表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

「死後裁きにあう」

掲載日:2025/12/10

この山の標高は、65,535mあると言われて居る


富士山と比較すると軽く17倍以上であり、そのため麓が砂漠であるにも関わらず、山肌から生命を拒む冷たい白色が消えた事は一度も無い



僕はその山頂に在る、洞穴に住んで居る


当然、人間では無い

元は人間だったとは思うが、今は違う


僕自身は、もう躰が朽ちてから相当な月日が経って居る

それでも存在し続ける理由は、この山頂には恋人の死体が在るからだ



元々、死ぬつもりの旅だった


僕と彼には行ける場所など無かったから、眠るように死ねる場所を探して、結果、雪山という事になった


実際には僕たちは、麓からさほど離れていない場所で死亡している

この場所まで移動したのは、僕の心が躰を離れて少し経ってからだ


少しずつではあるが、僕の精神は山と繋がれる様になり始めて居る


完全に繋がりきった時、僕の精神は摩滅して死ぬのかも知れない

しかし、悔いてどうなるものでも無い

それより、それさえ踏まえ僕は支度を行っていた


君を綺麗な姿のまま、永遠に弔う為の支度だ



絶え間ない吹雪の合間に、大勢の足音が聞こえた


また人間が来たのだろう


人間達は、僕が山頂へ人が来るのを拒む事だけは知っている

もしかすれば、僕が存在している事すら解っていない可能性はあるが、少なくとも『何らかの意志が山頂へ人が踏み入るのを拒んでいる』事だけは把握して居る


生きたまま下山した者達から、いつしか噂が立った

『山頂の財宝』の噂だ


以来、これ程までに生命を拒む場所に、それでも挑む者は後を絶たない



───また、つるはしか何かで入口を壊しに来たのだろう


僕は洞穴の入口を隙間無く覆う氷に意識を通わせると、吹雪を纏わせて厚さを増やそうとした


瞬間

灼ける様な熱さに、精神が恐慌を起こす

人間達はこれまでの失敗を元に、今回は爆薬を持ち込んでいた様だった


僕が氷の厚さを増す程に、人間は新しく爆薬を燃やし始める

氷と意識が繋がっている為、痛みは現実のものとして襲い掛かってくる


精神の背中に相当する部分に、言葉では表現出来ない様な痛みが在った

人間の躰なら僕は今頃、白眼を剥いて叫び出す程の苦痛を受けている事は間違い無い



それでも、既に手は尽くして居る


僕は『助かりますように』と願った

しかし、助かる方法がどうしても思い付かなかった



─────



「お母さん、雪!」



村落に朝が来た


晴れ渡った砂漠の空に、雪の破片が舞っている

はしゃぐ子供を抱き上げると、母親は頭を撫でた



「あれはね」


風花かざはなと呼ぶんだよ」



「風花?」


「そう」



「すごく綺麗!」


「そうだね」


村人の中の早起きな者達が、ぞろぞろと家から出て空を見る



「今日も良い事ありそうだな!」


誰かが言った

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ