表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
⑫-B 【 大上家シリーズ】おおかみはかぐや姫を食べた  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ1】おおかみはかぐや姫を食べた

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

12/77

一生に一人


 『明確なヒエラルキーの意識。(強い奴が少なくて、弱い奴ほど多くなる組織構成)。

オス同士の権勢意識も、とても強い。万が一、他犬との闘争にもなれば、とても危険。

・・飼い主が、リーダーとして主導権を握っていれば、むやみに人畜を襲うことはない。

警戒心が強い。仲間と認めたものとは、極めて良好な関係。

知性は、非常に高いが独立性が強い。』



「歌毬夜、何・・読んでるの?」


白雪は、私から離れない。私も、出来るだけ動かないでいた。


「ん~。狼犬の飼い方の本。」


白雪は、真剣に「オオカミ様を、飼うの?」と。


「あはは、・・まさか。

面白そうだから、見てたの。結構、当てはまるよね。」


彼に、私が主導権を持つなんて・・。


「オオカミ様。どうして、記憶ないのかな?」


笛の作用は、切れる・・?




保志Side



 何だ・・?イライラする。

いや、何かが・・欠けたような。足りない・・。


何だ?呪いか・・?まさか、あの時会った・・契約の相手・・?

すっきりしない・・。


「オオカミ様~~。」


言い寄ってくる女が、前より増えた?


「俺は、女に興味はねぇ。」


いつものように言ったつもり・・。


「築嶋さんに、興味持ってから・・優しい~!!」


奇声が耳に響く。

言っている意味が、解らない。

優しい・・?築嶋・・に、興味を・・持った?


・・契約の女か。ふん。記憶がないが、女に興味を持った・・か。

足りないのは、満たされない・・欲求。ナニカ・・を、求め。


「ふ~ん。おもしれぇ。

試してやるよ。まず、お前・・。」と、適当に女を選んで・・空き室に連れ込む。


何かが、心に掛かる。足りない物に・・近い?


「オオカミ様ぁ~~」


顔の区別はつかない。綺麗なのか、可愛いのか・・基準が判らない。

この女の唇に、口づけさえしなかったらいい・・。


何だ・・?

デジャブ・・。


足りない・・。首筋に唇を近づけるが・・止めた。

理解できない苛立ちが、募る。

手を柔らかい胸に触れる・・。


「・・あん。」


・・・・。

肉・・。


・・違う。

一気に覚めた。


「感じない・・。」


俺の渇望は膨らむが、満たされない。

何人か試したが、同じ・・。いや、触れることさえ・・嫌気がする。


あいつと、どこが違う・・?

朝・・一度だけしか会っていない・・。でも、顔を・・覚えている。

さっきまで、連れ込んだ女たちの顔なんか、覚えていないのに・・。


試すか・・?


【ドクッ・・ン】


自分の、奥深く・・血が・・ざわめく。

欲しい・・。



「オオカミ!!あんた、いい加減にしなさいよ!!」


・・何て言うんだっけ、これ。

あぁ・・


「飛んで火に入る夏の虫」


俺に、何されるか知らないで。


「女の子連れ込んで、触ったりして・・

『感じない』って・・失礼でしょ?聞いてるの?」


匂いがする。

微か・・だけど、知っている。


何故だ・・?こんなに集中しているのに、微かな匂いのまま。

・・足りない。


「あんた、名前は?」


「築嶋 歌毬夜!

・・って、聞いてる?人の話!!

まったく、あんたが記憶を無くしてるから安心してたのに。」


「安心・・て、俺が・・

歌毬夜以外に、手を出さないこと?」


はぁ・・。

息が、切れる・・。上手く、息が出来ない。


「ば、・・バカじゃない?!

私にさえ、近づかなければいいのよ!でも、人を傷つけるのは・・むっ・・ぐ?」


契約の・・相手。

俺は、何のためらいもなかった。


不思議・・いや、当然なのか?

重ねる唇は、甘い・・。

何とも言えない、満ちていく・・心。


「はぁ・・。」


唇を、少し重ねただけ・・。


「歌毬夜・・」


名を口にし、更に・・何かが増す。


歌毬夜の瞳が、俺を受け入れている。分かる・・。

俺は、もう一度・・唇を重ね・・強く押し付ける。


「ん・・。やぁ・・」


【ドクッ・・】


はぁ・・。

可愛い・・愛しい・・。

欲しい、手に入れたい・・。もっと、もっと・・。


「オオカミ・・記憶、もど・・んっ・・んん~」


彼女の会話の途中・・舌を入れ、絡ませた。


「ん、や・・むっ・・んん」


俺は、右手を制服の上着に入れた。その間も、唇は・・求めたまま。

右手は、お腹から・・胸に滑らす。


「ひゃ・・」


可愛い声だ・・。

ブラジャーをずらし、柔らかい胸に・・手が触れる。


「はぁ・・はあぁ。」


欲情・・。

これが、俺の・・一生に、一人の相手。


「歌毬夜・・歌毬夜・・」


足りない・・。


「も・・ダメ。まっ・・て。やぁ・・」


恥らう歌毬夜に・・理性が飛ぶ。


「ねぇ、歌毬夜?欲しい・・。ね・・、いい?」


「嫌ぁ!!」


さっきまで受け入れていた歌毬夜が、急に態度を変える。


【ズキッ】


・・何だ?一気に現実・・。

他の女たちの時とは、明らかに違う。痛みが、俺を襲う。


知ってる・・何度か経験した。

キオク・・にある。


歌毬夜の両腕を、地面に押さえつける。


「オオカミ・・?ごめ・・違う・・違うの。」


彼女の言い訳に、余計に胸が締め付けられるように感じる。

彼女も、俺が感じたキオクを気にしている。何度か、あった事。


「何が、違うの・・?

まだ記憶は、ないよ?けど、俺は解っている。お前だ・・

俺の対、一生に一人の相手。お前だけにしか、感じない。欲情しない。

歌毬夜、ひどい女だ。

さっき、何て言った?『感じないって失礼』・・?

ふっ・・。笑える。

じゃ、君は?俺の求めに、受け入れ・・応えていた。

『感じて』おきながら、踏み込んでは・・駄目・・だって?」


歌毬夜は、上にいる俺の目を見たまま・・涙を流す。


許してしまいたい・・。

そうやって、何度・・俺は言葉を飲み込み・・傷ついてきた?

この涙が、止まるなら・・。

俺を傷つけてもいい。甘やかしたい・・。

けど、口に出てしまった感情は止まらない。


「・・何度目、なの?」


「うっ、うえ・・ん。ごめ・・なさ・・いぃ~・・うぅ・・」


欲しい言葉は・・。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ