表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
⑫-B 【 大上家シリーズ】おおかみはかぐや姫を食べた  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ2】おおかみ女と一匹の子狼

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

18/77

『生と死の垣根』


 朝。

私の携帯が鳴る。


「はい。

え・・?もう、諷汰の会社に?・・何、どういうこと??」


電話の相手は、采景。


諷汰の会社に、采景とその彼女・・保志と歌毬夜が来ていると。

何が起きているのか・・

昨日の電話の事?でも、采景の彼女まで・・?


私は、急いで準備をして諷汰の家を出た。

通路わきに、諷汰の会社の人が待機している。


呪いに関係したこと・・?



 諷汰の会社の会議室。

ドアを開けると、緊張した空気。


「円華、ここに座って。」


用意された席に着く。

隣に、見たことのない女の子。


「はじめまして、矢城やぎ 苺愛めえです。」


・・眼鏡を掛け、地味な雰囲気を作っている。が、綺麗な・・子。

采景の・・一生の相手。何故、この子まで・・?


「円華姉、こいつ・・魔女だよ。」


・・?

魔女・・??


采景は、説明をしてくれる。


「今日は、苺愛の家系の話。

本家の伝承で、隠されていた部分なんだ。

俺が知ったのは、苺愛と契約した後だった。

『かぐや姫』の呪いが加わって、減った・・元々の呪い。

緑の目の契約・・は、魔女の呪い。

歌毬夜さんは、伝承と同じような環境で育った。

今回、それを楽しんで・・呪いの解放を阻止しようとした魔女がいたんだよ。」


呪いをかけた魔女・・?

話についていけない。


「とにかく、大上家の呪いは一つ解けたんだけど・・。

『かぐや姫』にも、呪いがあって・・。」


保志は、口を閉ざす。


「16まで、生きられないかもしれないの・・。」


ずっと黙っていた歌毬夜が、口を開く。

伝承の一部に、緑色の目の力が効かない年齢は16と・・。


「魔女の家系の彼女に、意見を聴こうと思ってね・・。」


諷汰は、この段取りに動いていたんだ。

私のいない間に、ほとんどの話が終わっていた。


「円華。歌毬夜と、行ってほしい所がある。」


諷汰から、地図を受け取った。


「車を外に待たせている。今すぐ行ってくれ!

必要なものは、後で何とかするから・・。」


私は、歌毬夜を連れ・・黙って移動した。


車の中、歌毬夜から・・詳しいことを聞けばいい。

魔女・・。


『生と死の垣根』

大上家の、隠された伝承。本家の諷汰も知らないことだった。


呪い・・どうして始まったのか。

すべての呪いの解放の鍵を握るのは、彼女・・苺愛か?それとも、歌毬夜の継母か?


歌毬夜を護り、情報を集めるんだ。

保志は、歌毬夜を失えば・・一生・・独り。


私は、耐えられるだろうか?

契約して、身を切るような想いを知った。


大上家の呪い。一生の相手以外には、何も感じない。

私は、諷汰を選んだ。


今まで、諷汰に出逢うまで・・誰にも心が動かなかった。

周りが、恋をしていても・・何も思わなかった。


諷汰の心は、呪いで・・すべての感情がなかった。


麗季は、小等部6年・・12歳。一生の相手は、高校生・・。

でも、年齢に関係なく・・契約すれば、一生に一人を愛し続ける。


「歌毬夜、詳しい話を・・?」


隣に座っていた歌毬夜の顔色が、とても悪い。


「この道・・。」


行き先が違うことに気が付いたのは、その時だった。

油断していた・・。


運転手は操作して、後ろの座席を隔てる。

閉じ込められた空間に、何かが流れ込む・・。


私たちは、気を失った。


・・諷汰・・ごめんね・・。

まさか、大上家の本家に・・紛れ込むなんて・・。



 意識を取り戻したのは、数時間後。

心配そうに見つめている歌毬夜は、涙をずっと流していた様子・・。


「ごめんなさい・・。」


私たちは、小さな部屋に閉じ込められているが・・

縛られているわけではない。


「大丈夫。

諷汰や、保志が助けに来るわ。泣かないで?」


歌毬夜を慰めながら、部屋を冷静に分析する。

小さな窓が一つある。

逃げられるだろうか・・?


「ここの道に、覚えがあるの?」


【ビクッ】


歌毬夜は、体を硬くし・・青ざめる。


「ここは、私が小さい時・・閉じ込められて育った場所です。

病弱な母が亡くなったすぐ・・。私が5歳でした。

父が、16歳の・・今のお母様と再婚した時に、ここでの生活が始まりました。

それから、11年間・・高校に入学するまで。

数えるほどしか、外に出たことはありません。」


伝承の『かぐや姫』と・・同じような環境。

それを楽しんだ・・魔女。


今、彼女は・・27歳。何故、歌毬夜に固執するのか。

伝承に隠された部分に、一体何が?


「実は、昨日・・。私の携帯に、お母様から連絡が入りました。

大上家の呪いの一つが解放されたと同時に、私の呪いが始まったと・・。

誕生日までに、呪いを解かないと・・命は途絶える・・と。」


私たちの目的地は、その呪いを解くためだったのか。


「歌毬夜。

目的地に着いたら、すぐに呪いは解けるの?」


歌毬夜は首を振り、涙を落とす。


「分かりません・・。誕生日までには、日があります。

すぐに解けるから、お母様はこんなことをするんだと・・。

もし間に合わないなら、私の苦しむ姿を見て楽しまれますから・・。」


私は、歌毬夜を抱きしめた。

大上家の呪い・・緑色の目の契約は、魔女の呪いだった。

一生に一人の相手・・失ったら、一生に独り。


大上家の過去・・

魔女を愛した者がいたのか。魔女に愛されたのか。

この呪いも、いつか解かれるのだとしたら・・

その役目は、采景にあるのかもしれない。


私たちは、呪いを解くために存在するんじゃない。

出逢った相手は、本当に・・相手なのだろうか?


「円華さん。逃げるチャンスがあれば、私を置いて行ってください。

私は、ここから・・出るべきではなかった。

父に願った・・最後のお願いだった。

命に関係なく・・外にいられるのは、誕生日までの約束だった。

父は、知っていたんです。

お母様が、父を・・愛していないと。でも、心奪われて・・。

私は・・保志と・・出逢えてよかった。

伝えて・・」


「歌毬夜・・。」


慰めようとしたが、言葉が出ない・・。



【ガチャッ】


鍵の開く音の後、ドアが開く。


「ふふっ。捕まえた。逃げられると思ったら、大間違いよ。」


この人が、歌毬夜の継母・・魔女。

27にしては、派手な外見のせいか・・もっと年上のように感じる。


付き添う私に目を向けた彼女は、驚いた顔をした。

そして・・


「アオノ・・?

くっ・・あはは!」


アオノ・・?


彼女は、気味が悪いほど・・高笑い。

誰と間違えている・・?

それとも、まだ・・知らない伝承に、私も関係している?


「私は、万樹マキ・・皮肉だな。

過去と同じ名で、お前に逢うなんて。名は?」


挑戦的な眼。


「大上 円華・・」


「円華・・契約しているのか。

くくっ。そうか、見つけたのか・・彼を。

面白い・・。また奪ってやるよ・・。」


また・・奪う?彼って・・

諷汰のこと?


『かぐや姫』は、過去の呪いを120年サイクルに繰り返してきた。

大上家の呪いも繰り返され、解放を願う。


過去と同じ名・・マキ?では、アオノは・・私・・?


『欠けたものを取り戻し、呪いを軽減せよ。』


何かが、記憶の奥にある・・。

思い出せないが、万樹に・・込み上げる憎しみが黒く・・黒く染まっていく。


「許さない。大上家の男を絶対に赦さない・・。

歌毬夜、あなたがいることを知って・・魔女の一族に、私は16歳で結婚させられた。

ふふっ・・。お金も男も不自由しない。けど、呪ったマキが望むものが手に入らない。

一族の誰かが手に入れないと・・。

そうね、もうすぐ手に入る・・

苺愛が手に入れる。それまで私は・・求める・・どんな手を使っても。」


苺愛・・。彼女も魔女の一族だと言っていた。

采景の一生の相手・・。


手に入るのは、大上家の男の心・・?

契約し、二人の気持ちは・・?


采景は何も言わないから、分からない。

私のいない間に話が出たのだろうか?


「さ、二人を迎える準備をしないとね。

あなたたちを助けに来る、王子様たちを・・ね。

心を奪ってやるわ。すべてを忘れてしまえばいい・・。」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ