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⑫-B 【 大上家シリーズ】おおかみはかぐや姫を食べた  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ4】おおかみ女と嘘つきな青年

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か・い・ほ・う!


 采兄が、呪いを解放した・・。

私の知らないところで、物事は動いていた。私には、ただ・・

采兄との接触が禁じられた言葉だけだった。


その解放は、日中というより・・平日の朝だった。

采兄・・どこで、ナニをしているのやら・・。


あっけない・・解放。


私には、理解できなかった。

疎外されたような気分。子供は、蚊帳の外・・。


伝承は、いい加減・・

満月の夜・・それが、解放の条件。守られたのは、保兄のときだけ・・。

どうでもいいか・・私には・・。


解放されても、羊二が好きだ。変わらない・・

例え、呪いの決めた・・一生の相手だとしても・・。

私は、彼以外の人に・・心を許さない。他の誰も・・好きにならない。

亡くしたら、一生・・独り。



「麗季。屋上なんかにいると、風邪引くぞ?」


「嵐・・。」


「何だよ?俺じゃ不満か?」


同じクラスのあらしは、自覚がないが・・もてる。

そして、私に想いを持っている。


「私に係わらないで・・。」


嵐のためにならない。他の人を好きになるべきだ。

解放された私に、羊二は・・そう言うだろうか。

怖い・・彼に知られるのが。彼が、拒絶しきれないのは・・憐れみ。

大上家の呪いを知っている。一生に・・ヒトリ・・


優しさに、甘え・・期待する。

緑色の目なんかなくても・・彼の心を手に入れられると・・。


「麗季、俺・・お前のこと・・」


「嵐、ごめん・・何も・・言わないで・・」


「好きだ・・」


「・・っ。ごめんね・・」


涙が零れる。

言葉に出来ない感情に、心が壊れそうだ。


「ヒツジなんか・・やめちまえ・・」


走り去る嵐の声は、かすれていた・・。


「ごめん・・」



 放課後。

任務のために、現地に着く。ここには、今日・・二人。

羊二は、まだ来ない。

・・学校が長引いているのだろうか?今日の任務は、重要ではないんだな・・。


遠くに、羊二を見つける。

姿を見るだけで・・幸せだ・・。

自分のもとに、任務のためだが・・やってくる。


「待ってないよ?」


「・・訊いてない。」


いつもと同じ、素っ気ない言葉。


「麗季・・」


でも、見つめる眼が・・熱い。


「何?」


ドキドキする。


「解放されたのか?」


【ビクッ】


体が、固まる・・。


何故、彼が知って・・。

言葉が出ない。


「・・そうか。・・任務・・行くぞ。」


何故・・訊いたの?何故・・

それ以上・・何も言わないの?


・・終わる・・?

この、憐れみの・・優しさも・・私には・・


「ごめ・・

もう・・無理・・羊二・・」


逃げた・・


怖い・・私は・・

消えたい!!涙が止まらない・・苦しい・・

頭がおかしくなりそうだ・・。


「麗季!」


【グイッ】


手をつかまれたと同時、羊二の声。


追いかけてくれた・・嬉しい・・

例え、それが・・任務の為だったとしても・・。


でも、涙を見せたくない!


「やっ、離して!どうして・・

あなたの前じゃ・・どんなに頑張っても・・大人になんかなれない!!」


「・・関係ない!」


羊二の、意外な大きな声。と、熱い・・彼の腕の中。

心臓の音・・これは、私・・?それとも・・


「・・っ・・っ・・くっ・・」


声を、必死に我慢する。


「いいよ、泣いても・・。

幻滅しない・・君が、子供なんて・・思わない。

ごめん・・無理をさせたのは・・俺だ。」


今までにない優しい口調。

沢山の言葉が、聞こえる。


「麗季、俺・・」



「取り込み中、お邪魔するね。

でないと、手が出せなくなるから・・。」


私たちの前に、「連・・歌・・?」


彼は、私に微笑む。

雰囲気が・・違う?


「双子の草樹そうじゅだ。

はじめまして、麗季・・解放された呪いが、選んだ・・おおかみ・・。

見つけた・・」


選んだ・・おおかみ・・?解放された呪いが、選んだ?

・・采兄が解放した呪いは・・本当に・・消えた?


「麗季、君も解放された・・。」


草樹は、私の様子を見ながら言う。


「あなたね?羊二に、解放のことを言ったのは・・」


私の質問に、ただ・・微笑んだ。

それが、大したことのないように・・。


いや、わざと・・?


「何が、目的なの?

あなたも、解放されたでしょ?連歌と双子なら、雑種として・・」


「ふふっ。連歌が、話したの?」


目が、緑色に変わった?!


「あなた・・」


「麗季、見るな!」


私の両目を、羊二は両手で覆う。

何が起きているのか・・頭がついていかない。


「今日は、挨拶だよ・・。

ヒツジ・・か・・。くくっ。・・時間はあげたよね。

後悔するといい・・。君には、無理だから。

麗季は、オレのモノだ!」


遠退く足音。

見えない視界が・・広がる。


「羊二・・」


「名・・、

いや・・いい。呼んで・・」


「羊二・・私のこと、好き?」


「・・・・。」


卑怯だ・・。期待させる沈黙。

知ってる・・本当は、私のこと・・


「嘘つき・・」


見つめる羊二の眼が・・温かい。

名を・・呼んでもいいと・・言ってくれた。


「麗季・・。・・っ・・」


言葉を飲み込む彼が、辛そうで・・。

きっと、これから・・羊二の一言が・・何もかも変えてしまう。


「任務だ・・」


「はい。」



 家。

父を捕まえる。


「父さん、話があるの・・。」


父は、風呂上り・・。

保兄や円華姉は、本家に呼ばれて留守・・。

呪いが解放されたから・・きっと、采兄も呼ばれている。


「あぁ。・・何だ?」


冷蔵庫に手を入れ、ビールを出しながら父は訊く。


「呪いは、解放された・・。自由になったの?」


私の言葉に、ビールが床に落ちる。


「母さん、外してくれ・・」


父の雰囲気が変わる。

テレビの前で洗濯物をたたんでいた母は、私たちの話を聴いていなかった。


「お話するの?

じゃ、後・・お願いね♪」と、何故か嬉しそうにリビングから出る。


「座りなさい。」と、父。


「・・座ってる。」


冷静な私に、父は周りを見る。

冷蔵庫を閉め、床に転がったビールを机に置き・・倒す。


「・・落ち着いて。」


「・・あぁ。すまん・・。

コホンッ・・どこから、話せばいいかな。」


「全部、最初から・・。」


どこか感じていた違和感が、私に衝撃より・・

納得に換えた話が・・始まる・・。


「まだ、本家も知らない。・・『生と死の垣根』さえ。」


私が蚊帳の外だと思っていたことが・・私に降りかかる。


「采景が、解放した呪いは・・麗季・・君を試す。

解放された過去の狼が選んだ・・おおかみ」


「と・・」


父さん・・

言葉を飲み込んだ。多分、私の予想が正しければ・・


「麗季・・。

お前は、家の子じゃない・・。」


やっぱり・・


「まだ、言えないことがあるが・・いずれ、解る時が来る。

麗季、一生の相手を選んだね?」


「はい。」


「信じていい。惑わされるな・・。

後、何があっても・・お前は私たちの娘・・末娘・・麗季だ・・。」


「・・はい。父さん・・」




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