20/26
第二十話 追跡
タクミがヒメの元を去ってすぐに、数人の武装した男たちが村に現れた。
彼らはまっすぐに、ヒメの診療所に向かった。彼らの目的が、タクミを捕らえることであることはあきらかだった。
「漂流者がここに運び込まれたそうだが、我々はその者に用がある」
リーダーと思われる若者が高圧的に言った。しかし、齢九十を超えるヒメにはその程度のはったりは通用しない。
「お疲れ様です。しかし、その者は今朝方、いなくなりました。記憶喪失だったようなので、錯乱して飛び出したのでしょう。おそらく、もう帰って来ますまい。もう、お役目は済んだはず、お茶でもいかがかな」
穏やかだが、強い意志を持った言葉に、男たちは怯んだ。
「いや、し、しかし、一応確認しなくては。診察室を見せてもらってもよろしいですか」
先ほどの高圧的な態度とは違い、完全にヒメのペースに飲まれている。
「どうぞ、どうぞ。器具には勝手に触らぬよう」
その後、男たちは、適当に見回りをして帰って行った。
「この後は、あの男が自力でなんとかするだろう」
ヒメは、自分が完全にタクミの味方になっていることに多少驚きながら、彼の無事を祈らずにはいられなかった。




