し・れ・ん!
麗季Side
羊二が部屋を出たので、起き上がる。
裸・・ふと、横腹に目が留まる。
・・!!?!
キスマーク!!
かぁあ~~。
顔が火照り、慌てて鏡の前に行く。
背中・・あまり見えないが、同じように赤い点が・・
見えるだけでも・・。
うわぁ~~!!
今更、されたことが頭を巡る。
嘘うそウソぉ~~!!
羊二・・まるで、オオカミ?!男の人は、みんな・・??
服を着て、階段を下りる。
リビングのドアのガラスから、中の様子が見える。
父と、保兄・・羊二が話をしていた。
【ガチャッ・・】
そっと、開けて入る。
「保志。お前・・どうして、冷静なんだ?」
父が、保兄に言っていたんじゃなかった。
「あぁ。俺、ちょっとだけ・・心が読める。」と、ニッコリ。
・・・・。
「「「ええぇ??!!」」」
心が、読める??
「少しね。
・・羊二の心は、実に興味深いねぇ。」と、ニヤニヤ。
青ざめる羊二・・。
一体、何を考えていたんだろう?
知りたいような・・前までなら、平気で聞いただろう。
羊二が、あそこまで・・H・・だなんて。
また、顔が赤くなる。
「『生と死の垣根』・・魔女が、歌毬夜にどう係わるのかまでは分からなかった。
誠志の雑種も・・父さんから読んだ。」
誠志さん?
『記憶のカケラを手に入れること、後悔はしない?』
【ズキッ】
頭痛で、倒れそうになる。
「麗季!」
支える羊二の匂い・・アレ?
ナツカシイ
意識が、遠退いていく・・
『想いを培って、育てて。決して、疑っては・・』
『何故、あなたが最初に目覚めたのか。――が導いた。
呪いに苦しむのは、終わり。試練に耐え、一生の相手の心を手に入れて。』
遠退く意識・・
どこからか聞こえる声。
この人・・ダレ・・だった・・?
記憶がない・・?確かに、知らない人じゃないはず・・
アナタハ・・ダレ・・
聴こえる・・悲しい声・・
今度は、男の人・・?草樹・・?それとも、・・あなたが・・
『魔女は、おおかみを惑わし・・手に入れた。
一生の相手ではないのに・・その子孫に・・相手など・・見分けられない。』
『――。解放された呪いが、雑種の俺を狂わす。オレを解放するのは・・』・・雑種・・
『呪いは語る。魔女は愛しい・・オレに狂え。ここに、お前の望む心がある。
手に入れた?オレが?いや、手に入れたのは、子孫・・。オレではない・・。
オレは、何のために在る?忘れた・・遠い昔。
一生に一人の相手、君はどこにいるの?君の、心が欲しいんだ。オレが・・』
『オレが、欲した・・。他の誰でもない。』
草樹・・いえ、『呪いの始まり』・・
あなたの捜しているのは、私ではない。
それでも、草樹・・私に固執するのは・・
これが試練だから?
・・何か、消えた記憶が・・
アナタ・・羊二に・・ヤメテ・・
近づかないで・・触れないで・・心を奪わないで・・
アナタこそ、相手が違うのに・・
苦しい・・消えたい・・
オイデ・・・・
朝。目が覚める・・
羊二・・の記憶はある。『生と死の垣根』・・私には、関係ない?
あの頭痛は・・なんだろう?
すっきりしない。何かが、欠けている・・。
まだ、体は・・小学生のまま・・。
学校の支度を整える。
クローゼットを開けると、そこには高校生の準備が整えられていた。
・・もうじき、元の姿に戻る・・。
いつかは分からないけど・・近い・・
羊二・・小学生の私に、手を出した。
嬉しい反面、複雑な気持ちがあるのは・・何故だろう?
朝食を済ませ、小学校に向かう。
「おはよう。麗季!」
綾の、元気な声に・・無言で見つめる。
彼女の言う、一歩手前は・・あんなことも含まれる?
「・・どうしたの?」
不思議そうに、可愛い顔で私を見る。
「・・脱いで。」
「え・・えぇえ~~!!」
大きな声。
意味深な私の言葉を、朝の登校時はなんとか誤魔化した。
が、すぐにバレルことになる。
背中のキスマーク。
体育のときの着替えで、綾に見つかり・・青ざめた。
大人な態度が・・今まで築いてきたものが、もろくも崩れる。
「・・忘れて!忘れて頂戴ぃ~~!!」
「・・・・。
ごめん、鼻血・・出そう。そんなの、想像できない・・。」
優貴は、普通なの??
「え・・後ろから・・も、あるけど。
いきなりはないよ?だって、キス・・して・・頬に触れて。
体に触れるのも、下に下がっていく感じで。順番・・?
きゃぁ~~恥ずかしい!!
優しく触れて、な・・舐める・・とか・・まだ、そんな・・。」
少しはあるんだ・・。
あれ?キス・・されてない。何だか、愛情が感じられない?!
だんだん腹が立ってきた!羊二め・・
綾に、元の姿の話をした。
いつ、一緒に学校に通えなくなるか・・
任務も、一緒に出来なくなるかもしれないから。
「いいな・・。年の差、なくなるんだ。
麗季、高校生になっても・・私のこと相手にしてね!」
「もちろん!」
私たちは抱き合う。
呪いがすべてマイナスじゃない。
出逢うことの出来なかったかもしれない人を、知ることが出来た。綾・・
「・・いなくなる・・かも?」
私は、もう一人に告げることにした。
嵐だ・・。
「うん。ごめんね・・。
嵐の気持ちは嬉しい。けど、私の今まで苦しんだ年の差を・・感じて欲しくない。
それに、呪いとは関係なく・・羊二が好き・・。
解放されても、心を手に入れられなくても・・消えてもいいぐらい・・
好き・・。」
「壊れるぞ・・そんな、心は・・」
「嵐・・?」
「いいか、消えてもいいぐらいなら・・俺を好きになれ!
ヒツジなんかに負けないぐらい、いい男になってやる!!」
あぁ、嵐も男・・なんだ。
数年したら、オオカミ・・。
はっ!
今は、そんな話じゃなく。真剣だった?
いけない・・羊二のHなのが、尾を引いてる。
「嵐、ダメよ!
あなた、今のままで十分カッコイイわ。もっと、ふさわしい・・」
【チュッ・・】
目をつぶった嵐の顔が目の前で、唇に柔らかい・・
キス・・?された?!
「いいか、覚えておけ?
俺のファーストキスは、一生お前だ!!
他の誰かを好きになっても、一生変わらない。
後悔なんて、しないからな!!」
ニッコリ微笑む嵐の目が・・気持ちの区切りを教えてくれた。
「・・ありがとう。でも・・」
【バシッ!!】
平手が飛んだ・・
憎めない・・けど、私の唇を奪うなんて。
そういえば、キス・・されたのは初めてだ。
ふっ・・許してやるか。
「嵐!彼女が出来たら、紹介しなさいよ!」
「嫌だよ!」
頬を押さえながらも、叫んで・・微笑む。
嵐・・あなたが、どれほど私の支えになったか。言わない・・
あなたが、出逢う・・大切な人を見逃すことにならないように。
時間は大切だから・・
嵐を見送り、風を受け・・伸びをする。
「ん~~・・ん?」
視線・・?
感じた視線の先に、大好きな人・・
「羊二!」
けど、返事はなく・・
あれ?怒ってる??
速い足取りで、私に近づき・・抱き寄せる。
「・・へ?」
そして、強引にキス・・何度も・・。
そして、どんどん激しくなっていく。
「ん・・まっ・・ちょ・・んんっ・・ん!!」
ナニ・・コレ・・舌?!!
「ん・・ふゃ・・ふ・・」
まるで、喰われるような・・
「んん~~!!」
【ドクッ・・】
熱い・・身体が・・
イタイ・・
【ガクッ】
羊二にもたれる。
羊二は、私の様子にキスを止め・・
「・・ごめ・・れ・・き・・?」
言葉を失う。
かすれる視界・・?
苦しい・・胸・・
「え・・?」
意識がはっきりし、制服を見る。
ボタンが弾け、スカートが短い・・??
「・・元の・・姿?」
満月ではない・・
羊二からのキス。それが、私を元の姿に・・。
失った記憶も、よみがえる・・。
本家にいた頃、アメリカで学んだ勉強・・。
羊二は、着ていた制服を羽織ってくれる。
「麗季・・。
この姿は嬉しいけど、嵐とキスしたのは・・我慢できない。
さっきのキスでなかったことには、しないから!
覚悟、しとけよ?」
目が怖い・・。




