新月
風呂・・?
少し、疑問に思う。
「あの~・・話・・するのに、何でお風呂・・なの?」
彼はニヤリと笑って、私に近づく。
「何?忘れちゃったの?俺たちの関係・・。
誰も知らないし、教えてくれなかったんだ?
ふふっ・・。聴きたい?」と、色気のある声に緑色の目。
私と契約したおおかみ・・。
え?もう・・しちゃったの??
「ね、大人しく風呂に行って?」
「行くから、離れてぇ!!」
私は、風呂場に向かう。
後ろで、クスクスと笑う声がする。
からかわれている?どこまで本当なの??
迷わず、風呂場に着く。
・・・・。
やっぱり、習慣なの??
えぇええ??嘘ウソうそぉ~~!?!?
シャワーを浴びる。
何だか、記憶にある気がする?
うわぁ~~ん。恥ずかしい!!
記憶に無いから、初めてなんだけどぉ??
ほんの数日前まで、はっきりした記憶がある。
異性の誰にも関心が無かった。
これから、ずっと・・相手に出逢わずいくのか・・考えていたはずだ!
・・相手は、年下?高校生?
ここは?高そうなマンションの一室。本家の人間だからなの??
この後・・私・・彼と・・?しちゃうの??
お風呂から出ないわけにはいかない・・。
入ってこられても困るし!!
お風呂を出て、新しい服が準備されている。
しかも、下着まで。サイズもぴったり?!
おかしい。記憶に、あるような気がする。
ウソダ・・
誰か、嘘だと言って!!
【コンコン】
ドアをノックする音がする。
【ビクッ】
心臓が跳ねる。
「な、何?もうすぐ出るよ?
待ってよ!ぜっっつつたいに開けないでよ!!」
ドアの向こうで、笑い声がする。
恥ずかしい!!
風呂場のドアを開ける。が、諷汰はいない。
そっと、さっきの部屋を覗く。
諷汰は、デスクに向かい眼鏡をかけてパソコンを操作している。
かっこいい・・。
契約の相手だけを、異性と認識する・・
あぁ、これがそうなんだ。
「円華?こっち来て、水分取りなよ。」
私の匂いに反応したのか、作業をしながら後ろ向きで私に言った。
馴れている・・ような??
すべてが、私にとっては初めてなのに・・。
私は、何故か無意識にベッドに座った。
作業している諷汰を見つめる。
匂いは無い。
微かにも・・意識を集中しても、匂わない。でも、この人が・・私の相手。
綺麗な横顔だ。
私の視線に、諷汰が気付く。
作業を止め、私の方に向き微笑む。
きゅ~~ん。
胸が、締め付けられるように感じる。
かわいいなんて・・少しでも思った自分に後悔・・。
ゆっくり立ち上がった諷汰が、私をベッドに自然と横にならせる。
??
あまりに自然で、気が付いたときは、上に諷汰が覆い身動きが取れない。
「・・諷汰、作業の途中・・でしょ?
いいよ?私、家に帰るし。ね、気にせず・・作業・・むっ・・んんっ」
唇が、私の言葉を飲み込んだ。
目を閉じ、幸せそうに私を求める諷汰。
満たされる・・欲しい、もっと・・。
諷汰の舌が口に入ってくる・・
キスって・・気持ちいい。
求める諷汰に応える。
「ん・・はぁ・・」
怖いぐらいに興奮する。
諷汰の手が、私に優しく触れた。
「円華・・」
私に感じている諷汰のかすれたような声に、体が熱くなる。
【ズキ・・ン】
今までに無い頭痛に、私は頭を押さえた。
「円華?!」
まただ・・意識が・・
「・・円華?」
意識を戻し、私の目には心配そうに見つめる諷汰。
「諷汰・・。」
記憶はないままだった。
「訊いていい?これ、呪いなの?」と、諷汰は私の頭の上に手をもっていき・・
そっと触った。
「ひゃっ」
狼の耳!!
「今日って、新月・・?」
おしりに手を当てると、尻尾がある。
諷汰の目が何故か、輝いていた。
「諷汰さん・・?どうして、嬉しそうなの?」
私にだけに現れた、大上家の呪い・・。
初潮の時期からずっと・・新月に、狼の耳と尻尾が生える。
もしかしたら、麗季も?まだ、わからないけど・・。
「あれ・・?
諷汰、成長・・してる?」
高校生ぐらいの印象が、大人に近い?
「あぁ、円華が感じてくれたのが嬉しかった。
俺に応えてくれたし・・もうすぐ、全部の感情が揃う。
愛してるよ」と、キス。
「・・。待って、じゃぁ・・まだ、だったの?」
諷汰は、可愛く微笑み「うん。」と。
絶句!!
「俺、ウソはついていないよ?」
確かに・・
私が勘違いしただけ。でも、・・
かぁあ~~。
顔が熱くなる。
「触らないで!!」
自分が恥ずかしくて、諷汰の手を払う。
伝承・・本家の呪いは、感情の欠如。相手が、感情を与え成長する。
まだ、してなかったんだ!!
「円華、こっち向いて。」
優しい声の諷汰。
「いや!恥ずかしいから、嫌だ!!」
ベッドの上、布団を被り諷汰に背を向けた。
「ひゃんっ」
いきなり尻尾を掴まれ、変な声を出してしまった。
顔を真っ赤にし、諷汰を睨む。
嬉しそうにニヤッと不敵な笑い。
「感じるんだ・・」と、また尻尾に触れようとする。
慌てて、尻尾を隠す。寄ってくる諷汰が怖い。
「やべ、萌える。・・悪いことしてるみたいだ。」と、息が荒い。
男の人って、欲情すると・・こういう顔・・するんだ。
なんて、のんきなことを考えている場合ではない!!
「諷汰・・サン?
そういえば、話・・するって・・言ってたよ?ねぇ?」と、ベッドのギリギリまで後ずさる。
「話?ふふっ。忘れてた・・」
諷汰の笑顔に、ホッとして警戒を解いた。
【グイッ】
腕を引っ張られ、ベッドの中央に押し倒される。
「忘れてたよ。そうそう、話が・・ね。
覚悟して?俺、怒ってるんだ。記憶が無いからって、またあいつの匂いをつけて。
許さないよ?・・どうしようか、俺のだって自覚してもらう?
印でも・・」と、胸元に唇を当てて吸った。
「・・っ」
吸われたところが、熱を帯びる。
「へへっ」
印に満足した顔。
諷汰の匂いが、漂い始める。
「・・はぁ・・。」
息が切れ始め、思考が混濁する。
「円華・・?」
短時間に、頭痛・・意識が遠退き・・
新月の影響なのか?記憶が・・戻る・・?
いつの・・記憶・・?
「千・・弐・・?」
【キィーン・・】
耳鳴りが響く。
「円華、ごめん・・調子に乗りすぎた?」
心配そうに覗き込む諷汰は、幼い子供のように感じる。
本当に・・




