一章#47 手術
「陽木班、用意どうか」
「完了しています」
「陰土班、観測どうか」
「用意済みです」
「第二班、準備どうか」
「完了です」
「了解、これより外科手術を開始する」
迷いなく言葉を発した男が手にした小刀で胸の双丘の間に線を描く。
「あばらの除去、開始」
極慎重に肋骨が砕かれ、弱い鼓動を断続する真紅の果実が露になる。色は良くはないが、最悪でもない。許容範囲内にとどまっている。
「鹵獲開始」
果実から伸びる全ての管に栓をし、その外側を切断。
「鼓動確認」
ドクドクと溢れ出す血液に目を向けることもなくくり抜いた心臓を第二班が同じく心臓をくり抜いた横たわっている短い茶髪の少女の前へと持って来る。
「移植開始」
丁寧に降ろされた果実の管と少女の管を引き合わせる。練達の再生術が二つの管を隙間なくつなぎ合わせ、砕いた肋骨を繋いでいく。
最後に開かれた胸板をつなぎ合わせ、外科手術は完了。
だがまだ終わっていない。
「陰土班、反応どうか」
「反応許容値内。異常ありません」
「了解した。報告行って参れ」
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「報告確かに。ほな、今までお疲れ様やったね。新しい人生楽しんでな。……ほな、この子よろしくね?」
頭に強い衝撃が走った。
「私は、誰だ?」
後ろ手に縛られた自分。捕まるようなことをしでかした記憶も……違う。そもそも記憶がない。私は誰だ。分からない。
水面に映るのは意味も分からずに無意識に瞬きを繰り返す自分らしき影。妙な顔面の拡大と赤い水を覚えてから、私は意識がない。
水に揺られる感覚とは体が覚えるものなのだろうか。




