二章#22 二正面作戦
敵襲、敵襲、少し休んでまた、敵襲。
情け容赦の一つ頂きたい戦場模様。実に嬉しくない。
戦績が稼げるほどに自分が強ければまた感想も異なるかもしれないが、特に強いわけでもないしがない一般人である翔賀としては勘弁いただきたいところ。まぁ、話が通じないことは分かっているのでそういう意味では希望のかけらも無いのだが。
とはいえ、泣き言ばかりも言ってられない。なにせ今回は贅沢にも二方面からの同時攻勢。しかも贅沢なことにここしばらくお預けだった黒服の教徒のオプション付き。チェックを入れた覚えもないオプションをつけてくるなど犯罪行為だ。しっかりと通報しなければならない。
ここにいる部隊は大別して五つ。
一つ目は方面軍大将、物部泰武の直轄部隊。
二、三、四つ目は泰武の息子の三人が率いる部隊。
そして五つ目は翔賀が中央から連れて来た部隊である。
単純だが二方面から来るのであれば軍を二つに分けて対処しよう。
そんな王道な方策により翔賀は体感では久方振りの陣頭である。
ペアを組むのは物部猪子。物部将軍の長男である。
「こちらは武士と神官の二種編成で陰陽師はおりません」
要は特に特徴のない編成である。
「こちらも同様だ。なら特に考えることもないか」
そう言う猪子将軍の意見に翔賀は賛同せざるを得ない。いつものことだが、なにせこちらには碌な情報がない。これをどうにか改善したいと思うのだが、この長い歴史の中で対策が練られなかったということは改善できないのだろう。
長い歴史、その中で思い至らなかった人がいるとは考えにくい。そして、分かり易く有効な手段が今の今まで考案されていないというのもおかしな話。なにがしかの躓きがあったのだろう。それがどんなものか、翔賀には分からないが。
余談はさておき、一つだけ言っておかなければならないことがあった。
「私の部隊の清岡恵ですが、彼女は珍しく攻撃よりも防御を得意とする神官です。些細なことですが、何か使われますか?」
今の編成は基本に忠実な編成だ。近距離戦に強い武士と、遠距離攻撃ができる神官の二枚看板。よく言えば王道。だが、悪く言えば作戦の幅が狭い。
個人的な能力に差はあれど、兵科を無視するほどの者はいないし、聞いたことがない。その中で清岡恵のそれは兵科の範疇には収まるものの外れ値と呼んで差支えの無いものであった。
ならばそれは作戦に幅を持たしうる存在だ。
「分かった。頭に入れておこう。では行こうか」
「はっ!!」
威勢よく構築中の要塞から二方向に出陣する部隊。
そして敵とは程なく遭遇する。
「遥幽世怨の名の下、この荒木累にあなた方を語り継がせて欲しいのだ」




