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RPGで一番大切なもの  作者: ロロ
第1章
6/18

レベル5 あしたのために その2

「ではさっそく始めるかのぉ」

 よぼよぼの爺さ……老師がそう言ってステータス画面を開く。

「どうやって師匠と弟子になるんですか?」

「まずはステータス画面を開くんじゃ」

 言われるままにステータス画面を開く。

 そうすると老師が近づいてきて説明し始める。

「ここを押して、それでここを押す」

 老師の指示に従って進めていく。

「で、わしが最後に承認すると、これで完了じゃ」

「これで終了ですか?」

 やけに簡単である、まあゲームだからこんなものかもしれない。

「よし! これで俺も格闘が使えるようになったわけですね!」

 ひのきのぼうで戦うこと1週間、ついに俺にまともな攻撃手段ができたわけだ。はやくそこあたりの雑魚敵で使ってみたい!

「老師! 本当に助かりました! じゃぁ私はこれで失礼します!」

 そういって全速力で来た道を戻ろうと走り出す。

 ドサッ!

「ぐはぁ!」

 足になにかが引っかかり地面大の字に倒れこむ。見てみると老師が足で俺の足を引っ掛けていた。

「まあ待つのじゃ」

 格闘を試すのこの爺さんでしてやろうかな……。と思いつつ起き上がる。

「な、なんすか」

 こっちは格闘試したくてうずうずしているのだ、いつまでもじじい……老師に構ってる暇はない。

「慌てるでない、いいか弟子はな師匠のスキルを受け継ぐことができるのじゃ」

「え、まじっすか!?」

「うむ」

 なるほど弟子はまったくいい所がないかと思っていたがこういうことだったのか。つまり自分の使いたいスキルを持っている師匠持ちプレイヤーを師匠にすれば、そのスキルを覚えることができるのだ。

「で、どんなスキルを覚えられるんです?」

「そのまえに格闘について少し説明しておこう。格闘には2種類のタイプが存在する」

「師匠と弟子のことじゃないんですか?」

「そうではない、格闘には打撃タイプと内攻タイプの2種類の攻撃タイプがあるのじゃ」

 老師は指でピースをするように2を作る。

「打撃と内攻ですか?」

「まあそんなに難しいことではない。ただ打撃タイプは物理攻撃依存、内攻は魔法攻撃依存なだけじゃ。武器を外して自分のステータスを見てみろ」

 すぐさまひのきのぼうを道具袋の奥底にしまいこみステータス画面で確認する。

「どっちが高い?」

「ばりばり魔法攻撃の方が高いですね」

「ならお前は内攻タイプということになる。打撃と内攻どっちの方がいいという事はないが、自分がどっちのタイプかは覚えておいたほうがいいじゃろ」

 RPGにおいて物理攻撃依存と魔法攻撃依存は重要な要素と言えるだろう、魔法防御の高いやつと物理防御の高いやつを相手にする時とでは与えるダメージがかなり違ってくるのだ。

「ちなみに老師はどっちのタイプなんですか?」

「それは教えられんな」

 即答で断られた。

「な、なんでですか?」

「それを教えるということはわしの弱点を教えるのと同じことじゃ」

 まあ確かにそうだが、弟子にくらい教えてくれてもいいだろうに。

「それではスキルを教えてやろう」

「ぜひお願いします!」

 気を取り直してテンション高めに答える。

「うむ。“瞬足歩方”と“内気孔”というスキルじゃ。まず“瞬足歩方”について教えよう、己の一歩の進む距離と速度を上昇させれスキルじゃ」

「一歩ですか?」

「そうじゃ、わしがやって見せよう」

 そういって少し距離を取り、俺に向ってゆっくり歩き出す。3mほど前に来たとき突然一瞬老師の姿が消えたかのようにスピードを増す。

「うお!」

 気付いたら老師が目の前に立っていた、約2mぐらいの距離を一瞬で移動したのだ。

「これが“瞬足歩方”じゃ」

 なるほどそこそこ使えそうなスキルだ、2mほどしか進まないというのがちょっと微妙だが。

「次は“内気孔”じゃ。“内気孔”は己の内にある気を瞬間的に増幅させる……まあ簡単に言うと数秒だけ自分の攻撃力を上昇させるスキルじゃな」

 めんどくさくなったのか途中で言い直す。

「これは後で自分でモンスターにでも使ってみるのじゃな」

 それからさっきの師匠と弟子の時同様、ステータス画面をちょこちょこいじったりするだけなので語る必要はないだろう。

 


「これですべて終了じゃ」

 老師がそう言ってステータス画面を閉じる、俺もそれに習ってステータス画面を閉じる。

「ご教授ありがとうございました」

 老師に深々と頭を下げる。

「まあスキルはまだ使えんがな」

「ええ!?」

 たしかにあれだけでスキルを覚えるのは簡単すぎるとは思っていたが……。

「心配することはない、ただレベルを上げればいいだけじゃ。強いスキルならレベルをかなり上げないと覚えないが、今回教えたスキルはレベルを1つ上げれば1つ使えるようになるじゃろう」

 ということは2つのスキルを覚えるにはレベル2つ上げなければならないということだ、つまりレベル9。ぎりぎりだった、もし老師に合うまでにレベル8になっていたらレベル9以内にどちらか1つしかスキルを覚えることができなかったということになる。

「今回教えたのは2つだが、レベルを上げていけば他のスキルも使えるようになっていくじゃろう」

「わかりました」

 少し間を置いてから老師が言ってくる。

「それとお主オリジナルスキルを覚えているじゃろ」

「オリジナルスキル? ありますけど……?」

 なんでそんなことを知っているのだろうか?

「そのスキルの使い方がわからんのじゃないか?」

「た、たしかにそうですけど、なんでそんな事知ってるんです?」

「そんなことはどうでもいいのじゃ」

 いやいやいやどうでもよくないだろう。老師っていったい何者なんだ?

 しかし老師は絶対に教えてくれそうにない雰囲気だ。

「そのスキル、何をどうするのかをよく考えて使ってみることじゃ」

「なにをどうするか……」

「わしが言えるのはそれだけじゃ」

 おそらくこれ以上は聞いても教えてはくれないだろう。

 しばらく老師を無言見つめていたが諦めた。

「じゃぁ、俺はこれで失礼します」

「うむ。あーそうじゃ小梅のやつによろしく言っといてくれ」

「老師あいつと知り合いなんですか?」

「……」

 なにも喋る気はないらしい。

 諦めて来た道を戻ろうと老師に背を向けようとして止まる。

「あ、老師最後に聞きたい事が」

「なんじゃ?」

「自分より強い相手に勝つにはどうしたらいいでしょうか?」

「ふむ」

 老師は少し考えるような顔をする。

「相手の弱点を突くか、相手よりも強い部分で戦うかじゃな」

「なるほど」

 相手よりも強い部分か……。

「ありがとうございます、参考になりました」

 そう言って歩き出す、しかし滝から10mくらい離れたところで再び足を止める。

 そういえばもう1つ聞くことがあったんだった。

 少し離れてしまったのでちょっと叫ぶように老師の方を振り向きながら聞いてみる。

「老師何であんな所に倒れて……」

 しかしそこにはすでに老師の姿は跡形もなく消え去っていた。







「ブグァァァァ!!」

 奇声を上げながらスライムが突進してくる、しかしまったく避けようとしない。

 まっすぐ突っ込んでくるスライムに拳を叩き込む。

「グアアアア!!」 

 奇声を上げながらスライムが呆気なく消滅する。

 老師と別れたあと格闘を試す為に取りあえずスライム10匹ほど狩ってみたのだが、まったく苦戦することなく倒しきってしまった。

 強くなろうと今までやってきたわけだが、最初あんなに苦戦したスライムを簡単に倒せるというのが少し寂しい気もする。

 スライムを倒しおえ、道具袋から回復剤を取り出す。

 別にダメージを食らったから回復しようとしているわけではない、オリジナルスキルである“加速”を試そうとしているのだ。

 あのあと老師の言葉を思い出しながら色々考えてみたのだ。

 名前からして何かを加速させるスキルということは分かる、では何を加速させるのかが問題だ。

 俺は最初自分の自身を加速させるスキルだと思っていたがそれでは使用することはできなかった。

 回復剤の蓋を空け一気に飲み干す。

 回復アイテムは連続で使用することはできない、次使うまでに1分間のクールタイムが必要なのだ。

 俺の考えが正しければ……。

 10秒ほど立って再び道具袋から取り出す、そして回復剤の蓋を空け一気に飲み干す。

 クールタイム10秒ほどで回復アイテムを使うことができた。

「できた……」

 クールタイムが1分……60秒かかる所を10秒ほどで使用することができたのだ。

 つまりクールタイムの“加速”。

「ブグァァァァ!!」

 新たなスライムの索敵範囲内の入ったのかスライムがこちらを目掛けてまっすぐに突進してくる。

 そのまま避けることもせずスライムの突進を腹で受け止める。

 一気にHPが3分の1ほど減る。攻撃力は上がっても防御力は相変わらず紙のままだ。

 そのあとすぐにスライムに蹴りを入れ消滅させる。

 プレイヤーを何もせずに立っていると少しずつだがHPとMPが自然回復していく。

 今度はその自然回復を“加速”してみる。

 3分の2だったHPが通常の自然回復よりもかなりはやく回復した。

 間違いないだろう、今までスキルを使用できなかったのは“加速”する対象が違ったのだ。

 このスキルは身体的な物に対しては“加速”できないのだろう、“加速”できるものとできないものを色々試してみる必要がある。

「分かりづらいスキルだなー」

 だが、もし俺がいま考えていることができたのならとんでもスキルになるだろう。

 最初は消そうと思ったほどの弱キャラかと思ったが、もしかしたらとんでもないキャラになるかもしれない。

 そう考えると顔が自然とにやけてくる。

「さて一旦街に戻るかな」

 夕日がだいぶ西に傾いている、もうまもなく夜になる。

 今はまだ初心者狩りに遭遇するわけには行かない、準備はまだ整っていないのだから……。





 それにしても老師ってほんと何者なんだろ。

 


読んでくださった方ありがとうございます。今回は早めに更新することが出来ましたがちょっと短かったかなーと思っています。では次の話もぜひ読んでやってください。

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