第5話 ユキ
「ちょっとお、大丈夫? 刺さってんじゃん」
タクミの後ろから声をかける女性がいた。一連の事件を目撃していたらしい。タクミはゆっくりと目を開けて、後ろを振り返った。
女性と目があった。女性というより、どちらかと言えば少女という方に近い。
予知はまだ続いていた。
しばらく時間をおいて、第二の攻撃はないことを確認すると、左の腕に刺さった矢を引き抜いた。
「大丈夫、大丈夫。ほら、こんな感じ」
タクミは少女に、袖をまくって、腕を見せた。袖の下には、籠手がかくされており、その籠手に、ちょっとした傷ができていた。矢がささった場所だ。
「それなに。鎧なの。あなた、何者?」
「しがない占星術師でございます」
タクミはちょっとおどけて言ってみた。大事にはしたくない。無事だということを懸命にアピールした。
「私が知っている占星術師は、もっと文系よ。こんな武闘派、見たことないけど」
少女はそう言って笑った。本当は、占星術師を見るのは初めてだった。
「占星術をやっているとさ、自分が攻撃されるのが見えてしまうことがあるんだよ。平和な世の中になってからは、ほとんど今みたいな攻撃はないけどね。攻撃じゃなくても、あばれ牛に刺されるところが事前にみえちゃったりして。そんなときに、自分を守れるように、ほら、ここにも、ここにも」
タクミは、腕や足を少女に見せた。タクミの服の下には、さまざまな盾がめだたないように仕込まれていた。
「でも、顔や首を狙われたらだめじゃない」
少女は屈託なくそう言った。狙撃現場を目の当たりにして、こんなに冷静でいられるものだろうか。タクミは感心すると同時に、ちょっとだけ異質なにおいをかぎ取った。
「それも大丈夫。相手が射る前に、予知できるから、顔は手でガードすれば間に合う」
「すごおい。すごいけど、それ、もはや占星術でもなんでもないわよ。完全に妖術じゃん」
「はははは」
タクミは笑ってごまかした。こんな少女に見抜かれてしまうとは。自分の不用心さにあきれてしまった。
「ユキって言うの。あなたは」
「タクミ」




