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第3話 幼少期

幼いころ、タクミは自由奔放に予言をして、人々を驚かしていた。

そうなのだ。

今は、占星術師ということになっているが、そこには偽りがあった。タクミの能力は妖術に近いものであり、天気だけではなく、全ての未来を見通す力を持っていた。

 タクミの父はそのことを心配していた。

 妖術を使うということは両刃の剣だ。あるものは王に仕えたが、あるものは追放され、最悪の場合、処刑される場合もあった。どう転ぶかは、本人の人間性にはいっさい関係ない。ただ、運が良い者だけが生き残るというのが現実だった。


タクミが七才になったとき、突然タクミの頭の中に大きなメロディーが流れた。それは今までとは違う、初めて明確に感じる予知の予兆であり、タクミの心を不安でかき乱した。そして、そのあとには、頭のなかに大地が揺れ、ばたばたと建物が倒れる映像が見えた。

「お父さん、地震だ、地震が来る」

予言ははずれることはなかった。タクミのおかげで多くの人の命が助かり、タクミは英雄となったかというとそうではなかった。その後に村を襲った津波を、タクミは予知することができなかった。結果として、多くの人々が亡くなった。


「お前が気にすることはない」

父は、タクミに言った。当然のことながら、タクミにはなんの責任もないことだった。

「タクミの野郎。中途半端な予言なんかしやがって。あいつがちゃんと津波のことを話していれば、息子は死なずにすんだんだ」

村人の中には、そう言って、露骨にタクミを責める者もいた。

七才のタクミは、かなり大人びた子供だった。もしかしたら、予知能力などという特殊能力を持つせいなのかもしれない。そんなタクミは、津波を予知できなかった自分を責め、自分の殻に閉じこもった。いっそのこと、予知能力などなければよい、真剣にそう思って、人との接触を断った。


「タクミ、お前のせいではない」

父は、ひきこもる息子に何度も言った。

「お前の妖術はこのままではお前を幸せにすることはないだろう。でも、その力を否定してはいけない。神に与えられた力を否定することなど、できようはずもない。いつかおまえの力が人々の役にたつ日がくるだろう。それまで、つらくても、悲しくても、自分を信じて生きていくのだ」

父はそう言って、タクミを慰めたが、タクミの凍った心が融けることはなく、数か月が過ぎた。


ある日、父は言った。

「おそらくこれから先も、お前の妖術は、お前を苦しめるだろう。人々はお前の力を恐れ、お前だけが力を持っていることに不満を持つ者もでてくるにちがいない。ならば。お前は、占星術師として生きていけ。特殊な力は修行によって身に着けたことにすればよい。そこには、普通の学者としての人生が待っているはずだ」

父の言葉は、タクミの心に大きく響いた。占星術師として生きてゆく。それは世間を欺くことになる。でも、人々の心が、そのちょっとした偽りで、安心を得られるのならば、それは、神の与えたさだめに逆らうものではないはずだ。

数か月ぶりに家から出たタクミを見た人は、最初それがタクミであることに気づかなかった。どう見ても、七、八才の少年には見えなかった。もともと、同年代の誰よりも背は高かったが、今となっては、八才の幼さは消え、強烈なオーラを放っているのを誰もが無意識のうちに感じとった。


そして。

タクミの家族は、その日のうちに消えた。

村を出て、誰もタクミのことを知らない世界で暮らそうとしたのだ。しばらく旅をしたのちに、現在の村にたどり着き定住した。タクミは、自分の中の本当の能力を隠し、若き占星術師として新たな村に受け入れられた。

タクミは、自分の能力を天気を予測することだけに使った。それが、もっとも村人の役にたつことだと、気づいた結果だった。

タクミの天気予報は、外れることがなく、農業を生業としている村人たちは、タクミの力を恐れることなく認め、タクミのことを慕った。

タクミは、幸せだった。

やがて成人すると、その国の風習に従い、タクミは一人暮らしを始めた。もともと、それほど社交的ではなかったタクミは、一人暮らしを始めても、少しも寂しさを感じなかったし、不便に思うこともなにもなかった。そして、一人で過ごす時間が長くなった結果、タクミの予知能力は、より研ぎ澄まされたものになっていった。


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