#6 世怨の名の下に
ドンッ!
と太鼓の音が響き、喚声が静寂へと一変する。「皆さんが静かになるまで~」というどうでもよすぎる懐かしい文言が頭を過り、視線は高台に立つ部将・斯波嘉達へと向けられる。
「忍びの者が奴らの陣を発見した!皆の者、私に続け!出陣じゃ!!」
「「オォォーーー!!!!」」
鉄製の盾と杖に付けられた真珠が日光に照らされ凛と輝く。
けたたましい音と共に部隊は動き出した。
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「翔賀、あれが今回の敵の主将だ」
望門の指押さす方には茶色の法衣のようなものを身につけた人物が一人。こちらと同程度の黒色の衣服を身に着けた人間を引き連れているのが見える。人数的に茶色が部将or将軍クラス。黒色が一般兵クラスといったところだろうか。
「服が茶色だろ?あれは”説者”っていう小隊の隊長みたいなものだ。油断は禁物だけどね」
「神官は準備を始めよ!神術の発動を合図に突撃隊は猛進せよ!」
嘉達の号令で数人の神官が、もちろん本居妹乃も詠唱を始める。次第に杖の先で輝く真珠の先に火球が生成されて………
「大きくない?!!」
一種の感慨に耽っていた翔賀は驚きを隠せなかった。妹乃の火球だけ異様に大きい。日本だとテニスボールとバスケットボールくらいの差が………。
「撃て!!!」
号令と共に火球が放たれ、爆発音と共にこちらから鬨の声が喧しく響き渡る。
「危ないじゃないですかぁ。見ず知らずの人を殺そうとしちゃぁ。殺すんじゃぁなくて救ってあげなきゃぁ。浮かばれないですからぁ」
「アイツ、頭おかしいんじゃねぇの?!」
そうこちらに話をする茶色い服の男。
左手には力なくうなだれる翔賀とよく似た鎧を着込んだ男。右手は同じような鎧の男の口元を包み込み、同じく重力に従っている。
「渇関世怨の名の下に、この四市説者があなた方に救いをぉ………差し上げましょうぅ」