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⑫-B 【 大上家シリーズ】おおかみはかぐや姫を食べた  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ1】おおかみはかぐや姫を食べた

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『生と死の垣根』

歌毬夜Side



 築嶋家と、大上家の・・伝承。

夢は、現実にあったこと・・?悲しみが、呪いのように・・私を苦しめる。

繰り返されるとすれば、彼は・・。



 意識が戻り、目を開ける。


・・?

身動きが取れない。両手は後ろに紐で括られ、ベッドの上。


!!?!

制服の上着は、正面で全開・・に、下着を着けていない。

・・スカートの下も・・下着が・・無い?!


ここは、学校の空き室ではない。小さな部屋に、ベッドだけ。

正面は普通の窓。

外の光が入り、明るい。右の壁に、不思議な窓。外が見えるわけではなく、黒い色。

そして・・気持ち悪い。


何故、ここに・・?

この窓・・もしかして、向こうから見えている?

怖い・・。


オオカミ・・一緒にいた、保志は?まさか、隣・・?


かあぁあ~~。

恥ずかしい・・。


『ふふっ、起きたみたいね。さぁ、オオカミ様・・どうする~?』


この声・・あの人?!

声と同時に、真っ黒な窓が景色を映し出す。


「保志!!」と、あの人・・。


「お母様、これは・・どういうこと・・ですか?」


声が震える。

調子の悪そうな保志に、寄り添い・・上着は、はだけている。


「止めて!汚い手で、彼に触らないで!!」


保志は、苦しそうな表情・・。


『ふふっ・・くすくす・・。これ、あなたの匂いに酔っているのよ?

いいわ。もっと壊れて。私を求めれば良いわ・・。

さぁ、我慢せず・・手を出しなさい?くすくす・・くす。』


私の匂いに・・?

この壁、天井に隙間が・・機械的に造られている。

まさか、こんなことのために・・わざわざ造った?


「・・嫌だ。保志、お願い・・。

違う・・ごめん・・ね。」


私が、触れないで・・なんて・・言える立場ではない。

彼を、こんなことに巻き込んでしまった。


お母様・・どうして、彼を巻き込むの?

私は、彼を苦しめることばかり。


もっと早く、距離を取るべきだった。“期限”・・が、来てしまった。

また、あの・・伝承のように・・私を、小さな世界に閉じ込めればいいわ。


「止めて・・下さい。家に戻りますから・・」


『はぁ・・歌毬夜?・・ここの様子が分かるのか?

・・絶対、助けに行くから・・な。』


向こうから、こっちの様子が見えないようだ。


『そうそう・・俺、記憶が戻った・・よ。』


保志が、記憶を取り戻した。


『ははっ・・キッツイ・・わ。お前の匂い・・。

それ、もちろん・・俺を求めて・・るんだよな?

ふっ。覚悟しとけよ?愛してやる・・。』


かぁ~~。


『絶対、逃げるなよ?・・いや、逃がさない。』


保志が求めるのは・・私・・。


「うん。覚悟してる・・。

だから、絶対・・その人に・・触れないで?」


解る。

私の見た過去の伝承を、彼も見たのだと・・。


『はっ、感じねぇよ・・お前以外は。

まだ、分かっていなかったのか?ふふっ・・体は覚えている・・だろ?

それとも、・・足りないのか・・な?』


『余裕なのね。匂いが足りないのかしら~?

ねぇ・・歌毬夜、今のその姿。可愛いわよね~?

見てもらいましょう。愛しい、オオカミ様に・・』


え・・?


「い・・や!!止めてぇ!!」


私は、自分の姿が見えないように・・布団にうつ伏せになる。

恥ずかしい・・嫌だ、見ないで。


「見ないで・・。

保志、お願い・・。恥ずかしい・・から。」


体温が上がる。




保志Side



 俺は、目が覚めたとき・・ベッドの上にいた。

無くす前の記憶と、その後の記憶が重なる。

伝承を・・夢で見た。


起き上がり、匂いに反応する。

歌毬夜・・?

視界が、はっきりし・・そこにいたのは、30歳・・?ぐらいの女。


「おはよう。

はじめまして・・ね。私、歌毬夜の義母なのよ。

ふふっ・・。楽しませてくれたら、歌毬夜を返してあ・げ・る。」


「・・なるほどね。汚い・・原因、か。

言っとくが、無駄だ。俺は、歌毬夜にしか反応しない。」


この女は、笑う。


「えぇ、知ってるわ。

面白くない・・。せっかく記憶を消して、あの子を苦しめようと思ったのに。

その様子だと、記憶も・・戻ったみたいだし?

・・ふふっ、何度でも消してやるわ。

でも、今日は・・違う遊びに付き合ってね。くすくす・・くす・・」


普通、ではない・・か。

その女は、出口を塞ぐように立っている。


近くに歌毬夜がいる。

匂いがする・・甘い香り。


俺は、ベッドから下り・・出口までの細い通路に立つ。

人が、一人通れる狭い通路。

何だ、この部屋?寝るためだけに、造られたみたいだ。

外の光が入る窓一つ。

意味のない・・?真っ暗な窓。


「退け・・。

退けよ、遊びには付き合えない。」


・・?

匂いがきつくなった・・?


「あら、起きたのね・・あの子。

ふふっ、いい反応だわ。」


いつもより、強い匂いに・・欲求が増す。


「・・あいつに、何した?」


「くすくす・・。楽しいぃ。

知りたい?ふふっ。後で見せてあげる。」


こいつ、歌毬夜への欲求を・・利用している?

歌毬夜・・、無事なのか?


その後、無事なのが分かる・・。そして、匂いの原因も。


『見ないで・・。保志、お願い・・。恥ずかしい・・から。』


真っ黒だった窓に、同じ部屋の造りになったベッドの上。

歌毬夜は両手を縛られ、制服の上着右側が、布団の上にある。


想像した。

多分、下着・・付けていない?

起きた時から、その姿に・・匂いが増した。そして、俺に・・見られる恥ずかしさに・・匂いが・・。


はぁ・・

欲しい。手に入れたい・・。


「ねぇ、可愛いでしょ?

もう、聞こえてないかしらぁ。理性なんて、残さなくていいわ。

あなたは、獣・・。でしょ?おおかみ。」


俺が求めるのは、歌毬夜だけ・・。

俺に触れる手を、意識が薄れても・・間違えたりしない。


「触るな。

・・押し付ける胸も、ただの肉・・。触れることさえ、嫌気がする。」


俺は、この女の鳩尾を・・加減して殴った。


「ぐっ・・。」


気を失った女を、ベッドに転がし・・ドアに向かう。

鍵が掛かっていた。


加減なく蹴破ると警告音が、鳴り響く・・。

くそっ・・。あの女、いい度胸だ。


隣の部屋に、歌毬夜がいるはず。

が、壁に遮られ・・いくらなんでも蹴破ることは出来ない。

遠回り・・。しかも、警告音。


先が長い・・。

助けに行くまでに、あんな姿の歌毬夜・・人に見せたくない。


俺は走った。

まるで迷路。が、・・迷うことはない。


微かに歌毬夜の匂い・・。

辿れば、近づく・・そして、匂いも強くなる。


ドアを開けた。

大きな部屋に、・・見覚えのある人。


「誠志・・?」


手に、剣・・。

なんとなく読めた。根回しもいいところだ。


「おい、時間がない。退けよ!」


「俺は、白雪を捜す為に、お前を倒して・・ここを通る!」


やっぱり・・。


「あのさ。俺、こっちから来た。

いないよ、白雪。雑種は、これだから・・。

ついて来い!こっちだ。走りながら話すぞ!!」


あぁ、なんて面倒な。


「あいつ、こんなに暇なのか?

・・誠志、考えてもみろ。素直に、あいつが白雪を返すか?

俺でさえ、お前が・・敵になったんだ。・・次は、誰なんだ?」


ドアを開ける。

・・誰もいない。匂いの方向が違う・・?


「ちっ・・。おい、誠志・・罠だ。」


向こう側の入り口から、黒ずくめの体格のいい・・おっさん達がゴロゴロ入ってくる。


「行くぞ!」


誠志は、うなずく・・。


「人は、殺すなよ・・?」


こいつ、持っているの・・真剣だよな。


「後のことは、気にするな!」


・・え?それって・・?

とにかく、俺は・・後ろ・・誠志の方を・・見なかった。

が、血の・・匂い。



 出口に着く。


匂いで、いるのが分かる。後ろを見ずに「誠志、行くぞ?」言ったと同時。

誠志は、俺の前にわざと姿を見せる。

返り血・・を浴びた・・姿。


「・・おい、知ってるか?

白雪姫の王子は、死体愛好家だって・・。」


呆然とする俺に「先、急ごうね?」と、笑顔。

・・仲間・・?・・で、よかった。

あのまま、戦っていたら・・。

寒気が・・する。


「オオカミ様!・・こっち!!」


杏・・に、稜氏と白雪。


「これ、鍵。ゴメンね、ちょっと・・潤!!」


稜氏は、申し訳なさそうに「御免!杏から聞いた・・。築嶋様に乗せられて、笛を渡したけど・・まさか記憶を無くすとは。」と、頭を下げる。


「いいよ。で、後はこのドアだけか。

・・悪いけど、ここで解散して。中の歌毬夜を、誰にも見せたくないから。」


解散・・。


俺は、制服の上着を脱いだ。


【コンコン・・】


・・匂いが増す。


「歌毬夜、見ないから。約束する・・。入るよ?」


「・・保志?・・保志、ごめんね・・。」


涙声・・。

覚悟・・しとけって話・・今は、出来ないな~。何て、思いながら。


鍵を開け、中に入る。

ベッドの上に固まった歌毬夜に、俺の制服を被せた。


「見てないから、それ・・上に着て。」


「・・あの、腕・・解いて・・?」


【ドクッ・・】


何の拷問だ・・。

ベッドの上・・縛られ、制服が乱れて・・下着なし。


あぁ・・涙が出る。

我慢だ・・保志・・。そう、これから帰るのは・・俺の家。


縄を解いて、俺の制服を着た歌毬夜・・。


 俺は、歌毬夜を肩に担いで走る。

出来るだけ早く、ここを離れたい。


「しっかり、捕まってろよ?」


「え・・?きゃっ・・」


高い壁を乗り越え、地面に着地した。

外に、大路家の車が待っている約束。微かな誠志の匂いに、移動し車を見つけた。


車の中、俺は・・歌毬夜を見なかった。

俺の制服を着て、落ち着かない様子。・・匂いが、落ち着かない。

やっぱり、下・・付けてないんだ。


「ね、保志?・・どこに向かっているの・・かな?」


不安そうに、潤んだ瞳で俺を見る。

可愛い・・。




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