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第二十一話 カノープス

数時間ののち。

タクミは、無事に、ヒメの別荘にたどり着いていた。食料は十日分ある。しかし、おそらくそれほど悠長な話ではないだろう。追っ手がここを突き止めるのに、十日はかかるまい。自分には、長くて十日の猶予があるに過ぎない。運が悪ければ、明日にも、追っ手に捕まることになるだろう。

窓の外には、海が広がっている。日が暮れると、満天の星空がその上に広がった。

「まじめに、占星術を学んできてよかったな」

タクミは思った。おかげで、星座の位置から、今自分のいる場所が特定できそうだった。タクミは、自分の予知能力を隠すために占星術を隠れ蓑に使ってきたが、ちゃんと、本格的に占星術を極めていた。予知能力がなくなってしまった今、自分が頼れるのは、占星術以外にはない。


真夜中になると、南の海面すれすれに、明るい星が登ってきた。

「カノープスだ」

カノープスは、南の空の低い位置にある星である。タクミの住んでいたヤクモの国からは見ることはできない。タクミも知識としては知っていたが、それを見るのは初めてだった。

「まずいな、これは」

タクミは思った。自分が想像していた場所より、かなり、南の海岸に流れ着いたらしい。

仮に、ユキやサトシが救援隊を派遣してくれたとしても、ここまで、南に流されているとは思わないだろう。おそらく救助隊に期待はできまい。

「ポチなら、わかるかな」

海賊の襲撃ポイントを事前に予知したポチなら、今、自分のいる場所がわかるかもしれない。タクミは思った。

「無理か」

やはり、ポチにも場所は特定できまい。なぜなら、タクミ自身が、自分のいる場所をわかっていないのだ。ポチの予知能力だって、完璧じゃない。

あいかわらず、タクミの予知能力は復活しない。そんな中で、なんとか、帰還する方法をタクミは考え続けた。



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