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⑫-B 【 大上家シリーズ】おおかみはかぐや姫を食べた  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ3】おおかみは七匹目の子ヤギを狙う

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26/77

『生と死の垣根』?


 あるところに、ヤギの親子が住んでいました。

母親ヤギが、子ヤギ7匹に言いました。


「用事で出かけるから、狼に気をつけなさい。

声はがらがらで、足が黒いからすぐに分かりますよ。

絶対に、鍵を開けてはいけませんよ!」


狼はチョークで声が滑らかに・・小麦粉で足が真っ白に・・

で、家に侵入して6匹を食べ・・おなかが一杯に。

母親が戻ってきて・・



「はっ・・バカバカしい。

俺が、その狼?俺が食べたいのは、七匹目だ!他はいらない。

分かった・・ヤギを探して、どんな手を使っても手に入れろってことだな?」


物語にこだわり、話を進めてみる。


「結論は、母親に殺されるかもってことかな?」


なんて言いながら・・

草樹は3つ目のアイスに手を付け、幸せそうな顔。


「おい、食いすぎだろ?」



 朝。


「おい、学校遅れるぞ?」


結局、草樹はあのまま泊まった。

ゴミ箱に、アイスの箱が山盛り。


「ふぁああ~~。

やっぱり、6つはきついわ。狼の気持ち分かるよ~。」


まだ、あの話か・・。


「そうだな・・一匹目はおいしく感じた。こんな味なんだろうと・・。

でも、二匹目からはそんなにおいしくなかった。

いや、味は一緒・・。本当は気が付いていた。

6匹目まで、意地があっただけ。吐き気がするまで食った・・。

もう要らないと・・思っていた。だから、気が付かなかったんだ・・七匹目に。

一度失敗して、死ぬほどの想い・・七匹目を・・それでも狙う。」


草樹は、優しい目で俺を見る。


「草樹・・。遅刻するぞ?」と、時計を見せた。


「うわぁ!!ちょ、何で、もっと早く!!わぁ~~~」


騒々しい朝。


時計に隠れた・・ヤギ。違う話だろうか・・?

数を数える狼に、時計の針を動かして・・

【ボーン・ボーン・・】

数が分からなくなって、助かった動物が・・。


知恵比べか?

面白い!絶対に手に入れる。

覚悟しておけ・・ヤギ、容赦しないから。


「先に出るぞ!また、遊びに来るから!」


太西は、遠い・・。

ここは結南、学校の裏にある寮。ヤギは女子寮だ。


【キーン・・】


いきなりの耳鳴り。何だ・・この・・感じ。


はぁ・・

体が・・熱い・・


『かぐや・・赦さない・・

呪いの解放・・

私を、どうして選ばない?大上家の心・・が、欲しい。

手に入れろ・・。

求めればいい・・』


いくつもの女の声が頭に響く。


『かぐや姫』・・?

呪いの解放・・だと・・?


気持ちが悪い。

俺は・・


血の気が引いて、床に倒れこんだ・・



 気がついたとき、車の中だった。


「気がつかれましたか。本家の命令です・・」


一つの呪いの解放の時。

俺に直接関係するなんて・・。


いつからが始まりだった?俺たちは、出逢うべきではなかったのか?

まだ知らない・・大上家の、隠された伝承。


苺愛・・

愛しい。俺の、一生の相手。

お前は望んでこなかったのか?


君は抗う・・

『犠牲には、ならない』と。



 家の二階から、嗅いだことのない匂いに・・

我を忘れそうになる。


「麗季、これが『かぐや姫』か?」


「えぇ。さっき、保兄が・・

采兄、いつ契約したの?」


俺の緑色に変わった目に、麗季が問う。


「昨日だ。」


麗季や俺・・父さんまで、感情のコントロールが難しくなる。

契約を交わしたからなのか・・?

未契約の円華姉は、匂いに心地よくなっている程度。


匂いが落ち着き、階段を下りる音・・。

俺たちは通常に戻り、保兄の近くに集まる。


「まだ、期限が来ていないから」


保兄の照れた表情を初めて見た。


「へぇ。オメデトウ。じゃ、俺・・寮に戻るから。」

と、嫉妬心を含む・・冷たい言い方になる。


「やだ、采兄。触発されちゃったんだ。襲いに行っちゃダメよ?」と、一番早い契約済みの麗季。


「・・お前だろ。」


「うん?ふふっ。その会議でしょ?」


小学6年生の台詞ではない。

行き先が決まったが、泣きそうな円華姉。一番年上なのに・・。


「「「あいつは気にしないだろ?」」」


父さんと俺と麗季の声が重なる。


「解散!!」


目を逸らす父。


俺は寮には帰らず、ヤギのいる女子寮に向かう。

『かぐや姫』の匂いに触発された。


鍵は、草樹の講義の通りにすると簡単に開いた。

匂いが告げる。ここが、ヤギの部屋。

隠れる余裕なんてない。警戒心なく、くつろいでいるヤギ・・。


ご馳走は、目の前に!

そっと、気配を消し・・近づいたつもり。


「何しに来たの?」


後ろ向きのヤギが、冷静に振り返る。

面白くない・・。


「なぁ、お前・・何者なの?」


獲物のヤギが落ち着いているのは、腹立たしい。


「教えたら、係わらないでくれる?」


俺は、にっこり笑う。


「あぁ、約束する。」


もちろん嘘で、それに騙される彼女ではない。


「呪いの源よ!

帰って、でないと・・呪うわ。『生と死の垣根』魔女の家系なの。

あなたの感情は、呪いに反応しただけ・・。

私を本当に愛しているわけではない。」


それで、『犠牲には、ならない』か。


「それで話は終わり?

そっ。じゃ、俺のこと・・好きって言えよ・・」


「言えばいいの?」


素っ気ない返事で距離をとる。

甘い匂いに酔う・・頭がおかしくなりそうだ。


「お前が、欲しい・・。」


後退る彼女に、ゆっくりと近づく。


「体だけならあげる・・

でも、心は駄目。」


その言葉で、欲するものに気付く。


「ふざけんな!

渡せ、お前の心・・すべて、俺によこせ!!」


こんなに感情的になったことがあるだろうか?

狂いそうだ・・


綺麗に片付けられた可愛い部屋。

ベッドに押し倒す。


「や・・駄目・・」


体はあげると言ったのに・・

抵抗されると、欲情する。


「はぁ・・。

前にも、心は駄目って?・・良いよ。とりあえず、体だけ頂戴。

ね?俺を感じてくれたらいい。」


抵抗する両手を、その辺のリボンで縛る。


「いやっ!待って。駄目、お願い!!」


涙目でお願いなんて、煽っているのか?


「何を願う?

聞いてやるよ・・叶うかは、分からないけどね・・。」


ヤギの匂いが増し、俺の理性なんて残っていない。

欲しい・・足りない・・


手に入れろ!


はぁ・・

体が熱い・・俺は、上着を脱いだ。

その様子に、ヤギの顔が青くなる。


無理やりして、心は手に入るだろうか?

逃がさなければいい・・。

俺だけを感じて欲しい。


「・・苺愛・・愛している・・」


初めて呼んだ名・・

俺の心を・・それだけで幸せが満たす。


「呼んで・・お願い・・これを解くから・・」


苺愛は、縛られた両手を俺に近づける。

それを、解く・・。

苺愛は、手をついて起き上がり・・俺の頬に両手で触れた。


「あなたは、私の心をどうする?

もし、呪いが解かれた・・んっ」


我慢できず、唇に吸い付いた。

拒絶はない。

どこか、確信があった・・。


唇を強く押し付ける。

苺愛の息が切れ・・開いた口に舌を入れる。


「むっ・・んんんっ・・ヤ!

はっ・・んんっ」


甘い・・柔らかい・・

すべてを手に入れたい。


俺の・・苺愛。


「呼んで・・名前。

・・采景・・って・・」


「ん・・采・・きょ・・はぁ・・采景・・」


服に手を入れ、胸に触れる。


【ビクッ】


・・俺に反応する苺愛の体が、熱い・・。

服のボタンを外す。


【携帯のコール音】


円華姉?

すぐに出る。


「はぁ・・は。・・何?」


息の切れたまま。

下にいる苺愛が、色っぽい姿に、涙目で俺を見上げる。

つい・・苺愛の胸を揉んだ。


「ヤッ・・ん」


可愛い声が漏れる。

それが円華姉に聞こえたのか『采景。そんな時は、電話に出るな!!

いい?緊急なんだけど、朝でいいわ!諷汰の会社に来なさい。』と、電話が切れた。


続きのため、携帯をベッドの端に投げる。


「苺愛・・?」


さっきまで、俺を受け入れていた瞳が・・厳しい眼に変わる。


「気は済んだ?

さ、退いて!時が来たの・・。」


状況がつかめず、呆然とする俺を押し退ける。

ベッドから立ちあがり、服を整えた。

そして【ふぅ】と、大きく息を吐く。


「私の声を聴いて・・。

眠って。明日の朝は、早いから。」


心地いい声・・



 朝。


「采景・・大上家に、私も行くわ。

その前に、話しておくべきことがあるの。」


寝ぼけた俺に、コーヒーを入れながら苺愛は言った。

夢?


「ね、聴いてる・・んっ」


真剣な表情に、欲情してしまった。


「んんん~~」


硬く閉ざされた唇に、舌を這わせる。


「いっ」


色ボケした俺の舌を、苺愛が噛んだ。


「今度、ふざけたら噛み切るわよ?」


「いいよ。苺愛なら・・」


本気だ。

苺愛に殺されるなら、それでいい・・。


苺愛は、何故か泣きそうな顔になる。

視線を逸らして、話し出す。


「私は、大上家の呪いの源。

伝承から隠された魔女の家系・・。今『かぐや姫』を狙っているのも、その一人。

あなたたちの家系で呪いを受け継いできたのと同様・・

私たちも、掛けた呪いに悩まされている。

私は、解放の為の犠牲・・七匹目。」




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