表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
⑫-B 【 大上家シリーズ】おおかみはかぐや姫を食べた  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ1】おおかみはかぐや姫を食べた

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/77

王子様


 二年の校舎。中庭に続く道。


「落ち着いた?

・・髪も濡れているし、どうしたの?」


優しい誠志の腕の中。


「誠志・・。

お願いがあるの。お願い・・名前を呼んで。」


優しい王子様。知っている・・みんなに優しいこと。

私が特別ではない・・。特別なのは・・白雪。


「歌毬夜・・。歌毬夜、もう大丈夫だよ。」


いつも、子供のときから・・甘えていた。それも終わる・・。


「誠志・・。」


「ん?」


・・いつ、言えばいい?きっと、誠志は変わらない。

ただ、婚約は・・解消になるだろう。


「ううん。・・なんでも無い。」


自分を理解してくれるのは、誠志だけだった。

築嶋に女が生れたら、災いになると・・。早くに、政略的な結婚が進められた。


・・おおかみに食べられた、かぐや姫。

どうして、名前を歌毬夜かぐやにしたんだろう?



「・・?」


静かな時間・・。ふと、視線に気付く。


「・・!」


オオカミ?


「どうかした?」


誠志から離れる。


「ううん。ごめんね・・。教室に戻るから・・。ありがとう。」


誠志は、オオカミに気付く。


「・・まさか。」と、小声。


「え?」


【グイッ】


引き寄せられ、抱きしめる。

・・?うそ・・。


「誠志?」


今までに無い。

・・誠志が、私を抱きしめた??


「歌毬夜・・。何かあったら、必ず俺に言って。

いい?必ず・・。」


・・?


「うん。」


そっと、距離が広がる。そして、額にキス。

・・・・。思考が停止する。


「じゃあ・・。放課後に、迎えに行くから。」と、誠志。


何が・・どうなって・・?数日、会ってもいなかったのに。

オオカミのいた場所を見る。が、いない・・。

彼と、関係があるのだろうか・・?



教室。


「歌毬夜。どこに行っていたの?」


白雪は、笑顔。


「うん。ちょっと・・誠志のところ。」


反応を見る。


「・・そうなんだ。婚約者だからね?

いいな~。あんな素敵な人・・。羨ましい。」


羨ましい・・か。私は、白雪が・・羨ましい。


「帰りは、誠志が迎えに来るの。一緒に、出かけない?」


白雪は、頬を染め・・首を横に振る。


「ううん。今日は、予定が・・。」


可愛いな・・。

白雪は、クウォーターだ。ふわふわの茶色い髪。白い肌・・。

誠志は、白雪を特別な目で見る。

でも、さっきの誠志は・・いつもと違った。

私を、女の子扱い・・。いつも感じる妹扱いとは、明らかに違った。


・・?

あれ、考え事をしていたら・・白雪がいない。移動教室は、この道・・で、合っている。

白雪が、迷子・・?捜さないと!


【ドンッ】


・・急に振り返ったからか、人にぶつかった。


「ごめんなさい・・。」


「許さない・・。」と、嫌な声。


「オ・・ぐっ・・」


口を手で押さえられ、すぐ横の小部屋に連れられる。


「・・ん~~!!」


離せ、放せ!!

じたばたするが、強い手は・・離れない。


・・中は、空室。何も置かれていない。

オオカミの左手が、私の両手を捕まえる。・・怖い!!


「ん~~!!んん!!・・ぷはっ。はぁ」


やっと、口から手が離れる。が、・・?!!

自分の目の前に、壁・・。両手は、上方・・壁に押さえつけられている。

奴の右手は、私の腰。後ろに・・ぴったりくっついている体。


最大の、ピンチ!


「ヤダ。ヤ!嫌だ・・放せ!!」


「静かに。

こんなとこ、見られたいの?・・俺は、いいけど。」と、奴は耳元で囁く・・。


誰かに・・?

見られたところを、想像した。寒気がする・・。


「は、離して・・イタダケマセンカ?」と、下手に出てみる。


返事は無い・・。


【パクッ】


「ギャッ!!」


・・耳たぶに、奴の唇が!!


「ふふ・・。もうちょっと・・色気が欲しいね。」と、甘い声。


「放して。放してよ・・。」


お願いは、止めた。


「・・歌毬夜。体って、簡単に手が出せる。

今日は・・心。・・歌毬夜?・・染まって。黒く・・。」


・・?

言っている意味が解らない。


「・・誠志も同じ男だ。この意味は、分かる?」


「何が、言いたいの?」


私は、忘れていた・・。

『耳を、傾けてはいけない。決して・・』

オオカミの目が見えなかったから・・。


「よく聞いて・・。

俺の何が汚い?・・奴の唇は、もっと・・。赤い・・美しい唇に・・触れた。」


・・え?赤い・・唇?


「知ってる・・。

歌毬夜・・誰を見た?・・ふふ。その唇は・・今日、君に触れた・・。」


「・・やめ・・て。嘘だ・・」


【ポタ・・】


涙が・・零れる。


「泣いてるの?・・歌毬夜。」


両手を押さえていた、オオカミの手が離れる。

左手は、私の頬に・・。自然と、後ろ向きの体が・・オオカミの方に。


!!!!


「嫌だ!!」


正気に戻る・・。

彼の目が、緑色になっていた。涙目に、濃く光る緑色の目が・・はっきりと!


【ドンッ】


力いっぱいに突き飛ばす。

オオカミが油断していたので、逃げることに成功した。


・・頭に聞こえる。

『決して、目を見てはいけない。耳を傾けるな。決して・・』


怖い・・。

心が、染まる・・黒く。疑心が、誠志と・・白雪を包む。

私の心を・・黒く・・黒くする。




保志side



「入ってきたら?」


俺は、後ろにいる者に声をかける。


「ふ。鼻が利く・・。さすが犬だな。」と。


「エセ王子様、これは・・何?」


「ん?・・この、君の首を捕らえているの?

これは、大路家に代々受け継がれている・・剣。手入れは出来てる。」


「ふん。銃刀法違反・・か?歌毬夜も、ビックリだ。」


「知らないの?王子様は、戦う者でしょ?」


俺は、するりとかわして向き合う。


「王子様?笑わせる・・同じ匂いをプンプンさせて。

くく・・、雑種が。羊の皮を被った・・狼。」


「ふふ、残念だね。歌毬夜は知っているよ・・。

それでも、君とは違う。」


「・・ふ~ん。なんとなく読めた。手を、替える・・か。

王子様は、誰と戦う?物語の敵は・・俺じゃない。」


「そう。お前では無い。」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ