怪談 甘い粉薬
甘い粉薬はブラックコーヒーで飲むとちょうどいい。もちろん病院の先生には内緒。
「調子はどう?」
「悪いよ、昨日と同じ」
隣にぶら下がる死体が私に話しかける。私自身は……さすがに死んでるかな? もう五日もぶら下がってるし。
「僕は今までで一番調子がいいよ」
「それはよかったね」
隣の彼はこれで、何回目の首吊りなのだろう。ともあれ、これが最後なのは間違いない。
そして私は初めてだ。人生初の首吊りで、できちゃったってわけ。
「君も調子よくなるといいね」
「ありがとう」
今日も夜が来る。ここは空気がきれいだから星空もきれいだろう。でも、私たちは見ることができない。うつむいて生きるほうが好きだから。