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【 大上家シリーズ】 おおかみは羊の皮を被らない  作者: 邑 紫貴
【大上家シリーズ0】おおかみは羊の皮を被らない
1/72

一生の相手


『必ず見つける。一生に一人の対なる者。

手に入れろ。どんな手を使っても・・。

呪いが、刻む・・』



希東けひがし高等学校一年生。大上おおがみ 遠矢とおや


俺は、理事長室に呼ばれた。

この学園は、特別・・


大上家のしきたりに、16には親元を離れ・・一生の相手を探す。

16は来ていないが、最近・・大上家は、高校の入学時期に旅に出る。

食っていける財源を手に・・俺は、中学までに会社を設立させ軌道に乗せた。

それは、一生の相手なんかに縛られず・・自由に生きるためだった。


呪いか何かは知らないが、女に欲情がない。お年頃は事実で、皆に合わせた何かはある。

馬鹿にしていた。一生の相手?何がだ!!

そんなに必死になってきた奴らの気がしれないと・・彼女に、出逢うまで・・


呪いを望むほどの愛

・・出逢った奇跡・・俺の相手・・一生を共にする。

求めるのが義務のように・・その呪いさえ、心地よい・・


『手に入れろ。どんな手を使っても・・』


・・緑色の目・・抗うのは、どうしてなの?ね、君は・・どうして、選んでくれないの?

俺の愛が、呪いの所為?本当に?

選んだのは、俺だ・・独りで生きる覚悟があるんだよ?その気持ちが嘘?偽り?

信じてほしい・・君一人を愛すると誓うから・・



 学園は平和。

ここは総合的なレベルは低いが、特別な何かを持った者が通う。

麻生学園の望みは、果てしない・・俺も、その望みに必要な基礎の一つ。利用されるように、利用する。

今の俺では、独りで生きていけない。分かっている・・対がいるんだ。


「遠矢様、学園の案内を・・」


「墨・・本名を教えろよ!」


もく・・裏の役員衆の一人。


「ふふ。知りたいの?俺の情報は高いよ?」


ニヤリと、不敵な笑顔。


「・・キスは、どうなのかな?」


「え!?チュウ、くれるの?」


何故に、嬉しそうですか?


「・・呪いは、どこまでの基準なのかと・・」


「じゃ、試す?」


目を輝かせて、俺の両肩に手をのせる。


「・・くっ・・俺に勝てたら、試しでしてやるぜ?」


初めての勝負・・

自信のある奴に、力を示すのは主の仕事。


「・・参りました。」


「当然だ!」


何にも不足しないはずなのに・・お年頃。

欲求はないが、試してみたい好奇心・・


「墨、可愛い女の子を教えろよ!」


訊いた俺が馬鹿だった・・



「遠矢って、ブスが好きなの??」


試しに連れ込んで、触れた胸には何も感じず・・

流れた噂に、ケラケラ笑う墨・・苛立ちが募る。


「俺の評価は、お前の評価だろ?」


「そう♪

俺の評価は最悪!!ぷぷぷ・・今更、落ちるものはない。」


自慢げに、何を言うのやら・・


「俺、情報屋に接触したんだ。」


「え!?いつ・・てか、マジで??」


青ざめ、オロオロ・・


「あぁ、安心しろ・・胸には触れたが、感じなかった。」


「ばかぁ~~!!

俺の嫁さんに、手を出してんじゃねえ!!」


「くっ・・くくく・・俺の監視も儘ならない。

子供は、お前に似て・・俺に目を輝かせていたぞ?」


「うわぁあ~~ん。俺の威厳は・・イメージが・・」


取り乱した姿は、年甲斐もなく・・幼い。

役員は、特別に訓練を受けていると言うが・・


「遠矢、役員に推薦を受けただろ?」


真剣な表情で、何かを探る視線。


「興味がない。

誰かを護る?はっ・・くだらねぇ。俺は、独りで生きていくんだ。」


答えになるだろうか?


「・・俺、昔・・お前の家系を見た。雑種も・・」


「雑種?」


「・・大上家は、逃げてきたのかな?旅を言い訳にして・・」


雑種・・俺の知らない存在・・

呪いは、深い。俺は・・抗ってみせる。

手に入れない・・見つけない。例え、見つけて手に入れても・・絶対に、子供は旅に出さない。


その決意が、逃げてきた呪いと対峙する結果になったのだろうか?

・・まだ、知らない未来・・



 変化のない毎日・・独り暮らしも、不便はない。

女が必要なのは、男の欲望か?

呪いは、ある意味便利だ。

その欲望さえない・・相手以外に反応しない。女の区別がつかない。

何が楽しいのかな?

触れた胸は、確かに柔らかいが・・キス、相手ではないのにしたら・・どうなるのかな?


契約・・か。

一生を誓い、どれほどの欲望が芽生えるのか。

父は、母と仲が良かった。もう、会うこともない・・

別れが、当然のように用意されていて・・何かが納得できない。

父は、母がいれば・・一生の相手さえいれば、それで良かったのだろうか?


【トスンッ】


・・・・?

軽い何かが、俺の背中にあたった。振り返るが、何もない。


「・・痛いようぅ~~」


声が、下から??

視線を移すと、可愛いパンツ・・白い肌・・


【ドクンッ】


・・感じたことのない感覚。


「・・大丈夫か?」


手を差し出した俺に、涙目で微笑む。


【ズキュ~~ン】


何だ??何が、な・・な??なっ・・

可愛い?!


「ありがとう~」


俺の手を取ろうとして、前に転ぶ。


「・・・・痛い・・」


だろうな・・

俺は、脇に手を入れ抱き起す。


【ふにゅ・・ん】

・・【ゾクゾクゾク!!】


「・・どこ、触ってるのぅ!?!!」


いきなり暴れだす彼女・・

足を地に着け、俺を睨んだ。


触れた胸・・この、感覚・・


「はぁ・・」


息が、できない・・


「ちょっと!!聞いてるのぉ??」


何だ、匂いが・・

甘い匂いが、思考を乱す。


『必ず見つける。一生に一人の対なる者。手に入れろ。どんな手を使っても・・。

呪いが、刻む・・』



俺の覚悟も、一瞬で決まっていた・・呪いじゃない・・俺の何かが知っている。

しかし、小さいな・・


「小学生か?」


つい、言葉が口に出たと同時・・さっきの柔らかさの再確認で胸に触れた。

【フヨ・・ン】


「ばかぁああ~~~~!!」


【バシッ】


小さい体の、どこにこんな力が??

目に入ったのは、三年生を示す青色のリボン・・


「え?年上??」


走り去る彼女の背中・・匂いが遠ざかり、欲求が信じられないように増す。


「はぁ・・はっ・・」


欲しい・・

これが、欲求・・初めての欲情。


俺は、相手を見つけたんだ・・

呪いを望むほどの、愛・・俺が狂うほどに、君も受け入れて・・


必ず手に入れる。大切にする。

得る幸せは、すべて・・手放さないと誓うから・・



 欲求が治まるまで、時間がかかった。

壁にもたれ、感情を落ちつけようとするが・・思考に呪いが語る。『手に入れろ』と。


大上家の呪いで、手に入れる幸せに・・永遠はあるのだろうか?

それでも、願う・・俺の対・・呪いに身を委ねても、君が手に入るなら・・


「大丈夫ですかぁ~、主殿♪」


墨は、楽しそうに俺の前にかがんでニヤニヤ・・

苦しんでいる主に、嬉しそうなのは・・主従関係がなっていないね。

俺の力不足か・・


「墨、彼女の情報を・・」


「嫌だ♪」


即答かよ・・。


「情報屋の弱点と引き換えで・・」


「乗った!!」


・・俺、コイツ・・どう扱えばいいのかな?


藤原ふじわら 美彩みさ高校3年生

・・手に入った情報は、名前だけだ。


「で、弱点って?」


嬉しそうに、嫁さんの弱点を知りたいなんて。


「知らねぇ。俺は、情報屋じゃないし・・

お前の情報に満足できたら、探ってやったのに・・残念。」


「うっそだぁ~~」


膨れた顔で、ご機嫌斜め・・ムカつく!!


「馬鹿だね。弱点は探すものじゃない・・

“偶然”手に入れるか、作るんだよ。くくっ」


「どうやって??」


「墨、お手・・」


「ワン!!」


・・・・。

単純だな・・これも、嘘かもしれないと疑わない。

ま、俺なら本当に作れるけどね・・


美彩、君は単純なのに・・心は、簡単ではなかった。

それが、愛しいなんて・・苦しめる理由かな?


君が、呪いに選ばれたのは本当かもしれない。

君の強さは、子供たちの試練に・・必要だった。君も、俺も・・見守る強さが必要だったから。

俺が、闘う以上に・・君は・・


共に、生きる試練の道。

始まりも、幸せまで辛い想い・・犠牲は、必要だった・・



「主、会社と授業・・どうします?」


予定の把握もしていない・・


「墨、お前・・何のためにいるんだ?」


「さぁ?命令になら、従うよ。」


墨は、自由に生きてきたのが分かる。その生き方は、嫌いじゃない・・

俺には、不足はない。ただ、監視なのか・・学園の鎖。


「墨、美彩を護ってくれ。俺がそばにいない時・・頼む。」


「了解!!手を出したら、ごめんね♪」


軽い調子・・

今までの俺にはない感情。その感情は、感覚のない激しさ。

ソレに動かされ、俺は墨の胸座を掴んで睨む。


「手を出す?

くすくすくす・・面白いことを言うね。殺すよ?」


「・・主、失言を致しました。

命に代えても、護りましょう。そして、忠誠を誓います。」


真剣な眼・・

それに、冷静になった俺は墨を開放し・・自分の手を見る。


「主、指示を。」


「主ではなく、遠矢!それ以外は受け付けない。

行け、美彩を護れ。」


「男がいた場合は、手を下しますか?」


「ふっ、俺の楽しみだ。配分は任せる。」


墨は、俺から離れる。気配を上手く消して・・

やれば、出来るのかよ。


「情報屋、いるんだろ?」


「ふふっ。彼、男前でしょう?」


「・・悪趣味だね。

で、弱点は何かな?」


「知りたいのは、私の情報ではないでしょう?」


裏の情報をすべて把握する情報屋・・

姿を知っているのは、数人だろう。


「俺は、これからどうなる?」


「私は、情報屋であって預言者じゃないわ。

ただ、私たちが知っている大上家は・・幸せのために、契約をした。

一生の対・・喪って、独りで生きたおおかみも、知っている。その覚悟が、あなたにはある?」


「あぁ・・馬鹿にしていた。出逢うまで・・

俺の中の、何かが確信した。理屈じゃない・・」


「一つ、訊きたいの。

彼女が苦しむなら・・あなたは、覚悟を貫ける?」


彼女が苦しむ?

どうして?契約すれば、彼女の心は俺のモノだろ?

緑色の目で、俺を好きになる。何故、苦しむ?


俺の疑問は、返事を出せないでいた。


「・・遠矢、彼女は強い・・そして、弱い。

覚えておいて・・彼女の苦しみに、呪いと闘うか・・独りで生きるか。

決断を迫られる時が必ず来る。必ず・・」


情報屋の彼女も、気配を消して俺から離れた。


契約が、美彩を苦しめる?

俺の覚悟・・一生を独りで生きる覚悟。そのつもりで生きてきた。


なのに、美彩の匂いが・・俺を導く。今は、欲しい・・その願いだけがある。

必ず幸せにする・・その自信が、君を苦しめるなんて知らずに・・




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