恋?
校内研修当日。
結局美衣とは、あれから話をしていない。
俺の機嫌は最悪になっていたので、毎晩カレーを作り続け・・草樹に食わせた。
今日も、当然カレーだ。
通常通りの授業だが、皆は浮かれていた。
右後ろに、存在を意識しながら・・振り向くことも出来ず。
俺は、小学生か!!
いや、今日日の小学生だって・・こんなことは無いだろう・・。
ちっ・・
「采景く・・んんっ、あっ・・」
「はぁ・・はっ・・はぁ・・」
八つ当たり・・
いや、落ち着かない気持ちのはけ所・・興奮している対象は・・ダレ・・だ?
くそっ!!
感情が邪魔をする・・。触れているモノに、感じない
「・・?采景くん・・?」
「・・ぶな・・」
「え?」
「俺の名前を呼ぶな・・。
退け・・俺の前から、消えろ・・」
足りない・・満たされない・・
っ!!
「ね、もう・・入っていい?」
【ギクッ】
血の気が引くのを、初めて経験した・・
「美衣・・なん・・」
平然とした態度で話し出す。
「ここ、調理室。
私は担当よね?・・何、気まずい顔してるの?
あんたの噂なんて、知ってるわ。私に、危害がないならどうでもいい。
この間のことも、忘れてあげる・・きゃっ」
美衣の言い終わらないうちに、腕を引いた。
俺の腕の中にいる・・女。
怒り・悲しみ・・黒い、醜い感情が渦巻く・・
力の加減なんか、考える余裕なんてない。
「いっ・・痛。離して!!」
何かが切れた・・
「美衣・・お前、俺のこと・・どう思っているんだ?」
抵抗している動きが止まったのは、一瞬。
冷静に振り返る彼女に、心を・・えぐられたように感じる・・。
「ふぅん?私のこと、好きなの?」
・・?
微かな・・解らない違和感に・・彼女から手を離し、距離を作る。
「・・?
まっ、いいわ・・どうでも。さっ、作業をしましょ?」
意外に、手際よく料理していく・・彼女・・
本当に、美衣・・?
時に見せる、雰囲気に・・惹かれる・・
好き?いや、何かが違う・・。
何だ?何が違う?
・・っ!!
イライラする!!
「うわ・・大上、あんた・・凄いね・・」
晩御飯。
「采景ぉ~~。鬼ぃ~~~~」
目の前に座り、言葉を吐きながらも、カレーを口に運ぶ草樹。
「嫌なら食うな!」
俺の冷たい視線に、ニッと笑う。
「嘘。
愛してる・・続いているカレーも、全部種類や味付けが違うし・・
俺って、愛されてるぅ~~」
周りが、反応する・・ザワザワと。
「おい、大上・・お前たちって?」
・・・・怒。
「いや、何でも!!」
俺の睨みに、視線を逸らし口を閉ざす外野たち・・。
くだらないことを考えるな!
「はははっ、キッツイ!!おもろっ・・くくっ」
楽しそうなのは、草樹だけだった。
「夜、恒例の肝試し・・強制だけど?」
部屋はどこだと、訊いた俺に対する草樹の答えが・・それだった。
「・・・・。」
さぼろうとした不機嫌な俺を、外に引きずっていく・・。
馬鹿らしい・・
ふて腐れ、くじを引こうとしない俺を見抜き・・
「これ、お前の番号ね!」と。草樹は紙を、無理やり手に握らす。
「痛いな・・。」
ニッコリ笑った顔で、力が半端ない・・
低い声で「逃げるなよ?」
「・・分かったって・・」
たかが、肝試しに・・本気なのか?
確かに、みんなが楽しそうにしている。空気を読まないと、係りの草樹に悪いか・・
「参加するよ。」
俺の一言で、上機嫌になった草樹をつい・・可愛いなんて・・
いや、憎めない奴だと思っただけだが。
「おい、美衣は15番らしいぞ?」
「マジ?俺、7番・・
くっそ!!チャンス狙ってやろうと思ったのに。」
「はぁ?おっ前・・口だけだろ?」
「わかんねぇぜ?暗闇に、ムラっときたら・・」
「ははっ、帰って来ん・・とか?」
イライライラ・・殺意に近い感情・・
「人数、欠けたら・・赦さない・・よ?」
隣の草樹は、更に低い声で・・最高の笑顔。
・・・・。
ちっ・・あの二人、覚えていろ?
「で、采景・・何番なの?」
手に渡された紙に、視線を向けながら・・
少し期待する自分がいる?
「・・16・・」
がっかりとした、脱力感に・・苛立ちを感じた。
「そ、俺の後だね。」
・・俺の前って15?
「気になる?」と、ニヤリ顔。
「なっ・・にが・・」
変に口が動かない・・
「采景くぅん~。私、16番なの・・何番?」
胸に自信があるのか、強調するように寄せて見せながら・・
俺の腕に押し当てる。
「離れろ・・」
睨むが、無神経なのか・・効かない。
「はぁ」
嫌々、その女を押し退ける。
「いやぁ~~ん。」
嫌なのは、俺だ!!
「じゃ、先行くね!」
草樹は、美衣と並んで歩いて行く。
「行くぞ!」
「まだ、先の人が出たばかりよ?」
だから・・だろ!
「ダメよぉ。10分あいだあけるって、決まってるの!」
その時間が、腹立たしい・・時計ばかりを気にする。
「采景くぅん、そんなに楽しみなんだ。可愛いぃ。」
こいつの一言一言が、ムカつく!!
「黙ってろ!」
「照れてるのぉ?いいよ、みんなには黙っててあげるよぅ~。」
言葉が通じないらしい・・
「時間だ、行くぞ・・」
早足で歩き出す。
「まってぇ」
俺の腕に、しがみついてきて・・スピードが落ちる。
「速く歩け、置いていくぞ!」
強引に、速度を速める。
「きゃっ」
ガクッと、体の一方に重み。
「このっ・・」
つまずいた拍子に、足を怪我している。
置いていきたいが・・俺も、そこまで鬼じゃない。
「ちっ。医務室に行くぞ・・」
「おんぶ!」
ムカッ!!
学校の保健室とは違い、合宿施設の医務室は外に近い場所にある。
医務室に、就寝時間まで先生がいるはずだった。
明かりが点いているが、先生は不在。
ちっ・・
「座ってろ!」
イスに座らせ、棚の薬品に手を伸ばす。
「・・っ」
後ろから抱きしめ、胸を押し付ける。
「ねぇ。今日、サトミに手を出したんでしょ?
だったら、私にもしてよ!体には、自信が・・」
サトミ?今日・・
あぁ、顔は覚えていないけど・・
「離せよ。手当てがいらないなら、行くぞ?」
邪険に対応しても、どこから自信がわいてくるのか
「もう、遠慮しなくていいの・・。ね、好きにして・・いいよ?」
上目で見つめるのは、下品なメス・・。
「悪ぃ。お前には、感じない・・。」
「どうして!サトミも美衣も、同じでしょ?」
・・美衣・・が、同じ?
「今頃、草樹くんを襲ってるわ!
後を追いかけたって、邪魔になるわよ。それとも、三人で仲良くヤッちゃうの?」
言葉を交わすのも、嫌気がする。
手を払い除け、俺の中から存在を消し去る。
わめく声も、言葉として認識しない。
俺は、その部屋を静かに出る。
ドアを閉め、目は真っ直ぐに・・走り出す。
美衣は、草樹を・・どう思っているんだ・・?
美衣・・お前は、違う・・よな?
合宿施設の近くに小高い丘、そこの小さな祠がゴール。
その道から外れ、木々に混じり、闇に隠れ・・カップルがイチャついている。
「はぁ・・」
息が切れる。
まさか、本当に・・この中で、草樹と・・?
苛立つ・・この感情は・・。
違う・・違う!違う!!くそっ!!
「あれ?・・采景?」
後ろからの声は、草樹。
と、美衣・・
ホッとした俺は、その場にしゃがみ込んだ。
「采景。お前、相手はどうした?」
声のトーンが低くなった草樹は、係りのことしか頭にないようだ。
「怪我したから、医務室に連れていった・・よ。」
嘘はついていない。
「残念ね。先生がいて、食べられなかったの?」
美衣も、いつも通り普通だ・・。
「狙うのは、一匹・・。逃がさない・・」
他は、いらない・・




