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第十一話 海へ

一時間後、タクミは、海賊船に乗っていた。言葉通り、ポチは乗船せずに帰っていった。

シロはタクミの言ったことを完全に信じたわけではなかったが、自分達に情報を提供するというこの男に興味を持った。それに、武装もせずに我々の船に乗り込んでくるという度胸にも感銘を受けていた。

「お前、俺たちが怖くないのか」

「ポチと僕は予知という妖術を使います。今回、ポチは、僕が殺されることなく、ギの国へ運ばれることを予知していますから」

「まあ、いい。この船は、既に、ギの国へ向かっている。明日の朝には、到着だ。お前はその間に、情報を提供するというのが約束だ」

「わかりました」


「あなたがたは、捕まります。次の襲撃場所はばれてます。だからやめた方がいい」

タクミの伝えた情報というのは、次の襲撃先で、シロ達は捕まる、というものだった。シロは、その予言を信じるべきか、信じざるべきか迷った。

「確かに、お前の予知は本物だと思うが、なぜ、俺たちの襲撃計画が、ばれているのだ」

「ああ、それについては申し訳ないとは思うんですが、さっき逃がした役人に、一か月分のあなたの襲撃計画は教えちゃいましたから」

「・・・・」

シロは唖然とした。よくもまあぬけぬけとしゃべるものだと感心すらしていた。

タクミはしゃべり続けた。

「さっきの役人。確かに悪いやつですけど、それなりに、地位の高い人物です。それに執念深い。僕たちの予言通りに、今夜襲撃があったことで、僕の言葉を信じたでしょう。今度は、あなたへの報復を計画しているはずです。つまり、一か月の間は、あなた方は、常に先回りをされることになる」

「・・・・」

シロは言葉がでなかった。

「でも、安心してください。あなたにしゃべってしまったことで、予知は効力を失っている可能性が高い。でも、万全を期すためには、一か月間は襲撃を自重した方がいい。そうすれば、予知は完全にはずれます」

「俺たちに選択の余地はないということか。まあいい。お前の度胸、気に入った。お前に踊らされているようで、少々気に入らないが、この件は承知した」


さっきまで天空に輝いていた月がだいぶ傾いた。夜明けが近い。甲板に立ってはるか水平線を眺めていたタクミの目に、陸地の影が見え始めた。

「タクミ。そろそろギの国に到着する。下船の準備はできているか」

「はい。これしか持っていませんので」

タクミは、自分の背中に張り付いているリュックサックを見せた。

「よろしい。それでは、これから、お前をギの国に届ける。しかし、やり方は、海賊流だ。お前に、大切な樽を一つやろう。これに入れ」

「ちょっと、ちょっと。ちゃんと上陸しないの?」

「なめるなよ。ここまで、連れてきてやったんだ、あとは自力でなんとかしろ。安心しろ、樽はお前ごと海に捨ててやる。俺の経験からすると、無事にギの国に到着する可能性は、二分の一だ。さらばだ、ヤクモの国のタクミ。度胸のある術者よ。神に祈るがよい」

シロは容赦なく、タクミを樽に詰めると、蓋をして、海に投げ捨てた。樽は、沈まずに、海面を漂っていた。

樽の中で、しばらくの間、脱出を試みていたタクミだったが、内側から蓋を開けることはできなかった。やがて、大きな海流にぶつかり、激しく樽が回転したときに、タクミは頭を打ち、気を失った。


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