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⑫-B 【 大上家シリーズ】おおかみはかぐや姫を食べた  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ3】おおかみは七匹目の子ヤギを狙う

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始まり?


 首を傾げ、俺を誘うように目を細める。


「知りたいの?」


俺は黙っていた。


「ゲーム・・しましょ?」と、ニッコリ笑う。


「ゲーム・・だと?」


俺は、警戒しながら訊く。


「どんな?」


「ギリギリを試すの。

この体と匂いは、苺愛の本来のもの。人格が戻っても、苺愛に記憶はある。

つまり、今も意識の奥に苺愛は存在する。

手を出したあなたに、どう反応するのか・・」


「美衣・・。お前の目的は何だ?

俺は、過去を見た。呪いの始まりが、俺の思った通りなら・・

そのゲームは却下だ。苺愛に戻れ・・。」


「選んだと解釈するわ・・」


美衣?雰囲気が、苺愛に戻った?

匂いが消える。


「苺愛・・?」


「あなたが選んだ人格は、消える・・。これが最期・・。

私は、七匹目。あなたの心を、手に入れた。

一生・・あなたは・・独り・・」


苺愛は、意識が遠退き・・前に倒れこむ。

慌てて、受け止めた。


意識のない彼女を抱き上げ、俺の寮の部屋に運ぶ。


『最期』・・?

この、腕にいる女は・・俺の一生の相手ではない・・?

俺は、一生・・独りなのか?


心は、まだここにある・・。

呪いとは、一体何だ?


俺は、苺愛のことを・・何も知らない。

俺たちは、本当に・・一生の相手だったのか?


・・ 苺愛・・



 寮。

苺愛を抱えたまま、ドアに鍵を挿す・・


「開いて・・あぁ、草樹か・・」


ドアを勢いよく開け、中に入る。


・・?

不思議な臭いと、草樹の匂い。

漢方だろうか?薬草の匂いが、複数に・・。


部屋に足を進めた。

中には座った草樹と、立ってお辞儀をする黒衣装の女。


「お帰りぃ。

さ、矢城さんをベッドに寝かせて。話があるんだ!」


事情を知っていたのか・・。


苺愛をベッドに寝かせる。

寝息が聞こえ、生きているのを実感しながら・・不安が襲う。


草樹の前に座り、立っている女に座るように促す。


「これが仕事なのか?」


草樹はうなずき、ニッコリ笑う。

何故か、それが俺を安心へと導く。


「あぁ、最初から・・この時のために近づいた。

気に入ったのは、本気だけどね・・。

呪いの解放を望む人は、多い・・から。」


呪いの解放を、俺や苺愛に望む人間・・。


苺愛は七匹目。

俺は、呪いの所為で・・苺愛に惹かれるのか?


「采景様。試練は、これからです・・。

苺愛は、美衣の中にいます。

記憶の一部も無く、呪いが一時解かれた状態で・・苺愛を捜してください。

探して、手に入れ・・心が通じたとき、初めて解放の時となる。

大上家に無かった想いを培って育てる事・・。」



俺の意識が遠退いていく。

苺愛の声が、俺を眠りに誘ったように・・『生と死の垣根』の声が、頭に響く。



『自然に出逢い、惹かれるだろうか?本当に出逢うべき相手なら・・。

でも、隠された・・七匹目を・・見つけるなら奇跡。出逢うべき相手・・

信じて・・苺愛・・あなたは、心を手に入れたことになる・・から・・』


「あぁ!今日のハンバーグ・・が・・」




 朝。

目が覚め、起き上がる。珍しく、妙にすっきりしている。


ベッドから下り、ラフな格好で台所に立つ。

冷蔵庫から卵二つに、ベーコンを出しフライパンへ。

レタスとトマトを洗い、適当に切って盛り付ける。

トーストを焼きながら、簡単なスープを作る。


【ガチャッ】


いつものように、巧妙な業で入ってくる草樹。


「おは・・やぅ~~」


あくびをしながら・・

隣の部屋に入っているのに、いつも俺の部屋にメシを食べに来る。

しかも同じクラス・・だが、嫌な気がしない。


「ほら、コーヒー飲め!」


「サンキュ~」


何だ?

何か、違和感が漂う。


そわそわして、冷凍庫を開ける。

が、おかず用に調理された食材が、整然と並んでいる。

だよな・・?


「采景、遅刻するぞ~。」


幸せそうに、コーヒーを飲みながらの草樹。

いつものように、二人で学校へ。


「おはよぅ!采景くん、草樹くん!!」


「おはよぅ。」


愛想のいい草樹は、返事を返す。俺は、いつものように素通りする。

そんな俺に、いつもの光景が目に入る。


「美衣ちゃ~ん。今日も、可愛いねぇ・・。俺と付き合ってよぉ?」


「いや、俺と今日・・映画行こうぜぇ?」


「ふふっ。いいわよぉ?」


遊んでいる女、矢城 美衣。遊んでいる俺が言うのもおかしいが・・。

何故か、美衣を見ていると腹が立つ。


「采景、何見てるんだ?

あぁ、美衣ちゃんね・・。気になるの?」


「はっ、俺が?馬鹿バカしい・・。」


俺は、足を速めて教室に向かう。

その隣についてくる草樹は、囁いた。


「彼女・・体も、心も許していないって・・」


気分が軽くなるのを不思議に感じながら・・


「どうだか・・」


授業は、滞りなく進んでいく。

窓際の後ろの席・・。外はいい天気。

運動場で、体育の授業が行われている。平和だ・・。


そういえば、もうすぐ校内研修・・。

この学園の整った合宿設備で一泊し、親睦を深める目的で行われる学年恒例の行事。

寮より離れた所に立っているので、少し面倒臭い・・。

授業は通常通りで、そこに泊まって食事やレクを楽しむだけの事。



 休み時間。

俺は机に腕を乗せ、頭を横にする。


「ね、采景・・。

くじで、雑魚寝じゃない部屋が当たるってさ!」と、草樹の声。


体勢をそのままにして、目を開ける。

丁度いい目線に、即席で用意したのか・・お菓子の箱。そこに、くじが入っている。


「面倒臭い・・」


また目を閉じ、身動きをしなかった。


「じゃ、俺が変わりに引くね~?」


遠退く声・・が・・


目が覚めた時は、授業が自習で、みんな研修のレクの話で盛り上がっていた。

うるせぇ・・


「ふぁ・・」


伸びをする。


「はい、采景に決まり!」と。


・・・・?

みんなの視線が集まる。


「はぁ?」


黒板に、調理担当・・と。

その横には、美衣の名前?


「お前、料理出来んのかよ?」


右後ろの席を見る。


「ふぅ。だから、無関心なんて言われるのよ。」と、ため息。


ムカッ・・可愛くねぇ!!

料理は、当然カレーだよな?


「?!!??」


通常、こういう時って・・カレー・・だよな??

黒板には、和食と書いてある。

ご飯・味噌汁(豆腐)・焼き魚・茶碗蒸し・出汁巻き卵・・と、次々書き込んでいる草樹。


「草樹!!

おまっ・・ちょっ、待て!こらっ!!」


ニッコリ、俺の方に向きながら

「嫌なら、俺の納得するのを考えて!」



 放課後。


「なぁ、カレーで良いだろ?」


「カレーだけは、却下って言ってたわよぉ?」


何故か、美衣と二人で打合せ。

美衣は、髪の枝毛を探しながら・・俺の前に足を組んで、座っている。

短いスカートで、太ももの白い部分が目に入る。


「ハヤシにすれば・・って、ねぇ?どこを見てるのぉ?」


上目で見てくる美衣に「太ももだけど?おいしそうだよな。」と。


ふっ、と・・余裕の笑み。


「舐めてみる?」


「はっ、毒でも盛ってそうだ。遠慮しとく・・」


草樹の言葉を思い出す。

『体を許さない・・』


ふぅん・・おもしれぇ。


イスから立ち、美衣の前に行って

「いや、死んでみるのも面白れぇか」と、太ももに手を滑らす。


【ビクッ】


「ぁ・・」


俺の手に反応し、漏れる声に興奮する。


「ちょっ、冗談よね?」


両手で阻まれる。

その両手を、片手で押さえつけ・・舌を白い脚に這わせる。


「やっ・・~~」


もう片方の手は、上着に滑らす。


「やめ・・て!」


涙声が意外だったのか、心に罪悪感・・??

苦しい・・えぐられるような痛み・・


「ちっ・・不味い女!」


苛立ちが募る。

なのに、美衣の顔が見れない・・。


こんなこと思ったことがない。

感じたことも・・。


美衣を解放した。


「帰る!!」


バタバタと、音を立てながら美衣は走っていく。

遠退く足音を、その場に座り込みながら・・聞いた。


「俺・・?」


静かな教室。

自分が信じられない・・。

気持ちに、名前を付けることが出来なくて・・

嫉妬・・いや、全然違う。罪悪感・・?嫌われたくない・・?


まさか!何故、俺が・・美衣に?

痛くも、かゆくも・・ない・・はずだ。

避けられる・・だろうか・・




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