魔女の家系?
円華姉の婚約者、諷汰さんの会社。会議室。
そこには諷汰さんに、保兄と『かぐや姫』がいた。円華姉はいない。
俺たち二人は、入り口にいた。
諷汰さんは、苺愛のことを調べて、知っていた。
「矢城さん、話を聞かせて欲しい。
一体・・大上家の呪いの始まりに、何があったのか。」
案内された席に座る。
「大上家は、私たちとの関係を伝承から消した・・
何が・・?それは呪いの解放者に、呪いが語ること。
ただ、私たちは・・大上家の心が欲しい。」
俺の心は、苺愛のものだ。
イラッとした。
「手に入っただろ?」
俺を見て、苺愛は悲しそうに微笑む。
「いいえ・・。
試練を乗り越え、呪いを知り・・それでも、私を選んだとき・・
私は、あなたの心を手に入れる。
魔女は、必死になる・・それも、無意識に・・」
その後、苺愛は・・差し障りのないことだけを話す。
核心は話さない。
家系内の決まりがあるみたいだ・・。
俺には、すべてがどうでもよかった。
「諷汰さん、円華姉呼んでもいい?」
俺は、円華姉を呼んだ。
苺愛は、最後に言った。
「諷汰さん。発祥の地に行くんでしょ?邪魔が入るかもしれない・・
でも、急いだほうがいい。解放の時が近いから・・」と。
円華姉が来て、苺愛の話を少しだけした。
その後、円華姉と歌毬夜さんは発祥の地へ。保兄と諷汰さんは別のところへ向かった。
俺たちは、諷汰さんの会社の車に乗って学校へ。
車の中、苺愛は口を閉じ・・ただ、外の景色を見ていた。
試練・・呪い・・
苺愛は、俺のことをどう思っているんだ?
『魔女は、必死になる。無意識に・・』
大上家の心が欲しくて・・
緑の目の契約・・は、魔女の呪い。
それを知るのは、呪いが語る時・・。
学校に着き、苺愛は俺に言う。
「歌毬夜さんは、16才では死なない。
万樹さんの話は嘘・・。これは、諷汰さんに伝えて。
この後の話は、保志さんに。
数日後、矢城家の長たちが接触するわ。
すべてが解決するから、他の人に言わず待って・・と。」
視線は俺の方だが、俺を見ていない。
「苺愛・・俺を見ろ。」
「見ているわ。」
「黙れ!」
俺は、いつものように怒りに任せ・・唇を重ねた。
【ズキ・・ン】
激しい頭痛。
「忘れて・・。呪いが語るまで。私を・・
いえ、なんでもない。
采景・・」
声が小さくて聞こえない・・。
苺愛・・。
何をした?
昨日の夜・・苺愛の声を聞きながら睡魔に襲われた。
苺愛・・俺は、必ず・・ミツケル・・カラナ・・
「・・ん・・?」
俺は、目が覚めた。
「起きた?」
保健室の先生が、声をかけてくれる。
「俺・・?」
記憶が曖昧?
「寝不足なの~?もう少し寝る?それとも・・」
「教室に戻ります。」
思い出せない・・。
携帯の発信履歴は、円華姉・諷汰さん・保兄・・朝から俺がかけた?
キエタ記憶・・。
もしかしたら・・俺の一生の相手・・の記憶?
保兄もワスレタ・・
誰だ?何故、消えた?
いや、本当に・・?
俺は、携帯で連絡をとる・・
俺の失った何かを知るために・・。円華姉・保兄・諷汰さん・・連絡がとれない。
「もしもし、麗季?
あぁ、悪い・・。聞きたいことがある。俺は、契約したのか?」
『え・・?
2日ぐらい前?契約したって・・。』
・・俺の一生の相手・・。
逃がさない!
絶対に捕まえてやる・・見つけるからな!
廊下。
「おい、大上!お前・・噂は本当か?」
保健室から教室に行く途中・・数人に捉まった。
「何が?」
噂・・
「お前の目が緑色になっていたって!」
「女の子を、空きの教室に連れ込んだのか?」
「相手は誰??」
うるさい・・が、俺の相手だ。
「俺が教えて欲しい・・」
俺は本気なのに、言葉が悪かったのか
「なぁ~んだ。嘘かよぉ~~。」と、去っていく。
・・あれ?今、気がついた。
女の顔が、判別できる。可愛い・綺麗・・普通。あ、多分食った?
これって・・。
見つからないように、隠れているのか?
この、身近にいるんだ。
俺の一生の相手。
匂いはない・・
くすくす・・楽しい。
見つけたら、容赦しねぇ。ふふふ・・くくっ
「楽しそうだな。俺も交ぜてよ!」
この声・・?
「草樹!!何で、ここに・・??」
「あはっ。役員の調査で、潜入してるんだ!
で、何々??」
目を輝かせる草樹は役員。
情報も、すぐに手に入る。面白くないな。
「俺、相手の記憶がない。」
俺たちは、使用されていない教室に入る。
「あ、俺の古い匂い。けど、相手の匂いがないな・・」
草樹は昨日、俺と話をした内容を教えてくれる。
「ふぅ~ん。七匹目か。
見つけたら、喰って良いんだろ?」
「くくっ。
お前、言ってたぞ。『感じる。欲情が止まらない。』って。」
【ドク・・ン】
俺の中の何かが、反応した。
これか・・。
欲しい・・
「けど、その緑の目が利かないのは・・
呪いの元凶だったからか、なるほどねぇ。」
何故か、草樹まで楽しそうに笑う。
「お前、本当は・・相手を知ってるんじゃないのか?」
質問に、草樹はニッコリ笑っただけ。
いい度胸!
「さ、まずはどうする?一匹ずつ喰うか?」
草樹は、俺で遊んでいる。
「なぁ、麗季の友達に・・お前の兄貴はこんなことしないよな?」
少し不安になる。
「ん?連歌・・?さぁ、どうだろう?」と、爽やかな笑顔。
胡散臭い・・。
「大丈夫。振られてるんだ・・。
俺より、真面目だし・・。」
・・?
双子も、色々あるのか?
「案がないなら、提供するぞ~?」
「例えば?」
一応、訊いてみる。
「まず、俺が喰う!」
「却下!!」
草樹は、ケラケラ笑っている。
はぁ・・ホント、勘弁してくれ。何しに来たんだ・・
「冗談だよ。一応は、お前が選ぶくらいだから・・
可愛いとか綺麗とか、人気ある女じゃないのか?」と、ニヤニヤ。
・・?
何か、裏があるような笑み。
「信じない。けど、頭には置いておく。」
小賢しい・・
自分のクラスに戻る。
「矢城さん。これ、お願いしてもいい?」
「うん、いいよ。」
クラス委員の矢城・・
要領の悪い女だ。今時珍しい黒縁の眼鏡に、地味な髪型。
すっとした立ち姿が綺麗なのに、控えめなのか・・。イライラする。
「あ、矢城さん・・これも」
「私も・・」
イライラ・・
「断れよ!」
つい、叫んでしまった。
俺の声に、さぁ~っと人が散る。
「ありがとう。」
矢城は、口元だけが笑っている・・笑顔ではない。
「お前見てると、イライラする。」
要領の悪い女だ!可愛げのない・・
でも、眼鏡の奥・・綺麗な目をしていた・・?
気のせいだな!
今まで、顔の判別が出来なかったから・・
面倒臭いな。見つけられるのか・・?
保兄は記憶が戻った。
俺の記憶も・・戻る日が来るのだろうか?
イライラする・・
相手は、俺のこと・・どう思っているんだ?
他の子を喰ったら・・嫉妬するのか?
草樹との話を思い出し、考える。
なんだか、自分に危害がなければどうでもいい・・なんて、思っていそうだ。
苛立ちが募る。
何だ?何かが足りない・・。
授業も上の空・・。
「・・くん。大上くん!」
・・?
「何?」
矢城だった。
「選択の先生が、呼んでいるって。私・・」
俺は、無意識に矢城の手をつかんだ。
「何?!」
「いや、これ・・アザ・・どうした?」
手首に、縛ったような痕。
とっさに、矢城は手を払う。
「気にしないで!
・・さっき職員室で伝言を・・つ、伝えたからね!」
慌てて、逃げていくように行ってしまう。
・・?
何だ?そんな・・プレイしたのか?
まさかな~真面目そうな・・委員長だし・・ん?違和感・・?
皆は、昼食を食べ終わっていた。
「おい、大上!サッカーしようぜ!」
「食堂行って、職員室行くから。またな!」
ここの食堂は、手の込んだメニューが多い。
俺の前に一人の女の子が、針路を塞ぐように立っている。
それを、するりとかわす。
後ろから声。
「采景くん。冷たいのね、あんなに愛してくれたのに・・」と。
アイシタ?
立ち止まり、振り返る。
可愛い顔。胸もある・・。
香水か・・?悪くない匂い。
ん・・?何かが引っかかる・・?
もしかして、こいつ・・なのか?
「おい、お前・・名前、言えよ!」
体をすり寄せ、微笑んで俺の首に手を回す。
そして、唇を重ねた。
俺からしたわけではないし、何か分かるかも・・と、様子を見る。
「ふふっ。矢城 美衣よ。」
【ドク・・ン】
ヤギ・・?
何かが違う・・?いや、合っているのか?
「離れろ。」
密着させた体に、熱が残る。
「残念・・。」と、離れる彼女から甘い匂い。
「・・はぁ・・はっ・・」
??
息が切れる?いや、のどが渇くように・・足りない・・
「ね、感じて・・私を・・
ね?采景・・」
何だ?意識が飛びそうだ。
「無理しないで。何故、ためらうの?」
解らない・・体が求めるのに・・何故・・
「采景ぉ~~?」
遠くから、草樹の声。
「あら、邪魔が入っちゃった。
またね・・愛してるわ・・」
廊下に座り込み、壁にもたれる。
息が荒い・・
「大丈夫か?」
「悪ぃ・・」
俺は、気が遠くなるのを感じた・・
「采きょ・・ぅ・・」
草樹の声が・・遠くで・・俺を・・呼んでいる。
・・ヨンデイル・・
オンナノ・・コエ・・?
ホントウハ・・オマエ・・ダケ・・




