二章#1 デジャヴを感じる
ここで改めてこの中世日本風でどこか違う不思議な異世界の説明をしよう。
基本は日本の城下町なのだが、その城郭については西洋の印象を強く受ける。半端な城塞都市という表現が適切だろうか。
都市機能と住民街を纏めて城郭でもって覆っている。
いつ何時野盗の如き教徒共が強襲してくるとも分からないこの世界ではほど高い城塞と周囲に巡る堀でもって外敵の侵入を阻止しようという思想が透けて見える。
そんな環境であるからこそ世間は閉塞的で見知らぬ顔がほとんどない。知人を数人たどればまず間違いなく相手の素性に辿り着くことができるのだ。だからこそ先の自分、翔賀などは服装も相まって浮きに浮いていたのだ。この世界の人ではないのだからさもありなん。
そんな翔賀だからだろうか。家の影にいやに目に付く人影が一つ。既視感を抱きながらその同年代くらいに見える女性の人影に声を掛ける。
「わ、私ですか?!私は、、清岡 恵と言いますが……何か御用で……」
(うわぁ……すっごいデジャヴを感じる)
強烈にそう思いながら翔賀は部下に一応、本当に一応問いを投げかける。
「この者を見たことは……」
「「ありません」」
(やっぱりかぁ……)
翔賀が抱いているのは自分と同じ境遇なのでは、という懸念。ここで決定的な質問をすることも考えたが、やめておく。やるなら二人きりの時だ。状況が変わるわけでもないのだから。
そして身に覚えのあり過ぎる質疑をし、同じような結論に至るのだ。
「要監視」
と。




