東山地区会/会議
遊びに飽き・・・。
龍牙たちは、地区会の会議へと参加するのであった・・・。
(東山地区会)
ここは、月光寺の本堂の隣にある東山地区会集会場・・・。木は黒みをおびた見た目から、そうとう昔に建てられているようだ。
木のにおいが鼻の奥をくすぐる・・・。
「ここが、集会場か・・・?なんか、木がみしみしいってるぞ!」
「まあ。100年くらい前から建てられてるし、良く雨が降る東山に木造建築なんてもんを建てたら、木が所々腐っちゃうよ!」
優香が簡単にまとめて語ってくれる。そして、座布団を一人一枚、床に敷いて、そこに座った。
「そういや、全然まだ来てないように思えるが・・・。」
俺の、突然の問いかけ・・・。来ている人は、20人程度・・・。俺達を合わせて、30人になるかならないかだ・・・。
「・・・・・・いつも、・・・・・・このくらい。」
「・・・・・・え?」
俺の隣にいた、天音ちゃんがか細い声でこたえてくれたが、俺は思わず聞き返す。きっと、無口な天音ちゃんが口を開いたのにびっくりしたのかな?
「そうやねー。今日は、うちらが来たことで人数増えてるもんやねー。」
「来る人は来て、来ない人は来ない・・・。それが、小さい頃からのお決まりだったけ・・・?」
りんとらんも語り出してくれる。
「・・・・・・一体何でだ?」
「「「・・・・・・。」」」
俺の一言で場の雰囲気は沈黙へと変わった。
多分、これも100年罰当たり関連か・・・。場の雰囲気の変化より、そう俺は察した。
「・・・・・・ところで、龍牙くん?まだ会議じゃないのに正座なんかして、足痺れませんか?」
沈黙を打ち破ったのが、桜ちゃんだった・・・。
「ん?あはは!大丈夫!大丈夫!俺、正座には慣れてるんだよ!」
びりびり!
「痛っ!!!」
ドタン!
この効果音を聞いて、だいたい分かるだろうが、一つ言いたい事がある!
「足の痺れには気をつけろよ!」
場の雰囲気は光へと変わり、笑い声が集会所に響くのであった・・・。
(会議1)
俺達が集会所に来て、何分経っただろうか?地区会議というのは未だに始まらない。いい加減、飽きてきたぞ。
「ふぁ~~~~~~~~!」
俺は、ワザとらしく、あくびをして見せる。
「ゴホン!」
集会所に来ている、おじさんの、せきばらい・・・。多分、俺に対してかな?
「龍ちゃん!ここに、おる人はみんなあんたの事、まだ知らんやで!」
「そうそう!そんな感じにあくびすることによって、第一印象が悪くなるよ!」
「悪い、悪い。そうだったな。でも、りんとらんは飽きないのか?」
すると、二人とも首を横に振る。そして、その隣の優香が少し笑みを浮かべた表情で言う。
「龍ちゃん。今から話すことを考えれば、集中できると思う。っと、いってもまだ龍ちゃんには分からないかな。」
「・・・・・・?」
言葉はでなかった。今から、話すことって?
ガラガラ!
「・・・・・・・・・!?」
ドアの開く音。集会所の人々全員は、ドアに顔を向ける・・・。
集会所の中は、さっきよりもはるかに静かになった。まるで、誰もいないかのように・・・・・・。
ドン!!
「ビクッ!?」
いきなり、後ろから、大きな音が鳴り響いた。思わず、声をあげてしまう・・・。
「地区会長及びにーーー、我らーー、東山村ーーー、村長、及びーーー、月光寺ーーー、寺主の 木下 信平 殿のーーー、来訪にーーーー、感謝のーーーー、意味をーーー、こめーー。」
ドンドン!ドン!
「「「はい!!」」」
パチン!!
全然、流れにのっていけない・・・。どうやら、大きな音の正体は、太鼓らしい・・・。そして、その太鼓と掛け声で、音頭をとり、最後に、みんなで一緒に一回拍手ということだな・・・。
俺、何も聞いてないんですけど・・・。
ドスドスドス。
「・・・・・・・・・ん?」
気がつくと、木下 信平という人は、集会所にあがり、自分の決められた席についた。
(うまく、顔が見えないな。視力落ちたかな?)
そう思い、少し目を細めて見る・・・。
すると、相手を席をまた立ち上がる。
そして、どんどん俺に近づいてきたのだ。
(会議2)
「お主が、ここ最近、ここに引っ越してきた者かの?」
「えっ・・・?あっと・・・。そうです。」
俺に近づいてきた、村長及び、地区会長、及び、ここの寺の・・・。いや、分かりやすく言うと、木下姉妹のおじいちゃんとも言える方が、今、俺の目の前にいる・・・。
何だか、ぞくぞくするな。
「ふむふむ、どれどれ、面をあげい。」
俺は、そう言われ、しぶしぶと顔を少しあげた・・・。
(逆光で、さっきから顔が見えないんだが・・・。)
「ふむふむ、そうか・・・。」
村長はそう言うと、優香の隣にいる桜ちゃんと天音ちゃんの方に顔を向けた。
「桜ーーーーー!天音ーーーーー!」
ビクッ!
「「は、はい・・・!」」
いきなりの大声・・・。思わず、こっちがびっくりだ・・・。
「お前らというやつは・・・。」
ゴクリ・・・。
俺は、村長の次の言葉を聞くのがこわかった。・・・・・・次にくる言葉が、俺の容姿、性格について言われると思ったからだ・・・。
俺は、思わず自然に顔をうつぶせた・・・。
「合格よ!!」
「えっ!!!!?」
思わず、俺が聞き返してしまった。耳が嘘をついたのかな?
「こんな、美少年を口説きおとすなんて、私の孫も隅に置けないわね。おほほほほ。」
「えっ!!!!?」
俺は2度目の聞き返しをしてしまう・・・。もはや、耳の方が正直なのかと思いこんでしまったからだ・・・。
そして、ついに、俺の耳が正直なのかを調べるためのタイミングがやってきた・・・。
雲で太陽が隠れたのである・・・。このおかげで、逆光はもうない・・・。
俺は、目の前にいる、村長の顔を見てみた・・・。
「・・・・・・・・・・・・。」
言葉は出ない・・・。何でかって?そんなの決まっている・・・。さっきの村長の口調を聞けば分かる・・・。そして、顔を見ても分かる。
えっ、何が言いたいかって?そんなの、見たら吐き気がするような、ちょつと、逝くような・・・。そんな、感じの顔にこの方はしてしまってるんですよ!自ら、化粧という方法で!!
「あのーーー?ちょっといいですかね?村長さんって、ニューハーフなんですかね?」
単刀直入に言ってみた。村長は、化粧でピンク色に染まっている顔を近づけて、にっこり笑顔でこたえてくれた。
「ニューハーフじゃないのよ、私は完全な乙女なのよん☆」
「・・・・・・。」
駄目だ・・・。こいつもう、手遅れだ。
そう、思う、中学2年の残暑、やがて会議が始まるのであった。
(会議3)
残夏、昼下がり・・・。
外は暑いが、集会所の中は木製のおかげか、夜みたいな涼しさだ・・・。
「・・・ですから、今年に入ってからの高齢者の割合が、前年に比べ、減ってきていると・・・。」
「確かに、去年に比べて減ってきている・・・。しかし、移民の数は増加している傾向にありまするぞ!」
あんなこんなで会議は、人口についての話し合いが始まっている・・・。
俺の隣の、りん、らん、そのほかにも、全員がメモ帳を開いて、メモっている・・・。
こいつら、日頃から持ち歩いているのか?と突っ込みたくなるが、ここは真面目にいかないと後が怖いだろうと思い、流してみる。
ざわざわ、ざわざわ・・・。
メモりながら、みんなは独り言のように何かをつぶやいている・・・。
こうやって見ると、何だかみんな、何かにとりつかれてるようだ・・・。
「皆の衆、静かになさい!人口構成については、話し合いは終わりにします。」
木下姉妹のおじいちゃんの声でおじさんもおばさんもりん、らん、優香、桜ちゃん、天音ちゃん・・・。みーーーんな、ペンとメモ用紙を置いた・・・。
「続いて、9月の本会議に入りたいと思います・・・。いいわね?」
ゴクリ・・・。
本会議・・・。今の俺には意味は分からなかった。だが、さっきまでの雰囲気とはまた違う雰囲気に一瞬にして変わったのは俺でさえ分かった・・・。
ドクドク・・・。ドクドク・・・。
心拍音が伝わってくる・・・。
「本会議入ります・・・。今年に入っての100年罰当たりの死者数は、10人です・・・。」
ドクン、ドクン。
今の言葉を聞いたとたん、心臓がいつもの倍以上に、動きだす・・・。
(会議4)
ざわざわ・・・・・・。
本会議・・・・・・。それは、俺の心と頭の隅っこに封印しておいた、東山100年罰当たりの話し合いだった・・・・・・。
木下祖父が言った、今年に入って10人死亡という言葉を聞いた集会所の人達は顔を見合わせて、驚いた表情で騒ぎ始める・・・。
「静かに!少しお黙りなさい!」
木下祖父の鋭く、華麗な声で集会所の中にまた沈黙がおとずれた・・・。
「今から、私が死因、その人の年齢、性別を言っていくから、必要なことはメモしておくこと。いいわね。」
ゴクリ・・・・・・。
思わず俺は生唾を飲み込んだ・・・。
「まず一人目・・・。死因は大量出血によるショック死・・・。年齢は40~50代、男性・・・。詳細としては、例年と同じように、目立った外傷もないのに出血だけ死亡・・・。この方は、警察官だったようね
。」
一人目の説明は終わり、二人目の説明に入ろうとしたときだ・・・。
ぶつぶつ・・・。ぶつぶつ・・・。
誰かの独り言が俺の耳に入ってくる・・・。
「・・・警察。・・・みろ!あた・・・達に協力・・・から、罰・・・たんだ。・・・と、安河原の神様が・・・ったんだよ!・・・・・・ヒヒヒヒ。」
途中、途中、言葉が聞き取れず、何を言ってるか分からなかった。
だが、警察と神様・・・。何か関係があるのかな・・・。
「以上で、すべてよ!」
木下祖父の声・・・。
なんだ、誰かの独り言を聞いているうちに終わってしまったのか・・・。
(もうちょっと、罰当たりについて知りたかったのにな・・・。)
そんなこんなで、窓のほうから外を眺めてみた・・・。
夕日が沈みこんでいく・・・。今日もこれで終わりか・・・。
きっと、明日もいい日になるんだろうなーー。
そんなことを思っている俺・・・。
会議は間もなく終了だ・・・。
(会議5)
カナカナカナカナ・・・。
夕方になり、ひぐらしがいっせいに鳴き始めた・・・。
昼間に比べて外の気温は、急激に下がり、肌寒さが増す・・・。
「「「ありがとうございました!!」」」
ガヤガヤガヤガヤ・・・。
一瞬にして変わった場の雰囲気・・・。集会所の中には賑やかさが増す。
「はーーー!」
気が抜けたのか、俺の口からは自然にため息が抜けていく・・・。
そんな俺の首裏に、冷たい感覚が伝わってきた・・・。
「ひっ!!!」
俺は思わず悲鳴をあげ、身を縮めた・・・。
「あはは!龍ちゃんお疲れ様!」
身を縮めている俺に声をかけたのは、優香だった。よく見たら冷えた缶ジュースを両手に一つずつ持っている・・・。
「お前なーーー!こんな寒いときにそれをしたら、いくら俺でもあの世逝きだぞ!!」
「へーーー!そりゃーー、面白い!!」
優香はそう言ってニヤリと笑う・・・。
「ほれ!!」
「・・・・・・ぎゃーーーー!」
やりやがった・・・。俺があんなこと言ったばかりに・・・。
そう、今俺のふところはものすごくひんやり冷たい・・・。あれーー?ここ南極だったけーーーー?今度からは、ちゃんと腹巻き用意しないとな・・・。
おや?おかしいなーー?南極なのに川が見える・・・。あそこのおじいさんは誰だーーー?俺を呼んでいるーーー!逝かないとなーーー!
ボフッ!!
「うおーーえ!」
そのとき、腹に強烈な痛み・・・。俺は我に帰った・・・。
「危なかったなーーー!ほんまに死んでまうとこやったやんけーーーーー!」
「龍ちゃんの、顔が完全に幸せそうだったよね(笑)!!」
いつの間にか、りんとらんも話しに参加していた・・・。
「優香が俺の服の中に冷えた缶ジュースなんか入れたからな。まったく、心筋梗塞になっちまうところだったし!」
「いやー!熱い、熱い心を持っている龍ちゃんの心を冷やしてあげようとしただけだよ!」
ニヤニヤしている・・・。こいつ、絶対わざとだ!違いない!
「ほーーら!あなた達!もう集会所閉めるわよ!早くお家に帰りなさい!」
その時、集会所の入り口で木下祖父が鍵を持って俺達に呼びかけた・・・。
「「「はーーーーい!」」」
そうして俺達は玄関へと急ぐ・・・。
「あ!海道くん!」
木下祖父が靴を履こうとした俺を呼び止めた・・・。
「これ、良かったら連絡してね☆」
一切れのメモ用紙・・・。それを渡され、開いて見た・・・。
そこには、丁寧に書かれた、電話番号とメアドが記されていた・・・。