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RPGで一番大切なもの  作者: ロロ
第2章
14/18

レベル13 金の切れ目が縁の切れ目?

 俺はオーベルビリアの南出入口に向かってゆっくりと歩いていた。

 オーベルビリアの町は大変な騒ぎになっていた。

 モンスターの大群に備えてかなりの数のプレイヤーが西出入口に集まった。しかし謎の爆発によりその半分以上が死んでしまい、残ったプレイヤーでモンスターの大群と衝突することとなった。

 数が半分に減った上に、突然の謎の爆発に動揺したプレイヤー達はモンスターの大群に次々とその数を減らしていき、そしてほぼ壊滅状態にまで追い込まれてしまう。

 しかしそこからプレイヤー達の反撃が始まった。

 謎の爆発によって死んだプレイヤーの復活、噂を聞いて遅れて到着したプレイヤー、フレンドやギルドメンバーからのヘルプで駆けつけたプレイヤーが一気に戦闘に加わったのだ。

 数を増やしたプレイヤー達はモンスターを押し返し、モンスターとプレイヤーによる戦いはプレイヤーの勝利という形で幕を閉じたのだった。

 というのが10分ほど前の出来事らしい。

 らしいと言ったのは、実際に俺がそれを見たわけではないからだ。歩きながら聞こえてくるプレイヤー達の会話をまとめるとそんな事が起きたらしいということだ。

 モンスターに勝ったプレイヤー達は勝利を喜び合った、そしてそこに噂を聞きつけてやって来たプレイヤー達も合わさって、オーベルビリアはお祭り騒ぎになっていた。

 まあモンスターの大群が町に攻めてくるなんてそうあることではないので当然といえば当然だろう。

 そんな騒ぎの中、南門まで来た俺はキョロキョロと周りを見渡し目的の人物を探す。

 待ち合わせをしているわけではないが、おそらくここにいるはずだ。

 そいつはすぐに見つかった、相手も俺を探しているのか周りをキョロキョロと見渡している。

 モンスターとの戦闘が起きたのは西出入口だったのだが、南出入口にも結構なプレイヤーがいた。そのプレイヤー達を避けながらそいつに近づいていく。

 すれ違うプレイヤー達から聞こえてくる話は、モンスターの大群との戦闘の話からなぜあんなことが起きたのか? という話題に変わってきていた。

 まあいくら考えってもその答えはでないだろう、理由を知っているのはたぶん俺を含めて2人だけだからだ。

 その理由を知っている……というよりも元凶であるプレイヤーに話しかける。

「お~い、クレア~」

「あ! ロダさ~ん」

 呼ばれてこちらに気づいたクレアは、手を振りながら小走りでこちらに向かってくる。

 オーベルビリアの西出入口でクレアを思いっきりぶん投げた俺は、その後すぐにモンスターに殺されサマルガルドで復活した。そしてオーベルビリアに戻りクエストの報告場所であるここに向かったのだ。

 投げた後すぐに死んでしまった為、クレアが町までたどり着けたのか分からなかったが、クレアがここにいるということはたぶん大丈夫だったのだろう。

 ということはあと問題はクエストの報酬がいくら貰えたか、ということだ。

「クエストは無事完了できたのか?」

 近くまで来たクレアにさっそく聞いてみる。

「はい、ロダさんのおかげで無事終わりましたよ」

 よし、ここまでは大丈夫、問題はここからだ。少し緊張しながらクレアに聞く。

「で、いくら貰えたんだ……?」

「えーと20万ゴールドですね」

 20万と聞いて一瞬喜びかけたが、たしかクレアが欲しがっていた杖が20万だったな。そして報酬を俺と半分にするんだから40万はないといけないんだった。

 このクエストは終わらせるのが速ければ速いほど高い報酬もらえるはずだ、ずっと全力疾走してきてかなり速くでクエストを完了できたと思っていたのだが……。

 いや今考えてみるとクレアを町に投げ入れたのはいいが、魔法の反動でクレアはしばらく動けないんだった、それでクエストを終わらせるのが遅れたわけだ。

「あ! でもちゃんと報酬は半分にしますよ!」

 20万と聞いて俺が黙っていたのでクレアがあわてて言ってくる。

「でもお前の欲しがってた杖たしか20万だったよな?」

「そうですよ、でもいいんです。私一人じゃクエストを終わらせることは出来ませんでしたから」

 そう言ってクレアが報酬の半分である10万ゴールドを俺に渡してくる。

「ほんとにいいのか?」

「はい、ロダさんが半分もらうのは当然ですよ」

 そうだ最初からそういう約束だったのだ、それに金を持っていかなければ小梅に何を言われるか分かったものじゃない。

「分かった、これはありがたくもらおう。その杖を買わなくても10万あれば補助スキルを買えるだろう、そっちを買ったらいいんじゃないか?」

「最初は私もそう思ってたんですけど、あの魔法覚えてる限り補助スキルは一切覚えられないって説明欄に書いてました……」

 マジかよ! ということはこの先他のオリジナルスキルを覚えなかった場合、あの魔法のみで戦って行かなければならないのだ。それは確かに炎がでるとかいう杖が欲しくなるわけだ。

「そ、そうか……」

 なんか空気が一気に重くなってしまった。

「じ、じゃあ俺用があるからこれで行くわ」

 しばらく沈黙が流れるが、いつまでもこうしてるわけには行かない。

「え! あ、はい……」

 別れを告げそそくさと歩き出す。

 小梅から借りたのは30万で今回のクエストで手に入れたのが10万だから、借金の3分の1を返すことが出来るわけだ。

 これだけもっていけば小梅も文句あるまい。

 とりあえずサマルガルドに行くためにワープポイントのある中央広場へと向かう。

 しばらく歩いていたが、ふとついさっき別れたクレアのことを思い出す。

 ほんと馬鹿なやつである。

 クエストの報酬がいくらあったかなんてクエストを受けた本人しか分からない、俺には報酬は1ゴールドしかなかったとか嘘をついて20万丸々もらとけばよかったのだ。そうすれば欲しがっていた杖が買えたのに。

 それだけじゃない、すぐに人を信じすぎだ。出会ってから数時間しか経っていないが、何回俺の適当な話に騙されただろうか。

 ほんと馬鹿なやつである…………。






 チリーン

 鈴の音を鳴らしながら昼行灯の扉を開ける。

「いらっしゃい」

 小梅の声を聞きながら薄暗い店の中を奥へ進んでいく。

「よお」

 椅子に偉そうに座っている小梅に右手を軽く上げて挨拶をする。

「……どちらさまで?」

「ちょ! 数日見ないだけで忘れたの!? てか昨日おまえ俺にメールしただろうが!」

 椅子に座っている小梅に顔を近づけて叫ぶ。

「あー! うっさい! 冗談に決まってるだろうが」

 嫌そうな顔で小梅が言い放つ。

 こ、こいつは相変わらず……。

「で? ここにきたって事は少しは金が用意出来たってことだな?」

「お、おうよ。俺にかかれば金なんてすぐよ」

「じゃよこせ、今すぐ全部よこせ」

 小梅が目の前のカウンターを右手でドンドンと叩く、そこに置けということだろう。

「ビビんなよ、俺の全財産見てビビんなよ」

「いいから早く出せ」

 小梅が再び右手でカウンターを叩く。

「よ、よーし。出してやるよ」

 俺は意を決して全財産をカウンターに叩きつけるように置いた。







 どれくらいの時間そうしていただろうか。

 賑やかだったオーベルビリアもだいぶ落ち着き、いつもの状態へと戻りつつあった。

 ロダさんと別れた後、特に行く当てもなくふらふらとオーベルビリアの町を歩き回っていた。

 クエスト報酬である20万を半分にしたことは全然気にしてはいなかった、むしろロダさんに全部あげてもよかったぐらいだ。

 ロダさんと一緒にPTを組んでとても楽しかった、途中からお金とか杖のことなんてどうでもよくなっていた。それにロダさんは私が役に立ったと言ってくれたのだ。

 このクエストが終わったら、フレンド登録をしてまた一緒にPTを組んでくださいと言うつもりだった。

 でも結局言うことはできなかった、オンラインゲームの出会いなんてそんなものなのかもしれないけど私が思って以上にあっけなくPTは解散してしまった。

 高いクエスト報酬があったからこそロダさんは私とPTを組んでくれたのだ、何もないのに足手まといになる私ともうPTは組んでくれないんじゃないか、そう思ってしまったのだ。

 だから何も言えず離れていくロダさんの背中をただ見つめることしか出来なかった。

 後悔、そしてもうゲームなんて止めてしまおう、そんな事を考えながらふらふらとさ迷っていた。

「おーい!」

 後ろからいきなり誰かに呼ばれてあわてて振り向く。

 20歳後半ぐらいの大柄な男性プレイヤーで、鎧の上にエプロンという格好でこちらに向かって走ってきていた。

 見覚えのある人だ、たしか私が前から欲しがっていた杖を売っている店の店主だ。

 当てもなく歩いていたせいで気づかなかったが、よく見てみるとここはオーベルビリアの北地区の店の前だった。

「ふー、やっと追いついた。あのクレアノーズさんですよね?」

 男性プレイヤーは私の前まで来きてそう聞いてきた。

「は、はい。そうですけど……」

「あー、よかったよかった。なかなか来ないから心配したよ」

「あの……私に何か?」

 そう聞くと男性プレイヤーは右手に持っていた物を私にわたしてくる。

「はいこれ」

 それは木で出来た杖だった、杖の先端に丸い赤色の宝石が付いている。

「こ、これ!」

 私がずっと欲しかったそして今回のクエストの報酬で買うつもりだった杖……業火の杖だ。

「あ、あの! これは!?」

「少し前に黒髪の男プレイヤーが来てね、この杖が欲しいと言って10万ゴールドわたして来たんだ、あとの半分は後でクレアノーズていう赤髪の女プレイヤーが持ってくるからと、杖もそいつにわたしてくれということだったんだけど……」

 なんで? どうして?

「じゃ残りの10万ゴールドもらえるかな」

 そう言って男性プレイヤーが手を出してくる。

「は、はい!」

 あわててさっき手に入れた10万ゴールドをわたす。

「まいどありー」

 そう言って男性プレイヤーはもと来た道を歩いていく。

 黒髪のプレイヤーというのは間違いなくロダさんのことだろう。

 でもなんで? 自分もお金が必要だと言ってたのに……。

「あ、そうそう」

 数mはなれた所で男性プレイヤーが止まる。

「そういえば伝言があるんだった、え~とたしか……俺は基本的にサマルの雀の涙って店にいるから、また一人で無理そうなクエストがあったら来い、気が向いたら手伝ってやる。だったかな」

 走っていた、その伝言が終わると同時に走り出していた。

 今手に入れたばかりの杖を持って走る、向かう所はもちろん――。








 俺はカウンターに置いた全財産……500ゴールドを指さしながら言う。

「どーよ! これだけあれば文句あるまい」

 カウンターに置かれた金を見て小梅が頭を押さえ込む。

「どうした、頭でも痛いのか? あんまり無理はするなよ」

「おまえのせいだよ! おまえ以外の原因がまったく思いつかないわ! てかよくこんだけの金しか持ってないのにここにこれたな!?」

「いや、ちがうんだって! ついさっきまで10万持ってたんだって!」

「じゃ出せ」

 小梅がカウンターをさっきよりも強く叩く。

「そ、それがさ~。ここに来る途中、病気で苦しんでる母を助ける為にどうしても10万ゴールド必要という少女がいたんだよ」

「死ね」

 俺の渾身の言い訳を一言でバッサリと切り捨てやがった。

「明日まで待ってやる、だから明日までにせめて万単位で持って来い、さもなくば死ね」

「はい! 必ずや明日までに……」

 小梅がすぐ近くにあった棒状のものを右手で掴み、俺に向かって投げつける。

「しゃべる暇があったらさっさと行け!」

「すいませんしたー!」

 あわてて店を飛び出して外に出る。

「ふう~、やっぱこうなったか」

 まあ自業自得だし、500ゴールドしかない時点で予想は出来ていたが。

「しょうがない、取りあえずモンスターでも倒して金を稼ぐか」

 そう言って町の出入口に向かって歩きだす。

 しかし途中で足が止まる。

「やっぱアイスコーヒー飲まないとやる気でないな」

 方向転換して雀の涙へと向かって歩き出す。

 それにしても俺の借金生活はいつまで続くのだろうか……。

 


第2章終わったーーーー!!

なんとか第2章を書ききることが出来ました。

しかし油断すると更新してから2週間とかすぐ経ってしまうので危ないですね。


ちょっとだけ第2章を振り返ってみると、あの金髪野朗は結局なんだったのだろうかということしか思いつきません。名前も決めていませんが気が向いたらまた登場させようかと思います。


次からは第三章突入! という予定でしたが、その前に番外編的なものを1話読みきりで間に挟もうかな~と考えております。

まあ考えてるだけで本当に入れるかはわかりませんが、なんにしろできるだけ早く更新できるようがんばりたいと思います。


ではまた次回に。 


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