第7話 クナ国の刺客
「それじゃあ、お前たちは、八才の頃からずうっと、けんかを続けているわけか」
タクミの話を聞き終えて、サトシが言った。サトシがうんざりとしているのがわかる。
「よく、死ななかったな」
「そんなに激しい戦いじゃないんだ。戦いって言っても、一方的に向こうから仕掛けてくるだけだしね」
「でも、矢で射ってくるわけだろ。下手すりゃ死ぬよな」
「そうでもないんだ。僕に、矢の攻撃が効かないのを、わかってやってるんだよ。ポチは。いままでも、落とし穴を掘るとか、意外な場所で待ち伏せして、水をかけるとか、そんな攻撃が主だった」
実際、これまで、十年以上もの間、ポチは、タクミの後をつけて、さまざまな攻撃をしかけてきたが、どれも、致命的なものではなく、どちらかというと、子供のいたずらに近いものだった。
その時だった。一人の男が部屋に入ってきた。ノックもしない。
「こんちは。タクミいる?」
サトシにとっては初めてあう人間だったが、話し方から考えて、タクミの友人のようであることはわかった。それにしても、タクミに自分以外の友達がいることは、サトシにとっては意外だった。
「ポチ。お前いい加減にしろよ。死んだらどうするんだ」
タクミの言葉に、サトシが反応した。自分の刀の柄に手をかける。こいつが、ポチ。クナ国の刺客。
「待て待て待て、大丈夫だから」
サトシの殺気を感じて、あわてて、タクミが制した。
「どういうことだ」
サトシは剣を抜くのをやめて、ポチを見つめた。確かに、ポチには殺気がない。
十年以上もけんかを続けているうちに、ポチはすっかりやる気を失っていた。というより最初からタクミを殺そうという強い意志があったわけではなかった。あったのは、同じ妖術を使うものとして、負けたくないという対抗心だけだったのだ。
けんかを始めてすぐに、ポチは自分の中にあるのは、単なるライバル心だけであり、それは、一種の友情であることに気づいた。それからは、攻撃というよりは、相手をどっきりさせるだけの、幼稚ないたずらになっていた。
「でも、矢はまずいだろ」
サトシは言った。
「お互いに、どこまでは冗談で済むかわかってやってるんだ。ようするに・・・・」
「茶番ということか」
サトシの言った茶番という言葉に、ポチは少々不満そうだった。
「僕はいつだって、まじめだよ。僕の妖術の方が強いってことを証明したいんだ」
「わかった、わかった。もう、お前の勝ちでいいから」
サトシはあきれていた。タクミとポチの間にあるのは、敵対心というよりも、友情に他ならない。
「お前ら、こんど王宮の前でやったら、逮捕する」
サトシはそう言って、外へ出て行った。




