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⑫-B 【 大上家シリーズ】おおかみはかぐや姫を食べた  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ1】おおかみはかぐや姫を食べた

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第三幕


 被服室。


暗いのが嫌で、カーテンを開ける。

はぁ・・。


「大きなため息だね。何?用事って。」


「ぎゃっ・・」


気配無く、耳元で囁く声。

急いで、距離を取る。


「待って、今日は・・お話しが、アリマシテ。」


「杏から聞いた。伝承を、聞きたいんだろ?

しかも、聞かないと・・。杏たちから、話しもしてくれないって?」


ニヤリと、優位を示す笑い。

冷や汗が・・。


「そうだな~。良いけど、代価は何?

俺、そんなに優しくないよ。ふふ・・。」


オオカミは、ご満悦。

・・ここで、笛は逆効果。脅しても、話しは・・得られない。


・・・・。


「はい、時間切れ。

じゃ、選択肢をあげるね。優しいな~、俺って。ね?」


何?何?・・何を求める気?!!


「・・ソウデスネ。何が・・アリマスカ?

あの・・あまり、無茶は・・その」


「はい、黙って。

いち、歌毬夜からキス。にい、俺と付き合う。さん、」


「無理!!」


つい。

どんどんエスカレートしていく要求のスタートが・・私からのキス?

どれも無理に決まっている。


「歌毬夜、いい度胸だね・・。自分の立場、分かってる?」


分かっている・・。崖に落ちる、一歩手前。


「俺、実は・・怒っているんだ。理由は、分かっているよね・・?」


「まさか、笛・・の事?」


それしか、思いつかない。


「ハズレ。ペナルティ追加ね。」と、一歩近づく。


頭が混乱・・。


「時間は、待たないから。」と、また一歩。


笛の事を怒っていないなら・・。

ポケットから、笛を出し・・口に挟む。


「・・むっ・・ん」


私の唇に、オオカミの唇・・。

オオカミは、笛を口に含んだ。


「ん~・・」


吹いてみるが、空気は動かない。

笛の空気の出口は、彼の舌で押さえられている・・?


笛は、彼の口の中に・・取られた。

そして、そのまま・・舌は、私の唇を舐める。


「んん!!・・ん~。」


唇をぎゅっと閉じ、目も閉じた。

彼の舌と唇は、私から離れる。

そっと、目を開け・・唇に残る感触に、右手の甲で押さえる。

彼は、舌を出し・・その上に笛。

で、どうする?という顔。意地悪に・・。


かぁ~~。


「いらない・・もん。・・ひどいよ。」


右手の甲で押される唇は、まだ・・感触が残っている。

恥ずかしい・・。

彼は、笛を手に持ち・・壊した。

怒っているんだ・・。


「ひどいのは、どっち?・・ねぇ、歌毬夜?」


今、オオカミは・・私の目の前。

私との間に、一歩の距離。その距離が、私に不安を与える。


「な、何を・・私がしたの?」


「分からないんだ・・?」


オオカミは、右手を出し・・私の頬に近づける。


【ビクッ】


触れると思って、目を閉じた。

・・?触れ・・ない?

そっと、目を開ける。


【トン】


オオカミに押され、バランスを崩し・・下がる。

カーテンを開けた窓にぶつかり、止まった。


・・?


「オオ・・カ・・」


オオカミの右手は、私の顔の左側。

左手は、私の右側の腰の辺り。オオカミの顔が、近い。

緑色の目に、私は・・目を閉じることが出来なかった。


じっと、彼の表情を見ていた。

悲しそうに・・見える?・・胸が、締め付けられる。

こんな表情を、私が・・させた。

彼は、目を閉じ気味にし・・唇を近づける。

が、私の唇に・・微かに触れるか触れないか。


ドクンッ・・。


何とも言えない感情・・。苦しすぎる。

微妙な距離で、唇は、頬・・目元へ。私に触れるのは、彼の息だけ・・。

・・もどかしい。


彼の唇は、首筋・・胸元に近づく。微かにさえ、彼の唇が触れることはない。

触れて欲しい・・。


「・・はぁ。」


息が漏れる。

私は、手を・・出す。

両手で、彼の頬に触れ・・。顔を、自分のほうに向かせる。


「・・・・。」


見つめる彼の目に、私が映る。

私は、自分の唇を・・彼の唇に重ねた。自分から・・。


そっと重ねた唇は、彼の柔らかい唇を感じる。体温も・・。

愛しい。


彼は、目を閉じる。私も、閉じた。

受け入れる私の唇に、彼は・・唇を強く押し付ける。

一度、離れ・・


「・・はぁ。」


「歌毬夜・・」


名前を呼ばれ、愛しさが増す。


「このまま、受け入れてくれ・・。」


彼は、私の唇を求める激しいキス・・。


「ん・・。・・もっ・・と。」


?!


今、私・・!!

私・・求めた。しかも、その言葉を・・口にした。


かぁ~~。

一気に、現実が見える。


「また・・逃げるの?」


ドキッ・・。

私の、ぎごちなさを感じ・・オオカミは問う。

図星に、一層うろたえてしまう。


「歌毬夜、どうして?俺が・・。くそっ・・」


彼は、私から視線を逸らす。

距離をとって、方向を入り口へ・・そして歩いていく。


「大上・・?」


彼は、振り返らない・・。




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