第十四話 ポチ
ポチは、タクミの家のベッドに横になって、険しい顔をしていた。タクミが留守の間、ポチはタクミの家に住むことになっていた。
「きれいに使ってくれよな」
そう言って、タクミも了承していた。
ポチとタクミは、共に予知という能力を持った妖術使いだったが、二人の能力には大きな違いがあった。
タクミの場合、自分の思い通りに予知をコントロールすることはできない。タクミにとって予知とは、勝手に自分の頭に訪れる現象であり、自分が見たい予知を見られるわけではなかった。
ポチは違う。
ポチの場合、予知とは自分で見に行くものだった。例えば、タクミの明日の昼頃の様子を見ようと思えば、ある程度は見ることができた。もちろん、全てではない。特に自分に関する予知の場合はほとんどはずれていた。自分のことを予知した場合、自分がそれを変更できる。その矛盾が予知の精度を下げているらしい。同じ理由で、予知能力者であるタクミの未来も、通常よりは見るのが難しい。
「それにしても」
ポチは気に入らなかった。
しばらく前から、タクミに関する予知が全くできなくなった。
そんなことは今までは一度もなかった。
「タクミは行ったのか?」
突然声をかけられて、ポチは非常に驚いた。声の主はサトシだった。
「行ったってなにが」
ポチはとぼけた。サトシが言っているのが、タクミがギの国へ行ったのか、という意味であることはもちろんわかっていた。
「とぼけるなよ。お前たちが海賊を脅したこともわかっているんだ」
「別にとぼけたわけじゃないさ」
ポチは不機嫌だった。
どうしてもタクミの未来が見えない。
「タクミは無事なんだな」
「そんなことわかるわけないじゃん」
「お得意の妖術はどうした。海賊のスケジュールを当てたお前ならタクミの未来を見ることなんか簡単だろ」
「・・・・」
「見えないのか、タクミの未来」
「ねえ。ちょっと聞いてもいいかな。タクミの未来が昨日から見えないんだ。どういうことだと思う」
「・・・死んだとか」
「あ、馬鹿、お前、それ、言うの? お前それ、言っちゃだめなやつだろう。親友じゃないのか、お前たちは」
「お前が言って欲しそうだったから言ったまでだ」
ポチはその後、口を聴かなくなった。
もし、タクミが死んでいたら。
そのことはポチの頭の中にもちろん存在していた。
しかし、懸命に気づかないふりをしていたのだ。本当にタクミが死んでいたら、確かに、タクミの未来は予知することができない。




