二章#6 実験開始
「やや!此度は随分と少ないな!!それに以前はいなかった者もいるようだ!が!!等しく劣弱!!!この和 賛導!魂光世怨の名をもって劣弱を導かん!!!」
ボディビルにでもいそうな男である。分かってはいたのだが、目にすると圧が凄い。ひっきりなしにポージングをして止まないこの男が討伐対象、いや今回に限れば調査対象である。
調査のための作戦は既に始まっている。城を出た時点から忍である結月梓には身を隠しながらの単独行動を依頼済み。梓に調べてもらうのはコピーの範囲と背後から奇襲した時にどうなるか、である。
背後からの奇襲が成功するならば、ここで討伐が叶うのも夢ではないように思う。できたらいいな、程度の期待ではあるが。
翔賀ら他の役目はその囮役が半分、もう半分がコピーの攻撃は防ぐことができるのかという疑問の解決である。
遠距離攻撃である神術は防ぐことができるだろうが、近接攻撃はどうなるのか、と。
刀で岩は断てない。
コピー元が何もない空を斬る。その時、コピー体の攻撃先に岩があればどうなるのか。岩で止まるならそれはコピーではないのだ。なぜならコピー元の行動と異なってしまうのだから。
そして、岩が斬れたなら脅威足りうる。それはコピーによる攻撃が如何なる防御も許さない最強の矛となるからだ。
しかし、そのまま岩を斬ることなく行動だけが同じなのであれば?
それはコピー体に質量がないことの証明足りうるのではないだろうか。そうなれば途端、あのコピー体はただの幻へと落ちぶれる。
そうなれば数の力が使えるようになるのだ。戦争は基本質より量である。火縄銃が使われたこの頃に於いても圧倒的な銃の数と射撃回数を揃えた長篠の戦までは主戦力足りえなかったのだから。
「作戦通り、神官の二人は待機!三人で突っ込む!!」
自らのコピーに対し、盾を押し出す。拮抗すれば、コピーには実体がある。最悪はすり抜けてなお衝撃だけが体に来ること。どうなるかは調べなければ分からない。
黒が迫る。十歩先、五歩、三歩、一歩
構えた盾をすり抜け、目の前にコピーの黒い盾が迫る。
視界が漆黒に染まる。
 




