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⑫-B 【 大上家シリーズ】おおかみはかぐや姫を食べた  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ2】おおかみ女と一匹の子狼

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『菜乃』


万樹は、部屋を出る。

そして、重い・・鍵を閉める音。


「円華さん、ごめんなさい・・。私のせいだ!私のせいで・・」


歌毬夜は取り乱す。


「落ち着いて、大上家があなたを巻き込んだのよ。あなたのせいじゃない。」


落ち着かせる私に、歌毬夜は首を大きく振る。


「うっ・・。どうしよう・・。また、記憶を消すつもりなんだ。」


『すべてを忘れてしまえばいい。』


そういえば、保志・・

数日前に『かぐや姫』のことを忘れたって・・。それも、万樹の所為?

そんなところに、二人が助けに来たら?諷汰も・・私を忘れる・・?


「でも、記憶は戻ったのよね?」


「理由は分かりません。ただ、過去の記憶を夢に見て・・。

また同じことがあっても・・大丈夫か・・記憶が戻るのか分かりません。」


そんな・・。諷汰・・!!


私と歌毬夜は、薄暗い部屋の中。こんな所で歌毬夜は育ったんだ・・。

嫌なイメージしか湧かない。不安が膨らむ。

私たちの心配を無視し・・警告音が鳴り出した!!


匂いがする。

諷汰の・・匂いが、何故か安心を運んできた。


【ガチャッ】


重い鍵の開く音と共に、男の人が入ってきて私を捕まえる。


「円華さん!!」


「大丈夫だから・・」


二人は引き離された。


ドアを開け、広い部屋に出る。

そこには、万樹が胸元の開いた服を着て、立っている。


「円華、あなたの相手・・諷汰くんね。

ふふっ。まだ、感情が揃っていない。心が足りない人間は、壊れるのも速い・・。

楽しいぃ~。くすくすっ・・」


魔女の家系・・『生と死の垣根』


「万樹、あなたは・・諷汰の心をどうするの?

あなたは、絶対に手に入れられないわ!」


万樹の表情が一変する。怖い形相・・


「生意気な!記憶がないお前が、何故それを口にする?

はぁ・・悔しい。憎い・・奪ってやる。必ずだ・・。」


私の首に、両手をかけ・・睨みつける彼女。

こんな状況を、落ち着いて考える。


まるで、ここにいないように感じる。

この話は、今・・現在のことなのだろうか・・?


「過去は・・知らない。あなたは、何故・・」


「何故・・?

思い出せないなら、思い出させてやる!!」


万樹は、手にしていた笛のようなものを吹いた。

音ではない・・何かが、耳に・・頭に響く。


気が・・遠くなる。

嫌だ・・諷・・汰・・。


自分の奥・・?暗闇に、囁くのは・・誰?

呪いなのか・・胸が苦しい。


イヤ・・

オネガイ・・オイテ・・イカナイデ。


ワスレナイ

・・アナタノ・・心ハ・・ココニ在ル・・



『かぐや姫』の呪いの少し後。

大上家は、狼になることはなくなった。

120年後、再び一生の相手として『かぐや姫』を見つけ、幸せになるために。

呪いは軽減された。


120年の間に生れた者は、定行さだゆきと同様・・一生の相手を探し旅に出た。

その子孫の一人・・千弐ゆきじも、ある村に辿り着く。

そこに、魔女がいると知ったのは後のこと。


そして、匂いが一生の相手を告げました。


菜乃あおのは、親を亡くし・・いろんな仕事を手伝い生活していました。

器量の良い女性・・。身なりを整えなくても・・その美しさは、千弐の心を惹きつけました。

二人は出逢い、惹かれあい・・千弐は契約を交わしました。


飢きんがその一帯を襲ったのは、その直後のこと。

村人は、魔女に依頼することにします。

魔女は、村に来て・・千弐に心奪われ、手に入れたいと願いました。


それまで、呪いに背いた者はいませんでした。

禁忌。魔女が大上家の呪いの原因だとしても・・契約は絶対です。

拒み続ける千弐は・・飢きんに苦しむ村人から、命を狙われるまでになります。

もちろん菜乃の命も・・。


そして・・菜乃のお腹に・・新たな命。

千弐は、禁忌を選びました・・。


「どうして?愛していると、私だけだと・・。」


菜乃は、千弐に問いつめる。


「嘘よね?酷い・・。」


泣き崩れる菜乃。

一生に一人として選んだ相手を裏切る・・初めての禁忌。


「菜乃。あぁ、愛しているのは・・お前一人。

だから、マキを残しては行けない。

飢きんを解決してもらった後・・マキと、この土地を離れる。」


菜乃と子供を護るため・・。

千弐は苦しみ・・自ら、呪いを科した。


「赦して欲しい・・。いや、赦さなくていい。

君は、呪いの・・この目から解放されるだけ。忘れて・・。

幸せに、なって欲しい。いつまでも、願おう・・。

俺の心を君に残していく。

いつか・・君に逢えたら・・返して。必ず、君の許に・・還るから。」


菜乃の記憶は消えた。


でも、呪いは消えない。

同じ家系に残る・・。




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