二章#25 人探しの導士
東からの二つの知らせ。分かっていた通りに碌でもないその知らせに応じるべく翔賀と望門はやむなく軍を二つに分ける。翔賀ら派遣組は『不死身』を確かめるために先にも現れた東忍へ。そして望門ら東方面軍は新しい方へ。元の任務故に忍びである結月梓だけは翔賀らのところだが、それ以外を新手に当てることとなった。
歩いて来るのは浅葱色の法衣を纏った尼。他の者は連れず、単身で望門の前にその姿を露にする。
「初めましてですね。私は三日月棗と言います。少し質問をよろしいでしょうか?人を探しているのですが」
突然の常識的な態度で望門は問いを投げかけられる。泡を喰ったとまでは言わずともそれなりの動揺が走った。警戒をそのままに望門は神術の用意を始めさせる。
まず脳裏を過るのは対話の可能性。だが、その可能性をほどほどに長い経験が蹴り飛ばす。同じ言葉を話す異世界人。それがこの国の大半を占める教徒への認識である。それが戦っている側なのだからその認識は思考の大前提に染み込んでいる。
「質問に答えていただけるならそれだけでいいんです。この入れ墨を持った女の人を知りませんか?私の娘なのですが………」
そう左の手のひらを見せつける。描かれているのはその名にふさわしくと言えようか、三つの雲の上に浮かぶ三日月である。家紋にでもなっていそうなその紋様を見せつけ、導士はじっとこちらを観察。
やがて何も知らないと悟ったのかゆっくりと手を下ろし、深々と頭を下げる。
「あなた方も三日月薊を知らないのですね。お時間を頂きありがとうございました。何やら準備していますが、それは必要ないものです」
手をパン!と叩き、導士は望門らに背を向け、粛々と帰っていく。
「放て!」
時間は十分に経った。神術の構築は完了しているはずだ。だが、声に攻撃は続かない。
「お兄ちゃん!神術、構築し直しになってる!」
怪しいのはあの手を叩いた行為。
幸いにもあちらに攻撃の意思は無いようだ。染み込んだ前提には則っておらず、不審極まるが。
「まだやる?」
「いや、やめておく。僕たちにはもう一つ敵がいる。後を追うよりもそっちだ」
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不死身っつてんだ。
現在厳命しているのは『死なない程度に』という点。足止めは重要な役割だが、命をかける程のものではない。日が暮れれば止まるのだから、それまで停滞させるのが場当たりとしてできることである。
酷く消極的な気もするが積極策なんて思いついたらやっている。
一歩進んで二歩下がり、偶に二歩進む。要は分かりやすい膠着。
正面からの戦いに横やりが加わる。前進を防ぐように炎が立ち昇るが導士は気にすることなく侵入する。改善するかは分からないが、一人に掛かる負担が少なくなるだけでも十分だ。
時は夕暮れ。鳥は群れを成して巣へと戻り、日が落ちれば風や虫の音も心地よい季節である。




