一章#46 新生
「辰田説者が留訪世怨の名の下に救いを」
静かに囁かれた言の葉が染みる。
対するは茶色の法衣を纏った説者率いる一隊である。迎え撃つのは出世した望門率いる一団。
鳥を思わせるほどに高く跳び上がり、説者は手にした刀で命を穿とうと襲い掛かる。手にした盾をしっかりと構え、振り下ろされる鋼を受け止める。説者は盾を足場に再び高空へと舞い跳ぶ。
「高すぎだろ!!」
愚痴も納得の高さだ。日の光も相まって彼方に見える説者は豆のような大きさ。知らなければただの黒豆である。その黒点が少しずつ大きくなり、白刃が煌めく。
「望門!教徒共はこっちでどうにかする!お前は説者に専念しろ!!」
「勝、ありがとう!」
部隊を率いる立場になって僅か数日。全体の統率はまだまだだ。慈悲が通るなら時間を頂きたいところ。それでもなんとかなっているのは頼りにできる友人を多く部隊に入れて頂いたからだ。引く手もあっただろうにここに配属してくれた碧大将軍には頭が上がらない。もう一人いればとは思うけれど、それは贅沢というものだろう。
「やぁ!」
妹乃が放った水の一矢が説者の右肩を打ち抜いた。だらりとぶら下がる右腕と握られた刀。それ即ち攻撃力の一時的な半減である。生まれた隙に望門が駆ける。引き抜いた脇差を右手に説者へと迫り、首に横一閃。
あわれ絶命した説者を確認し、全体に命令する。
「残りは教徒だけだ!一蹴せよ!!」




