表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/26

第十六話 カスミ

カスミは、ヒメの周りで遊ぶのが大好きだった。子供のいなかったヒメも、カスミをかわいがり、いつの間にか、カスミは幼いながらもヒメの仕事を手伝うようになっていた。そんなとき、海岸に謎の男が流れ着いた。


「ねえ、本当になにも覚えていないの」

幼いカスミには、遠慮というものがない。

「全く」

男は言った。

「でも、言葉はしゃべれるのよね」

「確かに。不思議なことに言葉はしゃべれる」

「この国はね。ギの国だけど、言葉はヤクモの国と同じなんだって、おばあちゃんは言ってたわ。歴史的にそうなんですって」

舌足らずな口調で、カスミはどこで覚えたのだ難しい言葉を使った。

「そっか。僕はヤクモの国から来たんだね、きっと」

「おばあちゃんは、あなたはスパイだって言ってたけど・・・」

「なるほど」

「でも、怖くないわ」

「よかった。カスミちゃんに嫌われたくないからね」


カスミと謎の男が仲良く話すのを、ヒメはほほえましく見ていた。

村人達は、海岸に流れ着いた男、しかも服の下に鎧を隠しているような男をうさん臭く思い、誰も近づこうとしなかったが、カスミは、本能的に、男が悪い人間ではないことを感じとっているようだった。

同じように、ヒメも、謎の男に対して、悪意を感じてはいなかった。記憶とともに悪意を失っているだけで、本当は、悪人かもしれない。そう思ったこともあるが、今は、そうは考えていない。おそらくは記憶を失っている今こそが、彼の本性なのだと思うようになった。


「ねえ。私、あなたの記憶が戻るようにお祈りしてあげるわ」

「ありがとう」

「私のお祈りはすごいのよ。どんな怪我でもなおしちゃうの」

「それは、すごいな。それじゃ、お願いしようかな」


カスミは、目を閉じた。つられて、男も目を閉じたが、すぐに目を開いた。カスミがどんな顔で、おまじないをつぶやくのか、見たいと思ったのだ。それは、どんなにか、かわいらしい姿だろう。

カスミは、その小さな右手を、男の額に重ねた。触れてはいない。額に触れるか触れないかギリギリの所に手をかざしていた。目を閉じたままのカスミがどうしてそんなことができるのか、男はちょっと不思議に思った。 その時だ。カスミの手から、ぼんやりとした、白い光が発せられた。いや、正確には、光が発せられているように男に感じられた。その直後、男の頭の中に、さまざまな映像が浮かび上がった。ポチと一緒に海賊と交渉し、最後は海賊に樽につめられた。タクミは、全てを思い出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ