分かっている・・。
君は、彼を愛している・・。彼だけを・・。
ね、今・・頑張ることはない。
・・休んで・・オレに・・モタレタライイ・・」
草樹が、優しく抱きしめる・・。
温もり・・匂いが・・懐かしい・・?
「草樹・・でも・・」
「・・少し・・ほんの少し、休むだけ・・。
彼は、優しい・・待っていてくれる。だろ?」
羊二・・好きよ・・好き・・
だけど、心は手に入らない・・?
疲れた・・疲れたの・・
「麗季・・オイデ・・」
「・・ない・・」
違う・・
この腕の中は、私の休み場じゃない!
「・・ごめん。
退いて・・手を、離して・・。」
草樹を押し退ける。
美衣さんは、手すりから下り・・私の方に歩いてくる。
「答えを、提出して・・」
「私は・・羊二だけが好き!!」
私には、羊二を信じることが出来るものを持っている。
彼の、心は・・私が持っている!!
「・・麗季!!」
屋上のドアが勢いよく開いて、羊二の叫ぶ声。
「羊二・・」
そして、信じる根拠の・・心配そうな彼の眼。
・・契約を交わす前・・彼のこの眼が、私を導いた。
私の・・相手だと・・。
そして、抱きしめる・・
この温もりと・・匂い・・羊二だけ・・
羊二は、私を後ろにかばい・・二人から護ってくれる。
美衣さんは問う。
「羊二・・あなたは、どんな答えを提出する?」
「答え・・か。
呪いは、解放された?関係ない・・
最初から、呪いなんかで・・好きになったり、優しくしたんじゃない!
麗季の、緑色の目を見る前に・・俺の心は奪われた。
初めての出逢い・・姿を見ただけで・・好きになっていた。」
・・え?
あの日・・契約を交わす前から・・?
緑色の目は・・関係ない?
・・どうしよう・・嬉しすぎて・・涙が止まらない。
言葉が・・でない。
・・羊二・・好き。
あなたの心は、この手にあった。
見えなかった部分が・・今、確かに・・ここにある。
「椋・・答えは、見つかった?
あなたの祝福が、子孫をどれほど苦しめたか。
あなただけの所為ではないけど・・」




