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【 大上家シリーズ】 おおかみは羊の皮を被らない  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ0】おおかみは羊の皮を被らない
10/72

海へ行こうよ!!

遠矢side



 夏と言えば、海♪

くふふ・・この日のために、新作を数多く生み出した。

むふっ・・どれを着せようかな?

海でイチャイチャ・・くふっ・・


「主、顔がゆるんでますが?」


「遠矢って、何度・・あ・・

墨、これを後で学園へ持って行ってくれ。」


本家の見張りが、墨の能力を審査する。

主従関係は、俺の基準が通らない・・


本家は、何かを知っているのか?

美彩を見守る役員をつけようとした。

情報屋から聞き、妃に対応を依頼して先手を打ったが・・今度は、墨。

何だ・・?呪いの解放・・願いは同じ。それなのに・・


「主、情報屋から連絡です。」


「あぁ、妃に任せてる件だな。

どうだった?」


「戦いを譲らないそうです。」


「・・そうか。行くよ・・」


美彩は、俺との付き合いで嫌な思いをしている。

それを何度も尋ねたが、答えない。

闘う強さを培うのだと・・独りで戦う。

俺の存在を独りで味わい・・俺は、孤独を味わう。

これから闘うのは、俺達・・二人・・なんだよ?


相手を見つけ、美彩のことを本家に報告した。

本家は、雑種を管理する・・そして、解放の道も・・

子供は旅に出さない・・その報告に、過敏な本家。

失敗は・・呪いの増幅・・解放を望み、呪いを恐れる。



 学園に戻り、美彩の匂いを探す。

匂いと共に増すのは、怒鳴り声・・


「・・絶対に別れない!

遠矢の手には、婚姻届があるんだから!!

喧嘩は買う。私の未来は、変わらないから!」


「そうだね・・。未来は変わらない。」


俺の登場に、喧嘩の後で・・傷だらけの数人が逃げた。

仁王立ちの美彩・・泣きそうなのに、睨んで口を閉ざす。

強く結んだ唇・・見える傷は、その端にあった。


「・・美彩、怒っているのは俺だよ?」


その言葉に、初めての涙。・・弱さの・・


【ズキッ】


痛みが胸にある。

いつも見せない涙が、美彩の限界を示す。


護れていない・・

優しく抱きしめ、仁王立ちのままの美彩に囁く。


「見ていない。

見えないよ・・ごめんね。ごめん・・」


「謝らないで。遠矢・・遠矢・・」


呼ぶ名が、いつもより切なくて・・

頬に手をあて、傷になったところに唇をつける。


「・・んっ・・や。」


「その痛み・・どうしたら、拭える?」


「拭わないで。あなたへの愛情なの・・」


「・・愛している。

呪いが憎い・・それなのに、望んでしまう。」


本家も・・そうなのか?

何を恐れる・・


「遠矢・・一緒にいたい。」


甘えた美彩の声に、嬉しくなる。

一緒・・


「美彩、海に行かないか?」


水着を・・・・?

俺の誘いに、顔を背け・・


【ドンッ】


え??

両手で、思いっきり押された。


「美彩??」


急に不機嫌??


「行かない!帰る・・」


「・・美彩、泳げないの?」


・・・・。

・・・・。


「暑いねぇ~~、アイスを買って?」


いつも、そんな可愛い“おねだり”を受けたことがない。

・・が!!誤魔化されないぞ・・


「美彩ちゃん?

ね、答えて・・泳げないのかな?」


「・・げ・・い。」


「ん?聞こえないよ?」


「・・嫌い!大っ嫌いぃ~~~~!!!!!!」




美彩side



 海・・波がある。


【ゴクリ・・】


唾を呑み込み、砂に足が埋まったまま。


「美彩、ほら・・浮き輪ですよぅ~♪」


悔しい・・負けず嫌いな私に、嬉しそうな遠矢・・

海に入ったら、勝ち目がない。


「て、何でスク水なの??」


スク水・・あぁ、スクール水着?


「何か、問題が??」


「プレゼントしたろ?」


水着の種類を語りだす・・

海に浮かれているのは、遠矢だけだからだよ・・そんなこと言えない。

負けたみたいで・・


「さ、準備運動・・熱くなる?」


・・・・

触れようとする手に噛みついた。


【ガブッ】


「・・ふふ。美彩、積極的だね?

俺を味わうの?俺も、味わう・・塩味・・」


どうしようか・・完全に、夢の世界ですよ??

ムカつく!!!


 浮き輪を付けた私を海へと運んでいく。

水着だけど、遠矢の体温がいつもより・・熱く感じる?

目を輝かせた遠矢・・色が緑・・・・

興奮してますか!?

やばい・・

気づいたときは、すでに奴のテリトリー・・海の中。


冷たい・・水・・密着する身体。

お腹にある遠矢の手が、胸に滑る。


「駄目!!怖い・・」


素直な言葉に、恥ずかしい思いをする。


「可愛い・・美彩・・弱さを見せて?

さらけ出してよ・・頼って。委ねて・・」


「嫌だ・・足がつかない。戻って・・お願い。

酷い・・恨むから!!」


必死で、弱さの感覚が・・狂う。


「恨んでも良い・・

逃がさない。俺のだ・・美彩・・

俺の足もつかない。溺れても良い・・」


溺れても・・・・

その言葉に、何かを感じる・・


「・・遠矢?

これ・・これ!!!!」


「うん、穴が開いてる。

俺が傷つけても、君は闘う?」


遠矢・・?

溺れても・・


「遠矢、手を・・

腕に寄り掛かる。浮き輪は要らない・・

あなたが、私の支え・・でしょう?」


私の体が拠り所にするのは、浮き輪じゃない・・私の支え・・

空気の抜けた浮き輪が流れていく。


「美彩・・

分かる?俺の泳いでいるのが・・。」


「うん。進むべき道は、あなたが知っている・・でもね・・」


「分かってる。

闘うのは“二人”だと覚えていて欲しい。」


何も答えられなかった。

ただ、足が着くまで・・身を委ねる。

抵抗が、遠矢の身を危うくさせる・・海は自然・・強大な力。


呪いは・・呪いは、きっと・・・・



 海から出て、砂浜に立つ。

ふわふわ・・揺られた波の感覚が残っている。

ほんの少しの時間だったのに・・怖い時間が長く感じた。

思い出せる恐怖・・


「美彩、怒っているよね・・」


私が黙ったままなので、遠矢は触れずに離れた場所。

遠い・・安定の場・・


「お腹がすいた。焼きトオモロコシ!!」


遠矢の腕に飛びつく。

安堵する。この腕に、支えられ・・呪いに立ち向かう。

私は・・独りじゃない。二人・・

あなたを支えることが出来るかしら?


「美彩、屋台はこっち・・」


「遠矢、塩味は・・好き?」


味わって・・

あなたが求めるなら、私は応える・・その腕の中・・


ただ、甘える私ではいけない。

すべてをあげるわ・・愛しさに溺れて・・




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