け・い・や・く!
大上家・・第四子。次女。大上 麗季
麻生学園 小等部6年生。新体操クラブに所属。
「ね・・。キスしたい・・。」
「・・・・。」
いつものように、クールな眼で見つめる。
【ドク・・ン】
小学生なのに、自分の欲望が刺激される。
「任務。」
ちっ・・
舌打ち。
「そんな女の子は嫌い。」
「嘘つき・・。」
ヒツジのくせに、嘘つきだ。
小学5年生の冬。
クリスマスのプレゼントに、冬の白いワンピースをもらった。
冬の雪をイメージした、真っ白でフワフワ・・
凄く気に入った。嬉しくて、コートも着ずに夜の散歩に出かけた。
生地が良くて、その日はそんなに寒くなかったのも関係するのか・・ワンピだけでも寒くはなかった。
遠い学校(太西学園)の屋上の手すりの上に風を受けて立った。
そこで、任務中のあなたに出逢った。
「・・匂いが・・する。」
甘い匂いだった。
嗅いだこともない匂いに誘われる。
屋上のドアが、静かに開いて・・あなたが入ってきた。
見回り中のあなたは、冷静に私に訊いた。
「誰?」
私に、呪いは囁かなかった。
けど、本能が知らせる。私の相手だと・・。
大上家の伝承、一生に一人の対なる人。
認識できる顔の男・・
いきなりの突風に、体が浮いた。
着地は、簡単だったけど・・
あなたの必死な顔・・あなたの差し伸べた手に・・落ちたいと思った。
その胸に、抱きしめて欲しい・・
【ポスッ】
温かい・・
優しい匂いに、泣きそうになる。懐かしい・・
「大丈夫か?」
・・私に心配そうな顔を見せる。
その瞳に欲情したの。
「・・ん・・?」
初めてのキス・・。契約の開始だった。
あなたは、驚いた眼で・・私の緑色の目を見た・・。
それなのにあなたは冷静で、私のキスをなかったことにしようとした。
「君・・。
危ないから、送る。」
無表情、無口・・。
そういえば、あなたの心配そうな眼を最近見ていない。
見せてくれなかったから・・忘れていたわ・・。
ふふっ。思い出した。
プールに落ちた私を、躊躇なくプールに飛び込んで助けてくれたから・・。
ヒツジ・・聖城 羊二
私立 太西学園 高等部一年。保兄と同じ年の男の人。
今、私は小学6年生・・。年の差が少しあり、縮まらない。
羊二は、気にしているのだろうか・・。
私を全く、女として扱わない。
必死で近づいた。
「ね、付き合って?」
「どこに?」
「彼氏になって!」
「何故?」
ムカッ!!
「この人、私の彼氏!!」
皆に聞こえるように叫んで、抱きついた!
強引だった・・。
羊二は、否定しなかったから・・周りはそう思っている。
でも、羊二は私の頭の上で・・ため息を吐いた。
一緒にいたい・・
心が欲しい。緑色の目で・・きっと、簡単に手に入る?
怖い・・
何かが、私を引き止める。
怖い・・恐怖が・・私を包む。
「・・寒いのか?」
どうして、優しくするの・・?
麻生学園は、幼等部から大学部まである。
太西学園は、姉妹校で・・頭の良い人が多い。
他にも規模は違うが、5つ姉妹校があるらしい。
大きい組織の中、たくさんの役員が秩序を護っているのだとか。
羊二はそれだった。
私は、友達と一緒に無理やり入り込んだ・・。チームAとして。
ボスは話の分かる人だった。
「合格!!」
羊二は、ため息・・
友達は、兄を殺した犯人を捜していた。
実は、この役員の話を最初に言ってきたのは彼女だった・・。
福本 綾
背は、高め・・綺麗な子で、ファンクラブがある。
最近、彼女は・・高校生と付き合っている。
多河 優貴
太西学園 高等部 二年生。
羊二より、一つ年上で・・話しやすい人だった。
いいな・・
今日の任務は、その犯人を捕まえること。
まぬけにも誘き出したプールに落ちてしまう・・。
制服が水を吸って重いが、一人でも泳げた。
大上家は、狼の血を引いているらしく・・身体能力が特殊。
でも、躊躇なく羊二がプールに飛び込んで、助けてくれた。
そして、嫉妬のような態度・・。
「見るな!」と、優貴の出した手を払い・・睨んだ。
水から上がり、私の手を引く・・。
私の濡れた服に、強調される胸。
隠すように、自分の濡れた制服の上着で覆う羊二。
私のこと・・好き・・なんだよね?
「嵐の兄。多河 優貴です。」
「あぁ、綾ちゃんの・・」と、柔らかい笑顔。
・・初めて見た・・。
いつも、無表情なのに!
悔しい・・
覚えていろぉ~~優貴めぇ!!
ズキズキと、胸が痛む・・。
私は、何故・・小学生なの・・?悔しい・・
父は私が一番に、最初に目覚めた時・・驚かなかった。
夜に出かけても、何も言わなかった。
疑問に思わなかったわけじゃない・・。
春に保兄が『かぐや姫』を見つけ、大上家は、呪いの解放に力を入れだした。
采兄も、契約をした。
呪いを解くために、家族が協力して家を空けたその夜・・
高校生の男の所に行くというのに・・。父は、何も言わなかった・・。
父は、どこまで知っていたんだろう?
『生と死の垣根』は、大上家の伝承から消されていた。
後日・・一番年上の円華姉も、目覚めた・・
それを知り、何かが私の確信になった。
時が・・来る・・。
でも、それは・・まだ先のこと。
『かぐや姫』の匂いは、特別で・・
私を駆り立てる気持ちを抑えきれずにいた。
・・欲しい・・羊二の心が・・。
狂いそうだ・・
羊二は、太西学園の寮に入っていた。
男の人って、無用心・・
て、当たり前か~。5階建ての2階部分・・だし、男の寮に泥棒なんてね・・。
ギリギリ、落下防止の鉄格子がついていない・・窓も開いている。
うししし・・潜入成功!!
「・・なっ・・」
羊二は一瞬、驚いたが・・冷静に何かを理解した。
「泊まるのか?
布団は隣の部屋だから、そこで寝ろよ?」
夜に忍び込んだのは、初めてだった。
しかも、テレビの前のソファーで転寝していた羊二の上に乗っている私に・・そう言った。
寝ぼけているわけではない。
悔しい・・
「ヒツジ?
ね、小学生だけど・・胸は、あるよね?・・感じない?」
私の胸は押し付けられ、洋二の胸に乗り・・
視線からすれば、良い谷間になっているはず。
でも・・
「柔らかい肉」と。
肉・・確かに、肉だが・・。
「羊二・・む・・」
手で口を塞ぎ、私を睨む。
羊二は、私が名前を呼ぶのを嫌う。
何故なのかは、分からない。
だから、呼ぶのは心の中だけ・・言うときは「・・ヒツジ・・」
悲しい・・。
本能が言う。
緑色の目が、何のためにあるのか・・と。
「私のこと・・好き?」
私が、女だと・・知って欲しい。
上目で、涙を潤ませるが・・
「好きじゃない。下りて、疲れるから。」と。
「嘘つき・・」
だったら、何故・・追い出さないの?
「・・下りて。」
羊二は、起き上がって・・
上にいる私を子供のように・・床に下ろす。
「コー・・。
ホットミルク作る、そこに座って。」
ブラックコーヒーだって飲めるし、飲んでも眠れる。
いつ、私は・・女として・・見てくれるのかな。
テレビは、アニメに・・
テレビを消してソファーの上に、横になる・・。
まだ、羊二の温もりと・・懐かしい・・匂い。
優しい匂いは、私を求めているように・・錯覚させる。
「・・っ・・」
涙を、必死で堪える。
・・泣かない・・
ここで泣いたら、子供の位置から・・動かないような気がした。
【コトッ】
床に、ホットミルクの香り・・。
羊二は私に背を向け、床に座りコーヒーを飲む・・。
身を起こし、マグカップに手を伸ばした・・?
「ぷっ・・」
私は、思わず噴出す。
「何?」
後ろ向きで訊く。
「ふふっ。これ・・」
口を閉ざした。
マグカップは、可愛いブタの絵が入っている。
こんなの、羊二は・・買わない・・。
「何・・」
「やっ・・こっち、見ないで!!」
涙が零れた・・。
羊二は、振り返るのをやめ・・黙る。
「・・っ・・ぅ・・くっ・・」
我慢していたが、溢れる涙に・・声が漏れる。
「っ!!」
羊二は、勢いよく振り返り・・私を抱きしめた。
「・・?!」
びっくりして、涙が止まる。
「・・よし。」と、冷静な顔・・
で、離れる。
「????」
不思議そうな私に「動くなよ。」と。
床に、牛乳の池。
「・・?」
羊二は、ただ・・
私が泣くのを止めたかった・・だけ??
丁寧に、床を拭く羊二は・・無言。
「先、風呂に入れ。俺、任務だから。」
「私も行く。」
知ってる・・嘘だ。今日の任務はない。
先に、ボスに確認したし・・入れないで!と、お願いしたから。
「・・・・。」
無言。
「・・嘘つき。」
「あぁ、俺は・・嘘つきだ。」
珍しい・・会話調だ。
「ね、私のこと・・好き?」
「・・・・。」
また、無言で・・床に座り・・
テレビをつける。
「好き・・好き・・愛してる・・」
小さく、消えるような声で囁く。
・・羊二、私が・・小学生でなければ・・手を出してくれる?
関係ないか・・。
だって、優貴は・・綾に手を出すもの。キスをして・・胸に触れる・・。
はぁ・・
私、魅力が・・ないのかなぁ?
「ねぇ・・。
私、優貴に・・魅力的だって言われたけど・・」
「ぶっ・・げほっ!!こほっ・・っつ!」
コーヒーを噴出した。
「??」
「なっ・・」
口元を拭いながら、私の方に視線を向ける。
「優貴は、ロリコンかしら?」
私の質問に「ちが・・。~~・・」
言葉が小さくなり、口を閉ざす。
匂いが、強くなる・・。
駄目・・嫌われる・・のに。
ソファーから立ち、座っている羊二に抱きついた。
「離れて、重い。」
匂いは、私を・・求めて・・いる。
「麗・・んっ・・」
唇を重ねた。
抵抗は・・ない・・
でも、目は・・私の眼をじっと・・見ている。
「っつ!!」
きっと、緑色に・・なっていたんだ。
「麗季・・」
「ごめ・・ん。綾のところに、泊まる・・から。」
羊二の眼を見ることが出来なかった。
痛い・・何故か、胸が・・。
切り刻まれるような・・痛み。
苦しい・・助けて・・誰か・・
「っ・・忘れて・・」
私は、その部屋を飛び出した。
追っては来ない・・




