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第9話 使命

予知能力のおかげで、タクミはユキからの説明を飛び越えて、さまざまなことを理解した。なによりも、自分の双肩には、今や、ヤクモ連合の命運がかかっていることも理解していた。迷いはなかった。やるしかないのだ。


家に帰って、ベッドに横たわった。そして天井の一点を見つめる。それは真剣に考え事をするときのタクミの癖だった。大陸にあるギの国は、ヤクモ連合の併合に動き出している。そのことは、さっきの予知で理解していた。ユキ、すなわちヤクモの国もその情報を捉えていた。

しかし、問題は、今、ギの国に動かれたら、ヤクモ連合など、なす術もなく併合されてしまうことはあきらかだということだ。必要なのは時間だった。その時間稼ぎのために、タクミは招集されたのだ。

 シンプルに言えば、大陸に渡って、ギの国の政府に、偽りの地図を渡すこと。やらねばならないことはそれだけだ。もう少し詳しく言えば、タクミの地図が正しいものだということを、ギの国の政府に信じ込ませなくてはならない。

それがある程度、効果があることを、タクミの予知能力は示していた。

偽りの地図を信じたギの国は、おそらく一年程度、ヤクモへの侵攻を遅らせることになる。その間に可能な限りの手を打つのだ。


タクミは自分が、ギの国に渡るところを想像してみた。それは頭の痛い問題だった。タクミの場合、正式に認められた使節ではないから、密入国ということになる。

舟を調達しなくてはならない。

ギの国との海峡は、流れが早く、小さな舟で渡れるような海ではない。少なくとも、中型以上の漁船、十人以上の漕ぎ手は必要だろう。

 タクミの脳裏にふるさとの景色が浮かんだ。ふるさとを離れてから、もう十年以上の月日が経つ。あの場所なら、船がたくさんある。八歳のタクミには何人か友達もいた。今はもう立派な漁師になっていることだろう。

一瞬、彼らに頼むことも頭をよぎったが、ふるさとをすてたタクミにとって、それはかなりハードルの高い選択に思えた。できれば、別の方法を考えたい。


「タクミいる?」

ポチが入ってきた。相変わらず、遠慮というものがない。鍵をかけなきゃな。タクミはそんなことを考えた。

「考え事?」

タクミが、ベッドに横たわっている姿を見て、ポチが言った。ポチは、タクミが考え事をするときに、ベッドに横たわる癖を知っていた。思えば、長いつきあいになる。タクミはそっと、ため息をついた。


「ポチの国には船がいっぱいあるよね」

「そりゃ、まあ、一応海洋民族ってことになってるからね」

「一艘、クルーごとレンタルできないかな。ギの国にこっそり渡りたいんだ」

「ヤクモの国と、クナ国が対立中ということをお忘れかな」

「だからさあ、ポチが借りて僕も乗せてもらうとか」

「僕を王族かなんかだと思ってるわけ? そんな権力も金もあるわけないじゃん」

タクミは、金ならあるんだけどな、と、一瞬言いかけたが、口に出すのをやめた。実際、ユキからはたっぷりとお金をもらっていたが、たぶん、クナ国から船を調達するのは無理だろう。


「僕だったら海賊に頼むけどね」

ポチが言った。確かに、どこの国にも所属しない海賊がいるという噂を聞いたことがある。でも、当たり前のことだが、海賊の連絡先など知る由もなかった。

「ポチは、海賊に知り合いなんているの?」

「知り合いはいないけど、連絡とる事は可能だと思うよ」

「どうやって?」

「もちろん、予知能力を使うんだよ。次に海賊が襲う場所は、予知できるから、先まわりするんだ。そこで、会えるよ」

「殺されないかな」

「まったく、君は本当に術者なの?殺されない未来を選択すればいいんだよ」


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