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第十五話 ヒメ

ヒメは久しぶりに自分の齢を数えて愕然とした。去年、九十歳を迎えている。つまり、今年の誕生日で九十一才ということだ。ギの国の南端に位置する小さな村で、医者として過ごして、すでに数十年が経とうとしていた。

医術は、幼いころ父から学んだ。

ヒメの父親となるはずの男は、十代で村を飛び出し、三十才半ばで、生まれ故郷のこの村に医師として戻ってきた。まもなく、村の娘、すなわちヒメの母と結婚して、ヒメは生まれた。

ヒメは幼い頃から、父の医療に興味を持ち、父を手伝うようになった。父は、最初はかわいい娘がちょろちょろと自分の周りをうろつき、必死に手伝おうとする姿をほほえましく思っているだけだったが、やがて、ヒメの才能に驚愕するようになる。

「これは、もしかしたら、偉大なる医者になるのではないか」

そう思ってからの父は、幼いヒメに容赦なく、自分の持つ医術を教え込んだ。こうしてヒメが、十五才を迎えるころには、知識、技術ともに父をも凌駕するようになっていた。さらに、医者としてのヒメは、父にはない素質を持っていた。

ヒメはやさしい女性だった。常に患者と寄り添うその姿に人々は皆、癒された。一流の腕を持つ、やさしい医者。村人は彼女を慕い、彼女に敬意を表した。


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