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第十七話 ユキとサトシ

ユキは、自分の机の上に置かれた数枚の紙を眺めていた。今、それを読み終えたところだった。ユキはまだ二十代後半という若さではあるが、王宮内に、個室を与えられていた。諜報部に属し、階級としてはそれほど高くなかったが、王からの信頼は厚く特別扱いをされている。目の前の紙には、タクミがギの国へ渡ったらしいことが書かれていた。しかし、この報告書にユキは不満を持っていた。

「らしいって、どういうことよ」

報告書の内容は、タクミの行方がわからなくなっていることを示唆していた。


コンコン。扉をたたく音がした。

「入って」

ユキがそう言う前に、扉は開かれていた。サトシである。

「お呼びでしょうか」

サトシはユキの机の前に立った。階級はユキの方がかなり上であるため、サトシはしきたり通りに、まず敬礼をした。しきたり通りにユキも敬礼を返す。

「タクミ君の行方を探ってほしいの」

「残念ながら私には、その方法が思いつきませんが・・・」

嘘をついた。サトシはもちろん、タクミの能力のことを知っている。

でも、それは秘密である。

公務といえども、そのことをばらすつもりはサトシにはない。友情とか、そういう話ではなく、自分のプライドの問題だった。ここで友人を裏切るくらいならば、死んだほうがましだ。サトシはそう考えていた。

「予知能力のこともポチ君のこともみんな知ってるわ。隠さないで話して」

サトシは驚いた。そこまでバレているとは。改めて、国の諜報機関の恐ろしさを知った。ここまで知られているのならば、隠すことは何もない。

「タクミは、海賊と交渉して舟に乗り、一人でギの国に向かいました。海賊船に乗ったところまでは確認できていますが、その後の行動は不明です。ギに上陸できたのかもわかりません」

「警備部門もなかなかやるじゃない」

「一応、王直属ですから」

「でも、そこまでは私もつかんでいるわ。ポチ君はどうなの。彼の能力なら、タクミ君の行方はわかるでしょう」

「ポチは今、タクミの家にいますが、タクミの行方はわからないと言っています」

「タクミ君の未来が見えないってこと?まさか」

「死んではいませんよ」

「どうしてそう言い切れるの」

「もし、タクミが死ねば、ポチはそれを予知できたはず。ポチが予知できないということは、タクミは、死んだのではなく。何も考えていないのだと思います」

「死ぬ以上に、何も考えない状態というのが、私には想像できないのだけれど」

「眠り続けているか、記憶を失っているか」

それは、サトシの想像だったが、結果的には当たっていた。しかし、この段階で、本当のことを知る術はなかった。

ユキを目の前にして、サトシは不思議な感情を覚えていた。ユキにとっては、タクミはただの駒、死のうが生きようが関係なし、サトシはそう考えていたのだが、目の前のユキは明らかに動揺している。本気でタクミのことを心配しているのだ。諜報部にもこんな人間がいるのか、サトシは少しだけ温かい気持ちになった。



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