よ・け・ん・しゃ!
朝。
学校の準備を持ち、部屋からリビングへ向かう。
「おはよう。」
「おはようぉ~」
のんびりした母の笑顔。
「みんなは?」
「父さんは、仕事ぉ!
で、麗季に伝言?『味方が現れる。』って・・。
麗季・・イジメられてるの?」と、泣きそうな顔で訊いた。
「ふふっ。まさか!
ゲームの話よ。先が見えなくて、父さんにヒントをもらったの。」
私の言葉に、微笑んだ。
『味方』・・?
疑問が多い。教えてくれる人だろうか?
幸せな家庭・・。
いつからいた?曖昧な記憶・・。
「行ってきます。」
私は、どこから来て・・どこに行く?
一生の相手、羊二・・。あなたの心は、手に入るだろうか・・?
「おい・・無視すんな!」
考え事をしながら、いつの間にか学校の廊下・・
嵐に引きとめられる。
「嵐、おはよう。」
普通に接した。
「・・おう。
麗季、俺が言ったこと・・なかったことにすんな!」
そう言って、教室に走っていく。
無かったことに・・
嵐・・あなたは、私・・。羊二から見たら、きっと・・こうなんだ。
気持ちは嬉しい・・。でも、駄目。
私には、好きな人がいる・・だから、諦めて欲しい。
傷つかないで・・他の人を好きになって欲しい。
羊二・・私が小学生だといけない?
そばにいて欲しい・・いてくれるだけでいい。
時間は、長い・・一生の相手。
まだ、誰も他の人を見ないで・・。今の私では、奪えない・・。
『あなたの心が手に入らないのは、どうして・・?』
・・?
心に、声が・・聴こえる。
呪いは、解放され・・草樹を操っているはず。
何故、雑種を選んだのかは解らないけど。
今まで、呪いは私に囁かなかった。
源は・・
放課後。
任務がないから、新体操クラブに向かう。
「麗季、私も行くよ!」
綾が、幸せそうに笑っている。
益々、綺麗になった・・。
「ね、綾・・どこまでいってるの?」
「・・へへっ。あのね・・」
顔を赤らめ、耳元で内緒話。
「ちょっと、手前・・。」と。
・・・・。
優貴・・暴走しすぎ。
「優貴は、年齢とか・・気にしない?」
「気にするよ!だから、そこまで・・」
新体操の設備は、学校の近くにある。
・・綾とは、そこで友達になった。そう、学校じゃない・・。
「麗季、話があるんだけど。」
「草樹・・」
「え?・・連歌・・じゃないの?」
綾は、初めてだったか・・
「連歌の双子。
連歌は、クラブの入り口にいるよ?」
綾は、嫌そうな顔をした。
「はぁ。嫌だけど、先に行くね。」と、ため息。
「うん。」
草樹、あなたの目的は?
近くの公園に場所を移す。
「私をどうしたいの?」
「手に入れたいけど、無理にはしない。
だって、隙だらけだ。羊二は、君を傷つける・・だろ?」
「・・傷つけているのは、私だ。」
私の心・・
そこにも、隙があったのかもしれない。
草樹は穏やかに微笑む。
「優しいんだね・・。」
呪いを忘れるほど・・
連歌の任務中の優しい言葉と、同じ。
「草樹。呪いは・・」
草樹は、私に近づき・・手をお腹に当てた。
「・・麗季、君は・・もうすぐ女になる。
ふふっ。君も、隙だらけだ・・。
可愛いね。」と、微笑んで離れる。
「・・それが、あなたとどう関係が・・」
緑色の目に変わる。
「子を作ることが出来るか、そうでないか・・大きな違いだ。
くく。この目は・・おおかみには、効果がない?
そうかな~気持ちは伝わるだろ?」
「草樹、先に言っとく。
私には羊二・・一人だけ。他の誰にも、心は動かない。渡さない!」
「君が純粋であればあるほど・・。
麗季、俺も言っとく。
傷ついて、休む場所が欲しいなら・・俺にもたれろ。
ただ休む・・その場所に、俺を覚えておいて。」
ヤスム・・場所・・?
草樹は、ニッコリ・・笑う。
「またね、麗季。」
クルッと方向を変え、歩いていく・・
草樹・・あなたは、どこまで呪いに支配されている?
ありえない・・。あなたが、私に固執する理由が見つからない・・。
女に・・なる?
私は、自分のお腹に手を置いた。
・・生理・・が、始まる?
かぁ~~。
草樹の言葉が、頭を巡る・・。
確かに、子供ではない。胸が大きいのとは、違う・・。
そうか、私は・・女の子から、女になるんだ。
増える責任・・
生理が来た。体が、だるく・・起き上がれない。
夢うつつ・・何かが、私に囁いた。
『一生に一人の相手を、必ず・・手に入れて。
彼を本当に解放するのは、あなたと・・私。
麗季、何故あなたが・・最初に目覚めたのか・・
私が導いた。
呪いに苦しむのは、これで終わり・・。
試練に耐え、一生の相手の心を手に入れて。あなたの記憶も、少しずつ・・』
【コンコン】
「麗季、入るよ~。・・大丈夫?」
円華姉だった。
「うん。・・円華姉、訊いてもいい?」
「うん?」
優しく、頭をなで髪に触れ、微笑む。
「諷汰さんとは、呪いが解かれて・・何か変わった?」
「・・うぅ~~ん。私たちは、変わらないわ。
緑の目が、関係ないし・・ただ・・」と、視線を逸らし・・口を閉じる。
「何?」
「バカバカしい話。男って・・
新月に、楽しみがなくなったって・・ね。」
あぁ、耳と尻尾。
「男は、嬉しいの?」
「目を輝かせてたわねぇ・・。
呪いか。
麗季・・私は、呪いで諷汰を好きになったんじゃない。
出逢うべき相手だったと思うの・・。」
「聴かせて・・」
目を閉じる私に、円華姉は語る。
「出逢った相手は、本当に・・相手だろうか?
疑問に思った・・。」
本当の・・相手か・・?
私は、考えたこともなかった・・。
「私たちは、呪いを解放するために存在するわけじゃない・・。」
呪いを・・解放・・
「麗季、寝たの・・?」
意識が沈む・・
遠い・・円華姉の声が・・遠退く。
『苺愛の役目も・・。
・・自然に出逢い、惹かれるだろうか?
本当に出逢うべき相手なら。・・見つけるなら、奇跡。
出逢うべき相手・・心を手に入れたことになる。』
役目・・?
『麗季・・真実のカケラ・・記憶を受け取って。
歌毬夜の婚約者だった・・大路 誠志に、会うといい。
試練が近い・・心を・・出来るだけ・・』
あなたは、誰?
味方でしょ・・?
『そう、あなたの味方。私は、予見者・・。
時が来たら、逢うことになる。名は明かせない。
想いを培って・・育てて・・決して、疑っては・・』




