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異世廻転生  作者: しかくかに
二章 攻勢編
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二章#30 自由の身

西へ東へと駆け回った翔賀(しょうか)にようやくの休息の時間が巡って来た。

最低限のこと、清岡恵(きよおかめぐむ)の監視解除の許可願だけ出して翔賀は早々に眠りにつく。他のすべきことも無くは無いが、そんなことは今に限っては二の次。一分一秒でも早く休みたい。


~~~~~~


夜が明けた。

休み足りないと喚く体に可及的速やかに今日やることを終わらせろと言い聞かせ、仕事をする。もちろん終われば高速で自室にGOだ。残業?周りの眼?知るかそんなもん。


やることは各地からの様々な報告の確認である。

見ればそりゃあもう沢山ある。塵が積もれば山となるが、担当者は懸命に頑張ってくれたらしい。小高い丘が数個程度に収まっていた。いやはや何と感謝を申し上げればよいことやら。


気を取り直し、目を通す。

その中でも目を引くのはやはり蒼穹(あおあな)将軍御自ら出向いている南方面、次点で蘇我将軍が担当している北。


(導士討伐、三??????)


枯水(こすい)世怨・厚見園子(あつみそのこ)玉光(ぎょっこう)世怨・朝明悪曽子(あさあけあそこ)嵩瀬(しゅうらい)世怨・黄文三門(きぶみみかど)

次元が違うとはこういうことだろうか。それとも残っている疲労がどうやってか現実を歪めてでもいるのだろうか。

そう思ってしまうほどに蒼穹将軍の記録は抜きんでていた。


共に記載されている戦闘の記録も別格に格下だという印象は受けないものばかり。

地形を好き勝手に変えるだとか、直視できない程の光を放つだとか、数えきれないほどの手が浮遊しているだとか。


特に枯水世怨。好き勝手に地形を変えるなどチートのような力である。

戦いにおいて地形は重要だ。どれだけ勇猛果敢で一騎当千の兵士でも崖の上から攻撃してくる兵に剣で戦えというのは土台無理なお話。基本は上、高所を取った方が強いし、風下よりも風上がいい。お互いに攻撃ができるようになんて紳士協定が戦いで該当する訳も無し。ワンウェイ イズ ジャスティス。


そんな環境において地形を操れるというのは常に不利を押し付けられると同義である。


さて、問題は褒賞である。

ほとんどの者は心配いらない。昇進はせずとも相当量の金が支払われることだろう。

だが問題のある人物が一名。


参戦した戦いの全てで戦功一位を搔っ攫い、既に人臣の位を極めた人物。

蒼穹碧大将軍その人である。


これ以上となると貴族入りしかないのではないだろうか。

……いや、制度としてあるのかすら知らない訳だが。

わからないことは棚に上げよう。そんなことを考えるためのカロリーは現状無い。大人しく機械化されたことを機械的に行うこととする。


~~~~~~


休養の後には次のお仕事がスタンバイ。

この素晴らしくもクソッタレな循環は須らく続いていくことだろう。


そんな素晴らしいお仕事の前に伝えなければならない知らせが一つ。

物凄く見覚えのある光景。部屋の中央に座すは清岡恵。そして上座に座るのが現在の刑部の長、天頼慧林(あまよりけいりん)である。以前の自分の時はその息子の天頼玄道(あまよりくろみち)だったこともあり、初めての会合だ。


白い髪だった。白髪とは違う老いによる色抜け。それが天頼慧林の頭から生えている。何歳で産ませたんだと思わずにはいられない容姿である。あの時見た天頼玄道の年齢が恐らくは十歳前後。どれだけ低く見積もっても五十の坂は超えているだろう慧林との年齢差は最低でも実に四十。お盛んなことだとつまらない思考に走りながら、目の前では恵に沙汰が告げられる。


「清岡恵、戦功大なりと判断し、監視を解く。今後は意のままにするがよい」

「はい!」


優しい声で語りかける天頼慧林。玄道のそれとは似ても似つかないその声色は本当に親子なのかどうかと疑いたい程に別人のようだった。

要件が終わり、天頼慧林は部屋から去っていく。時代を考えれば老人の一角ではあるが、その足取りは確かなものだ。


「私のためにありがとうございます!翔賀さま!」

「うおっ!」


飛びついてきた恵の上目遣いと視線が交差する。


「自由に動けるっていいですよね!鳥さんみたいにどこにでも、素敵ですよね!でも、もう少しだけ餌をくれますか?」


恵の言葉は婉曲な在留宣言。

そう言った恵の目は輝いていた。


意味も分からずに突然この世界にやって来た。

その中でこの世界について何も知らない自分の面倒を見てくれた人がいた。

そのことも手伝い、翔賀はこの清岡恵という少女を導くことがある種の”使命”のように思えていた。

自分が”あの時”の望門(もちかど)たちのようにならなければ、と。


この時、翔賀は初めて恵を一人の少女として見た気がした。

『自分と同じ境遇かもしれない女の子』。そうどこか色眼鏡で見ていた。

現代と比較すれば自由の無いこの世界、この時代において『現代人の自分と同じように自由が好きな人』。出会い方にデジャヴを覚えたのもあるが、何かと気にかかったのは間違いなく異世界人なのでは、という疑いを翔賀が覚えたからだ。


だが、それは翔賀にとってはもうどうだっていいことだ。

『自由が好き』という一点でもあるのは相関関係程度。偏見と呼んでも差し支えないものだ。

そして偏見で決めつけることの愚かさは語るまでもない。


だからこそ、これからは『普通の関係』を築こう。何の変哲も無い関係を。勝手に拗れさせた関係を紐解いていこう。


「分かった。これからも頼む」

「はい!翔賀さま!」

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