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⑫-B 【 大上家シリーズ】おおかみはかぐや姫を食べた  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ4】おおかみ女と嘘つきな青年

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す・れ・ち・が・い!


 本家から始まって大上家全体に、私の記憶が戻り・・大騒ぎ。

結局、本家から高校に通うことになった。


「麗季、体調は大丈夫?」


諷くん・・幼いとき、そう呼んでいた。


「うん。不思議・・どっちにしても、お兄ちゃんね?」と、笑う。


「あぁ、円華と結婚したらな。」


本家は、隠された家系の調査を始めた。


・・何かが、引っかかる。・・何かが欠けた記憶・・。



 太西学園高等部。羊二と同じ学校・・。

寮から出てきた羊二と、目があった。


「おはよう。」


優しい笑顔の羊二・・。幸せな時間。

まるで、試練なんかないような・・終わってしまったように感じる。


「おは・・っ?!」


【グイッ】


急に、お腹に手が回され引き寄せられる。


「おはよう。麗季、大人になったんだ・・?」


この声、草樹??


「草樹、放せ!!」


耳元で囁く・・


「オイデ・・

休みたいときは・・オイデ・・」


草樹は手を放し、走ってくる羊二に言う。


「諦めない。まだ、心に・・隙間が出来るから。」と。


・・デキル・・?


身を翻し、中等部の方へ歩いていく草樹。

呆然と、見送った・・。


「麗季?

隙、ありすぎ!襲うよ?」と、服に手をスルリと入れ、胸に滑らす。


「ちょっ・・バカ!」


振り払って逃げる。


「はぁはぁ・・」


胸を押さえ、涙目で羊二を睨む。

・・スケベだ!


「変態・・H・・~~・・恥ずかしいじゃない!!」


ケロリとした、涼しい顔で・・


「今度は、誰かに先越されるなんて嫌だからな!

ちっ・・嵐め。子供だと、一番安心していたのに・・。」

と、羊二は自分の手を見つめている。


「・・?羊二?」


ニヤッ・・


【ゾクッ】


本能が、何かを知らせた。


鼻歌が聞こえる。

何故、嬉しそうなのか・・訊くのが怖い。

ぽそっと呟いた言葉は、聞こえない振りをした。


「小学校の時の身体も良かったけど、やっぱり・・大きいな。」


・・なんて、きっと空耳。

私、一生の相手・・間違えたかもぉ??


必死で我慢していた羊二が、懐かしい。悲しい想いをしたけど・・

自分の身が、持つのか・・??

許していいのか・・



 羊二が、任務で授業を抜けた。私は、待機・・。

綾と、今度はいつ会えるかな?

学校の授業は、問題なかった・・。きちんと、アメリカで学んだ記憶がある。

進学校でも十分通用する。


羊二が、そろそろ戻ってくる時間・・

廊下に出る。


・・え?

羊二は、綺麗な女の人と話しをして・・笑っている。


【ズキッ・・ン】


痛い、胸が・・締めつけられるように痛い・・。

足が・・動かない。声も出ない。


「あっ、麗季!」


二人で仲良く、私のところに来る。


【ズキズキ・・】


胸・・心?・・が、痛い。


「紹介する。今日から、任務に加わる矢城さん。」


「はじめまして。矢城やぎ 美衣みいです。宜しくね?」


・・美衣・・さん?


「・・はじめまして。」


綺麗な人だ。嫌な予感がする・・。


「じゃ、放課後・・現地で!」


・・現地・・?


「羊二?今日は、任務・・終わりでしょ?

・・私・・任務、聞いてない・・よ?」


まさか・・もしかして・・


「え?おかしいな。今回は、違うチームなのか?

・・麗季、ヤキモチ?」と、ニヤニヤ。


「ちっ、違うもん!!」


羊二は笑う・・

けど、思い過ごしならいい。嫌な感じがするの・・。

何か、意図的な・・何か。


・・欠けている・・

重要なことが・・何?



 放課後、本部へ足を向ける。

任務の連絡はない・・大上家の呪いは、役員なら情報を知っている。

まして、ボスの耳に入らないわけはない・・。


「ボス!任務は・・」


【ドクッ】


身体が固まる。

そこに草樹が、立っていた。意図的な・・ナニカ・・


「あぁ。丁度いい・・話が」


「・・や・・嫌・・だ。」


ボスの話も聴かず、その部屋を飛び出し・・必死で走った。

草樹が、あの場にいて・・丁度いい?

・・羊二と美衣さんが同じ現場?偶然なんかじゃない!


「はぁ・・は・・」


涙が溢れる・・

大人になったのに・・悔しさで、涙が零れ・・止まらない。


「麗季・・、追いついた。」


草樹・・


「来ないで!ボスに何を言ったの?

嫌よ!話は聴かない。したくないことは、絶対に」


言葉を飲み込んだ。

草樹の雰囲気が変わる・・


「麗季、可愛い名だ・・。

本家の子・・美甘とオレの子孫・・。」


美甘さんと・・『呪いの始まり』の子孫?

二人・・の?


「呪いの最初なんて、遠い話だ・・。オレにも消えかけている。

麗季・・オレを選んで・・」


「嫌!あなた、間違ってるわ。

あなたの相手は、私なんかじゃない・・――・・?」


何か、今・・頭をかすめた・・?


「・・っ、とにかく!嫌!」


「・・今はいいよ。言っただろ?無理にはしない・・

任務は、俺が決めたんじゃない。

君が高校生になったから、重要任務に移ったんだ。

君は、もう小学生じゃない・・ヒツジに護られなくても良くなった。

それだけのこと・・。

麗季・・本当に君は・・純粋だ。

隙だらけ・・。麗季・・いつでも・・オイデ・・」


私をその場に残し、いつものように後姿・・。

・・オイデ・・


「草樹・・」


「誰の名前を呼んだの?」


後ろからの低い声・・けど、羊二だ。

ピリピリと緊張したような空気に、恐る恐る振り返る。


「・・羊二?

ど・・うしたの~?確か、任務・・じゃ・・?」


怖い顔で、私を睨み・・無言。


「・・や・・ヤキモチ・・?」


朝の仕返し・・とか、可愛いものではなく。

怖くて、会話の糸口に出た言葉・・。


失敗した・・


「分かってるんだ?ふふっ・・よかった。」


ふふっ・・って、顔が・・笑ってないよ?

羊二さん??


「ヒツジ?」


ちょっと、可愛く呼んでみる。

・・無言。


「どうしようかな・・?」

と、考える羊二は、まだ怖い雰囲気。


「あの・・羊二?」


どうしようとは・・?


「ね、麗季・・俺のこと、好き?」


・・・・。

私が、いつも訊いていた言葉??何故??


「・・好き・・よ?」


恐る恐る・・答える。

この空気が、いつ和らぐのか・・


「キス・・して?」


・・へ?


「・・なん・・」


言葉を飲み込む。

羊二の目が真剣・・


「・・う・・ん」


そっと、近づいて・・背伸びして【チュッ】

軽く重ね、すぐに離れた。


背が、高くなったから出来ること・・

私は、それだけで嬉しくて・・微笑んだ。


「・・くっ・・可愛い顔して・・」


・・?


羊二は、私の両腕をつかまえ・・引き寄せてキスをした。


「・・んっ・・」


まさか、また・・激しい・・??


「んんん~~!!」


まだ、馴れなくて・・羊二が嫌なのではないが、抵抗する。

押さえる腕は、やっぱり男の力・・。

唇を硬く閉ざしたのに、無理やり開き・・舌を入れる。


「んんっ。・・やっ・・ヤダ・・」


「はぁ・・

何でだよ・・くそっ!!

麗季、俺はお前が好きだ。麗季・・。」


嬉しい・・

けど、気持ちが追いつかない。


「私も好き・・だけど・・」


きっと、羊二の聞きたいことと・・私が言いたいことがすれ違っただけ・・

そう、それだけ・・たった、それだけのこと。


「そんなにあいつがいいなら・・もう、俺なんかに・・」


「・・嘘つき!!」


違う・・

こんなことが言いたかったんじゃない!!


大人になったつもり・・感情が、記憶が・・ついていかない。

羊二を傷つけた・・。


小学生でも、いいと・・言ってくれた。好きだと・・消えるなと。

羊二・・好き・・愛している。

あなたの心が手に入らないぐらいなら、消えてもいいと思うぐらいに。

やっと、心が通じたと思ったのに。


まだ、あなたの心が手に入らない。

手にあるのに・・落としそうだ・・・・




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