第二十二話 ポチ
「見えた!」
タクミの家で、タクミのベッドに横になっていたポチは、突然、自分の頭に浮かんだ映像に驚いて飛び上がった。それは、久しぶりに見る、タクミに関する予知の映像だった。
そして、それは、タクミが記憶を取り戻したのと、時を同じくしていたが、現段階では、そのことをポチは気づく術がなかった。
「生きてたかあ」
思わず、ポチは涙ぐんでいた。
しかし、いつもに比べて、予知の内容があいまいなことに気づいた。
「これじゃ、あいつが今いる場所がわからないな」
こんな予知は初めてだった。未来が霧に包まれたようにはっきりしない。
しかし、なにもしなければ、あと十日あまりで、タクミは逮捕される。
これが今回、ポチが受け取った未来からのメッセージだった。少々気に食わないが、今回は、この予知をはずすために、ポチは動かなくてはならない。
「まあ、仕方ないな。タクミを助けられるのは俺だけみたいだし」
ポチの予知と、タクミの予知は根本的に違うものだった。
例えば、ポチが、テストで百点を取る、という予知をしたとする。これは、この後、ポチが何もしなくても百点を取れるのかというとそうではない。この後、ポチは、自分の予知が正しかったことを証明するために、懸命に勉強しなくてはならない。自分の努力で、予知を勝ち取るのだ。それが、ポチの能力の特徴的な面であった。
同じように、零点を取る予知をする場合もある。
その場合は、このあと、懸命に努力すれば、自分の予知をはずすことができる。予知を回避することが可能なのだ。今回のタクミのケースがこれに相当する。ポチの動き次第で、タクミの運命を変えることができる。ポチは、今までの経験からそれを理解していた。
「僕の能力は本当に予知と言えるのだろうか」
それは、幼いポチの心に芽生えた疑問だった。しかし、今では、それを考えないようにしている。予知だろうが願望だろうが、大きな違いはない。自分の気に入る未来を手に入れる。考えるのはそれだけだ。




