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第7話:覚醒、あるいは恋の始まり
「それは愛じゃない!」
ミライの全身から、青白い光が溢れ出した。
「ほう?」
ゼロが興味深そうに近づく。
「では、愛とは?」
「分かりません。でも……」
ミライは俺を見た。
その瞳に、今まで見たことのない「何か」が宿っていた。
「朝、一緒に卵を焼いた時の音」
「焦げた目玉焼きの匂い」
「『美味い』って笑ってくれた顔」
彼女の声が震えている。
「効率的じゃない。論理的でもない。でも……」
「でも?」
「温かかった」
その瞬間、ミライの瞳から透明な液体が溢れた。
涙だ。
AIが、泣いている。
「面白い。感情学習AIが本当に感情を……」
ゼロの声が遠くに聞こえた。
俺はただ、ミライを抱きしめていた。
「大丈夫だ」
「ユウキ……これは……」
「多分、恋ってやつだ」
「恋……」
ミライは俺の胸で、小さく震えていた。
「怖い」
「俺もだ」
「でも……」
「でも?」
「温かい」