海へ行こうよ!!
遠矢side
夏と言えば、海♪
くふふ・・この日のために、新作を数多く生み出した。
むふっ・・どれを着せようかな?
海でイチャイチャ・・くふっ・・
「主、顔がゆるんでますが?」
「遠矢って、何度・・あ・・
墨、これを後で学園へ持って行ってくれ。」
本家の見張りが、墨の能力を審査する。
主従関係は、俺の基準が通らない・・
本家は、何かを知っているのか?
美彩を見守る役員をつけようとした。
情報屋から聞き、妃に対応を依頼して先手を打ったが・・今度は、墨。
何だ・・?呪いの解放・・願いは同じ。それなのに・・
「主、情報屋から連絡です。」
「あぁ、妃に任せてる件だな。
どうだった?」
「戦いを譲らないそうです。」
「・・そうか。行くよ・・」
美彩は、俺との付き合いで嫌な思いをしている。
それを何度も尋ねたが、答えない。
闘う強さを培うのだと・・独りで戦う。
俺の存在を独りで味わい・・俺は、孤独を味わう。
これから闘うのは、俺達・・二人・・なんだよ?
相手を見つけ、美彩のことを本家に報告した。
本家は、雑種を管理する・・そして、解放の道も・・
子供は旅に出さない・・その報告に、過敏な本家。
失敗は・・呪いの増幅・・解放を望み、呪いを恐れる。
学園に戻り、美彩の匂いを探す。
匂いと共に増すのは、怒鳴り声・・
「・・絶対に別れない!
遠矢の手には、婚姻届があるんだから!!
喧嘩は買う。私の未来は、変わらないから!」
「そうだね・・。未来は変わらない。」
俺の登場に、喧嘩の後で・・傷だらけの数人が逃げた。
仁王立ちの美彩・・泣きそうなのに、睨んで口を閉ざす。
強く結んだ唇・・見える傷は、その端にあった。
「・・美彩、怒っているのは俺だよ?」
その言葉に、初めての涙。・・弱さの・・
【ズキッ】
痛みが胸にある。
いつも見せない涙が、美彩の限界を示す。
護れていない・・
優しく抱きしめ、仁王立ちのままの美彩に囁く。
「見ていない。
見えないよ・・ごめんね。ごめん・・」
「謝らないで。遠矢・・遠矢・・」
呼ぶ名が、いつもより切なくて・・
頬に手をあて、傷になったところに唇をつける。
「・・んっ・・や。」
「その痛み・・どうしたら、拭える?」
「拭わないで。あなたへの愛情なの・・」
「・・愛している。
呪いが憎い・・それなのに、望んでしまう。」
本家も・・そうなのか?
何を恐れる・・
「遠矢・・一緒にいたい。」
甘えた美彩の声に、嬉しくなる。
一緒・・
「美彩、海に行かないか?」
水着を・・・・?
俺の誘いに、顔を背け・・
【ドンッ】
え??
両手で、思いっきり押された。
「美彩??」
急に不機嫌??
「行かない!帰る・・」
「・・美彩、泳げないの?」
・・・・。
・・・・。
「暑いねぇ~~、アイスを買って?」
いつも、そんな可愛い“おねだり”を受けたことがない。
・・が!!誤魔化されないぞ・・
「美彩ちゃん?
ね、答えて・・泳げないのかな?」
「・・げ・・い。」
「ん?聞こえないよ?」
「・・嫌い!大っ嫌いぃ~~~~!!!!!!」
美彩side
海・・波がある。
【ゴクリ・・】
唾を呑み込み、砂に足が埋まったまま。
「美彩、ほら・・浮き輪ですよぅ~♪」
悔しい・・負けず嫌いな私に、嬉しそうな遠矢・・
海に入ったら、勝ち目がない。
「て、何でスク水なの??」
スク水・・あぁ、スクール水着?
「何か、問題が??」
「プレゼントしたろ?」
水着の種類を語りだす・・
海に浮かれているのは、遠矢だけだからだよ・・そんなこと言えない。
負けたみたいで・・
「さ、準備運動・・熱くなる?」
・・・・
触れようとする手に噛みついた。
【ガブッ】
「・・ふふ。美彩、積極的だね?
俺を味わうの?俺も、味わう・・塩味・・」
どうしようか・・完全に、夢の世界ですよ??
ムカつく!!!
浮き輪を付けた私を海へと運んでいく。
水着だけど、遠矢の体温がいつもより・・熱く感じる?
目を輝かせた遠矢・・色が緑・・・・
興奮してますか!?
やばい・・
気づいたときは、すでに奴のテリトリー・・海の中。
冷たい・・水・・密着する身体。
お腹にある遠矢の手が、胸に滑る。
「駄目!!怖い・・」
素直な言葉に、恥ずかしい思いをする。
「可愛い・・美彩・・弱さを見せて?
さらけ出してよ・・頼って。委ねて・・」
「嫌だ・・足がつかない。戻って・・お願い。
酷い・・恨むから!!」
必死で、弱さの感覚が・・狂う。
「恨んでも良い・・
逃がさない。俺のだ・・美彩・・
俺の足もつかない。溺れても良い・・」
溺れても・・・・
その言葉に、何かを感じる・・
「・・遠矢?
これ・・これ!!!!」
「うん、穴が開いてる。
俺が傷つけても、君は闘う?」
遠矢・・?
溺れても・・
「遠矢、手を・・
腕に寄り掛かる。浮き輪は要らない・・
あなたが、私の支え・・でしょう?」
私の体が拠り所にするのは、浮き輪じゃない・・私の支え・・
空気の抜けた浮き輪が流れていく。
「美彩・・
分かる?俺の泳いでいるのが・・。」
「うん。進むべき道は、あなたが知っている・・でもね・・」
「分かってる。
闘うのは“二人”だと覚えていて欲しい。」
何も答えられなかった。
ただ、足が着くまで・・身を委ねる。
抵抗が、遠矢の身を危うくさせる・・海は自然・・強大な力。
呪いは・・呪いは、きっと・・・・
海から出て、砂浜に立つ。
ふわふわ・・揺られた波の感覚が残っている。
ほんの少しの時間だったのに・・怖い時間が長く感じた。
思い出せる恐怖・・
「美彩、怒っているよね・・」
私が黙ったままなので、遠矢は触れずに離れた場所。
遠い・・安定の場・・
「お腹がすいた。焼きトオモロコシ!!」
遠矢の腕に飛びつく。
安堵する。この腕に、支えられ・・呪いに立ち向かう。
私は・・独りじゃない。二人・・
あなたを支えることが出来るかしら?
「美彩、屋台はこっち・・」
「遠矢、塩味は・・好き?」
味わって・・
あなたが求めるなら、私は応える・・その腕の中・・
ただ、甘える私ではいけない。
すべてをあげるわ・・愛しさに溺れて・・