第二十五話 シロ
「俺は、クナ国の出身だ。みんなわかるよな。シロって名前の男はたいてい、クナ国出身だ」
シロ船長が大声で話始めた。タクミ達だけでなく、全てのクルーに向かって話しているようだ。
「おれはクナ国の兵士だったんだ。当時、クナ国はお前たちの国、つまり、ヤクモの国と激しい戦闘状態にあった。今もまだ、停戦中とは言え、敵対していることには変わりはないがな」
シロ船長の話は続く。
「毎日が戦闘だった。しかし、戦況は俺たちに有利だった。あと、一歩で、ヤクモの国の王宮にたどり着けるはずだった。しかし、そこで、俺たちは、大きなミスに気付いた。全ては、ヤクモ軍が仕組んだ罠だったんだ。一網打尽だ。仲間は全員捕らえられた」
「捕らえられた? 殺されなかったの?」
ポチの疑問はもっともだ。
「そう。俺たちは殺されなかった」
捕縛されたシロ達の前に現れた、誰よりも小柄な男は、ヤクモ軍のリーダーであると名乗った。
彼は、シロ達に言った。
「もう、やめませんか」
男はそう言って、シロ達全員の縄を解いた。シロは、自分の目と耳を疑った。やめるもなにも、ここでシロ達全員を殺せばヤクモの勝ちで戦争は終わったのだ。しかし、その男は、勝利を捨て、自ら和解を申し入れたのだった。
「戦争は引き分けということになって、俺以外は、みんな解放されて国に帰った」
「俺以外はって、シロ船長は捕まったってこと」
「いや。俺は自ら、そこに残った。この小柄なリーダに興味を持ったんだ。こいつがどんな男なのか、知りたくなった。っていうか、友達になりたかったんだ」
そういったシロは照れ臭そうに鼻をかいた。
「その小柄な男ってのが、今のヤクモの国王だ」
「え」
タクミは声をあげたが、他は誰も驚いていなかった。みんな知っていたようだ。
「で、その国王の息子が、そこにいる、サトシという男だ」
「えええ」
またもや、声をあげたのは、タクミだけだった。
「やっぱり驚いた」
ポチが嬉しそうに笑っている。
「ヤクモの国王とオレは今でもマブダチだ。お互いの窮地には、黙っていても駆けつける。今回は、息子からの要請だったけどな。同じことさ」
「一応、言っておくが、オレは王国を継ぐ気はない」
サトシはそう言ったが、タクミは思った。確か、現国王には、息子はいないことになっていたはずだ。もし、本当に、サトシが国王の息子なら、皇位継承権は一位となってもおかしくない。
「隠し子みたいなもんだ。今のことろ、継承権はないよ」
と、いうわけで、サトシからの要請という形ではあったが、シロ船長が協力して、タクミのための救助隊が結成された。
「指揮は僕がとったんだよねえ」
ポチが、ねっとりとした口調で言った。恩着せがましい。タクミはちょっといらついたが、今回は感謝するしかない。
「あ、ありがとう。感謝している」
「まあ、これにて作戦終了でいいんだよな。ポチ」
シロ船長が言った。いつの間にか、シロ船長とポチも仲良くなっている。よく考えたら、二人は同じクナ国出身だった。友達というには、年が離れすぎているような気もするが、シロ船長には、そんなことを気にしない、おおらかさがある。
こうして、タクミは故郷に帰った。
ユキが想定した通りに、偽物の地図を受け取ったギの国は、一瞬躊躇し、ヤクモへの攻撃を延期した。ユキはその一瞬のチャンスを逃すことなく、戦争回避のために、交渉を始めた。
ユキがどのような交渉をしたのかは、極秘ということになっているためタクミには知らされていない。しかし、ある日ポチは言った。
「たぶん、ユキは、なにか妖術を持っている」
タクミも、それには異論はなかった。




