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⑫-B 【 大上家シリーズ】おおかみはかぐや姫を食べた  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ1】おおかみはかぐや姫を食べた

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保志Side



 入学式。

俺にとって、女は必要ではなかった。言い寄ってくる女は多かったが、相手にしなかった。

周りの言う、綺麗だとか・・可愛い基準が判らない。

おおかみの血を引くとか、呪いだとか・・知らないが。大上家の人間は、昔からそう。


伝承を、幼いときから聞いていたが・・馬鹿にしていた。あいつを見つけるまで・・。

まさか、女を求めるなんて。


桜の木が満開。

俺の鼻に、強く甘い・・香り。

どこだ・・?嗅いだことのない匂いに、惹き付けられる。求めずにいられない・・。

強い匂いに、酔いそうになる。


はぁ・・。

息が苦しい・・。なんだ、これは・・?

はぁ、は・・

力が入らない。・・伝承?


『必ず見つける。一生に一人の・・対なる者。

手に入れろ。どんな手を使っても・・。呪いが、刻む・・』


「大丈夫?顔色が、悪いけど・・。」


桜の木に寄りかかる俺に、声をかける女。


見つけた・・。


確信する。

今まで見てきた女とは違う。俺の、初めての欲情。

欲しい・・。名も知らない君を、引き寄せる。匂いの源・・間違いない。

俺は、君の柔らかい唇に吸い付いた・・。


「・・んっ」


感じたことのない幸福感が、何とも言えない・・。


「・・やっ!汚い!!」


君は、必死で唇を拭いた。

俺の唇に、柔らかい感触が残っている。

さっきまでの匂いは落ち着くが、感情は高まる。


「はぁ・・。足りない・・。」


一生を共にする者を・・俺は選んだ。

唇にキス・・契約の開始。


俺の心を、歌毬夜・・君は手に入れた。

君が、誰かを選んだら・・俺は一生独り。必ず、手に入れる・・。


でもあの能力も・・君には効かなくなる。




歌毬夜Side



「歌毬夜、お願いがあるんだけど・・。

被服準備室の棚の、A-3にある本を取ってきて欲しいの・・。

私、先生に呼び出されて。お願い!」


白雪のお願い・・

可愛いな。真似できないけど・・。


「いいよ。取ってくるから、先生のところに行って。」


「ありがとう。」


白雪の満面の笑み。

オオカミは見てないし、赤月さんも捜してた。・・大丈夫だよね。



 被服準備室。

使わないときは、カーテンを閉め切っている。薄暗い部屋。


【ガタッ】


隣の被服室から物音。

・・?隣の部屋も薄暗い。


「オオカミ様・・。お願い。」


・・!!?!え?・・オオカミ?に、赤月さんの声。

準備室のドアは、上半分がガラス・・。

向こうの様子が見える。

赤月さんは、制服の上着がはだけ・・下着姿。オオカミに迫っている。


うそ・・。


「赤月、知ってるだろ?俺には、歌毬夜だけだ・・。

こんなことをされても・・触れても、何も感じない。

悪い・・お前を傷つけるだけだ。」


どうして、わたし・・なのだろう?


「優しいのね・・。

でも、知ってる・・。あなたの心を、手に入れる方法・・。」


「・・勝手にしろ。

さ、退いて?俺の、お姫様が見てる。」


暗いのに・・見つかった。


「赤月、後は・・お前に任せる。

・・歌毬夜、愛してるよ。」と、投げキッス。


で、オオカミは部屋を出て行った。


・・??

いつもと様子が違う?


赤月さんは「歌毬夜、どうしてここに?」と。

・・いつの間にか、歌毬夜。に、普通の話し方。


「ちょっと待ってね・・。」


白雪に頼まれた本を、準備室で探す。棚に、本は無い。

・・?

別の棚にも、それらしいものが無い・・。変だな・・?ま、いいか・・。


被服室に戻る。


「白雪に、ちょっと・・頼まれて来たの。」


赤月さんの服は、乱れたまま。

・・Hだ。ドキドキするのは、何故だ?


「そう、林五さんの頼まれごと・・ね。

・・で?見てたんでしょ。どう?」


どう・・とは?


「どうって?」


質問の意味が分からない。


「オオカミ様は・・あなたしか、女じゃないのよ。嬉しい?」


嬉しいか?

・・判らない。考えたことがない。


「考えないように、してるの?」


!!・・図星だった。


「・・やっぱり、ね。

あ~、面倒臭いわ。・・入学式のこと、覚えてる?オオカミ様との出会いよ。」


赤月さんは、オオカミに・・何かを任された。

この会話に、何の意味が・・?入学式のこと・・?


「・・いいえ。」


覚えていない・・。何か、あったかな・・?

赤月さんは、あきれた顔。


「オオカミ様が、みんなの前で・・歌毬夜にキスしたでしょ?」と、教えてくれる。


え・・?キス・・


「あ~・・。すっかり、忘れてた。

私・・嫌なことは、忘れることにしてるのよね。」


そういえば、調子悪そうにしている人に話しかけたら・・いきなりキスされた。

赤月さんは、深いため息・・。


「あなた、伝承を知らないの?」と。


伝承って、あの・・?


「けっこう有名な話よ。でも、私たちが知ってるのは、一部でしょうね。」


有名な話だったのか・・。

ふと、思う。


「赤月さんて、結構・・いい人よね?」


私の言葉が意外だったのか。赤月さんは、顔を真っ赤にして・・視線を逸らす。


「杏・・でいいわよ。」


あら、可愛い!ツンデレだ。


「杏。稜氏くんが、捜していたよ?」


杏は、微笑んだ・・。

あの後、稜氏くんが・・杏を探しに来た。

薄暗い、被服室・・。服の乱れた杏は、私に教室へ戻るように促す。

次の授業に、二人は戻らなかった・・。



 放課後。


「歌毬夜。帰ろう・・。今日は、特別な日だから。」


・・?何の日だったっけ・・。私の誕生日は、まだ先。


「築嶋様が、戻られる。・・説明は、お父様から聞いて?」


誠志は、家に着くまで話さなかった。



 築嶋家。


「歌毬夜、お帰り。

・・急で悪い、仕事が入った。お土産は、後で見なさい。・・座って。」


あぁ、お父様。また、抱擁もなしに行ってしまうんだ・・。


「誠志君から、報告は聞いた。・・おおかみが、現れたんだね。」


誠志は、お父様に報告をしていたの?

初めて知る・・。


「はい・・。」


「彼の能力は、歌毬夜の16の誕生日で効果がなくなる。

・・これを。」




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