二章#24 進撃は止まらない
どれだけ斬っても傷は増えるだけでその本領を発揮せず、降り注ぐ神術に臆することなく対する導士、東忍はこちらに進み続ける。
滴る自身の血液もどこ吹く風かと導士は進み続ける。
膝を着いたと思ってもそれはなんという夢物語だろうか。瞬きをすれば彼はその強靭な足腰をもって進撃する。
「人はこの様な人物に感動を覚えるのだろう?!我らが先達者は言っておられたのだ!!どれほどの苦難にも屈することなく立ち向かった者に人は感動を覚えると!!だからこそ!小生は歩みを止めぬ!そして感動を分かち、同志と!そう呼ばせて欲しい!!!」
言行一致とはすばらしいものだが、害悪のそれは峻拒せねばならない。例えば今だ。そこかしこから血の滴るその状況を作り出したのはまごうことなき自分たちであるが、その状況で『同志に!』と言われて『はい』と頷く者がどれ程いようか。少なくとも望門が抱くのは不気味や不審といった決して良いとは言えない感情である。
そんなこちらの感情など知るかとばかりに男は迫る。
何をすれば導士は止まる?命を断てば止まる。そんなことは分かっている。だが、どうやって?明らかに世怨の力だろうその再生力の源である額の瞳は他と比べ物にならない程に頑強に守られている。代わりにというべきかそれ以外には青銅の装甲は見当たらない。
ならば首を狙おうと。やった。もちろんやった。そもそも普段は逆だ。首を落とせないからこそ額の眼を破壊し、世怨の力を消した後に首を落とすのだ。首が落とせそうなら最初から首を狙う。その結果、刀が折れた。中心まで斬り入れ、そこから先に全く動かない。骨にしては固すぎる何かによって何本の刀が鉄くずへと成り下がっただろうか。
恐ろしい勢いで物が摩耗していく。いつもの導士ならば現れては去り、再び現れる。だが、この導士は違う。より多くの人を求めるように、休むことはあれど、去ることなく真っ直ぐに首都へと進み続けている。
「異国からの我らが同志は五回の苦難にも屈する事無くこの地へと降り立った!ならば我々がこの程度で屈せばどうして涅槃へと至れようか!!!道は小生が切り拓く!!!不安に思うことはない!!小生に続くのだ!!」
そう孤軍奮闘の中、導士は叫ぶ。
陣頭に立ち、自らでもって、全軍を奮い立たせる。
要素だけ見ればその有り様はなんと素晴らしい将だろうか。正しく理想と、そう呼ぶに足る有り様。
だが、彼の後ろには誰一人いない。そして陣頭に立つ将は見るに堪えないほどに傷が刻まれている。
不気味だ。




