猟師
「築嶋さん。捜したよ!
林五さんも迷子になるし・・?大丈夫?顔色が悪いよ・・。
保健室に行く?」
・・稜氏くん?
どうして、彼が捜すのか・・不思議そうに見た。
「・・俺、学級委員長だよ。
はぁ・・存在感ないし、いいよ。後は、オオカミ一匹・・か。」
【ビクッ】
・・オオカミという言葉に反応してしまった。
「築嶋さん。お父様が、手を持っておられる。」
・・?
何を言っているのか解らない。
・・みんな、どうして何でも知ってるの?
「お父様が?・・稜氏くんは、何を知っているの?」
オオカミ・・。築嶋家の伝承・・。
「今は、時じゃないね・・。
俺は、リョウシ・・それでいい。大路様に、よろしく言っといて。
さ、授業は始まってるよ!こっち・・。」
道案内・・守人。赤月さんの・・。
・・いい人だな。
オオカミを、その後・・見なかった。
・・ほっとした。
誠志が、白雪を想う。・・彼も、おおかみの血筋。
大路家に、幼いとき遊びに行った。彼は、血に反応し・・人格が変わる。
私は、優しい誠志が好き。優しい誠志は、白雪が好き。・・そして、おおかみの部分が・・私を求める。
私は・・おおかみに好かれるのだろうか。
誠志の心は、全て手に入らない。
「築嶋さぁん?」
この声は、・・。
「何?オオカミなら、知らないわよ?」と、先に言う。
聞きたかったことを先に言われ、ムッとした赤月さん。
「そうぅ。ならいいわぁ~。」
・・?
いつもなら、ここで・・どこかへ行くのに。
真剣な目・・で、私を真っ直ぐに見る。
「歌毬夜・・。きれいなものには、棘があるわよ。」と、普通に言った・・。
「赤月さん・・?」
彼女は、そう言うと「オオカミ様ぁ~?どこぉ~?」
いつもの調子・・で、行ってしまう。
自分の周りで、何かが動いている。
「杏~?」と、遅れて・・稜氏くん。
「あっちに行ったよ?」と、指差す。
「ありがとう。」
後を追いかける、彼の後ろ姿・・。
「待って!」
つい、引き止めてしまった。
「・・ごめんなさい。」
恥ずかしくて、顔が赤くなる・・。
「何?」
どうしよう・・。
引き止めたものの、まだ時ではないと・・さっき言われたばかり。
「ふぅ・・。杏も、判っているくせに・・。
いいよ。オオカミは、手を出さないからね。」
・・?!!
「え?・・」
意外な言葉・・だった。稜氏くんには悪いけど、もう手を出されていると・・。
女が言うのも変だけど、あんなにフェロモンたっぷりの・・おいしそうな体つき。
稜氏くんは、ん~っと考えながら。
「じゃあ、これだけ。
この学校にいる人は、大上家のことを知っている。
オオカミ様は、好きになった人にしか欲情しない。
・・もう、見たかな?緑色の目・・。
人を惑わす能力も、決めた一人にしか使えない。
・・狙った獲物は、必ず手に入れる。大上家の存続のため。
これは、ホントかな~?相手は、一生に一人だとか・・。」
一生に、一人・・?
あいつが・・?ナイナイ・・無いって!
「さ、仕事だから・・杏を捜しに行かなきゃ。」と、にっこり笑って・・走っていく。
・・仕事?稜氏くんも、謎が多い・・。
誠志は、一人・・を選んでいないのか。血が・・薄いのか。
おおかみのような性格の時でも、見たことない・・緑の目。
自分が解らない。選んで欲しいと、願っていない・・。
『きれいなものには、棘があるわよ。』
・・赤月さんが言っていた。
きれいなもの?棘って、バラとか・・花?
はぁ・・。最近、自分の思考能力が弱ったのか・・?落ち込む・・。
誠志は、訊いたら・・答えてくれるだろうか?
まずは、お父様・・。久しぶりの帰国。
稜氏くん・・知っていたのかな?誠志も・・?だから、一緒に帰るって・・言ったの?
知恵熱が・・。




